標題1

特殊な・めずらしい形の送電線

2011.10.25 更新ワンポイント特殊設計箇所・特殊鋼材使用送電線
(更新履歴:「掲載送電線・目次」下に掲載)

 送電線の標準形状は、「2回線左右垂直配列」の形状であるが、それ以外に氷雪等の自然条件、技術的あるいは社会的条件などによって、特殊な・めずらしい形の送電線が、数多く建設されている。  
 それらについて、収集できたものを、日本の送電線では出来るだけ建設年代順に、海外の送電線では国別に、以下に掲載する。

 ただし、環境調和鉄塔あるいは美化鉄塔などと呼ばれる鋼管単柱・モノポールに類する、トラス構造ではない支持物は、除くことにする。
 これらのいわゆる美化鉄塔は、極めて多くの形状のものが地域事情に合わせて開発されており、それらを網羅して掲載することは困難である。
 したがって本サイトではトラス構造のものに限り掲載する。

 なお、「歴史に残る送電線」に掲載したものは、重複掲載せず除く。


<掲載送電線・目次>

    
●日本の送電線

(1913年)66KV酒匂川線(矩形鉄塔) (Sakawagawa Line)

(1923年)77KV古川橋意岐部線(ハンガー吊懸垂装置) (Furukawabashi-Okibe Line)

(1924年)66KV箱根線(2cct LPがいし使用鉄柱) (Hakone Line)

(1924年)66KV多古線(現場打コンクリート柱) (Tako Line)

(1926年)154KV武蔵境・新鶴見線(単一テーパー鉄塔) (Musashisakai-Shintsurumi Line)

(1926年)154KV南武線・川世線(特殊2連懸垂がいし装置) (Nambu Line,Kawase Line)

(1927年)154KV田代幹線(特殊アーム形状) (Tashiro Main Line)

(1931年)22KV大戸川新草津線(可撓(かとう)鉄塔) (Outogawa-Shinkusatsu Line)

(1936年)110KV陰陽連絡線(正三角形配列鉄塔) (Inyou-renraku Line)

(1954年)66KV片品川線(鉄骨コンクリート柱) (Katashinagawa Line)

(1965年)154KV南大田線(2塔体鉄塔) (Minamiouta Line)

(1968年)66KV高崎線・上信線(ガラスがいし使用) (Takasaki Line,Joushin Line)

(1969年)154KV東富士線(6回線ドナウ型鉄塔) (Higashifuji Line)

(1969年)500KV安曇幹線(三角配列) (Azumi Main Line)

(1971年)220KV東福岡幹線(6回線門型鉄塔) (Higashifukuoka Main Line)

(1972年)77KV西島山線(鉄塔間を横梁で連結) (Nishijimayama Line)

(1975年)275KV港北線(超狭線間・狭根開鉄塔) (Kouhoku Line)

(1978年)77KV新寝屋川古川橋線(ボックス断面美化鉄塔) (Shinneyagawa-furukawabashi Line)

(1980年)500KV関門連系線(500KV門形鉄塔) (Kanmon-renkei Line)

(1991年)500KV北大和線(500KV環境調和(SMC)鉄塔) (Kitayamato Line)  

(1995年)275KV西北線(275KV都市型鉄塔) (Seihoku Line)

(1999年)66KV小松台線(特殊な片側垂直配列) (Komatsudai Line)

(2002年)154KV百頭線(コンパクト装柱鉄塔)  (Momogashira Line)

(2002年)500KV常陸那珂火力線(500KV都市型鉄塔) (Hitachinaka-Thermal power Line)

(2002年)77KV富田線(鉄塔毎・回線間ジャンパ線)  (Tomita Line)

ワンポイント特殊設計箇所(リンクページに掲載)    



●海外の送電線

 海外の送電線は、各国の自然環境条件および社会条件によりその設計は我が国とは大きく異なり、鉄塔形状、電線配列方式など我が国の送電線の基準で比較するとその多くが特殊でめずらしい送電線の部類に属する。

 したがって、それを掲載していくと「海外の送電線」で掲載したもののほとんどを重複して載せることになってしまう。

 そこで、ここでは「海外の送電線」の中から当ホームページ開設者が特にピックアップしたものに限って掲載する。(2010.04.16)

・アメリカの特殊送電線           

・中国の特殊送電線             

・ドイツの特殊送電線

・フランスの特殊送電線

・オーストリアの特殊送電線

・スウェーデンの特殊送電線

・ノルウェーの特殊送電線

・カナダの特殊送電線

更新履歴(2006.03.06以降)

更新年月日 更新内容
2006.03.06 高崎線(ガラスがいし使用)掲載
2006.04.02 関門連係線(500KV門形鉄塔)掲載
2006.04.20 大戸川新草津線(可撓(かとう)鉄塔)掲載
2006.05.27 高崎線(ガラスがいし使用)に上信線加筆
2006.06.05 東富士線(6回線ドナウ型鉄塔)掲載
2006.06.11 東福岡幹線(6回線門型鉄塔)
2006.08.01 ワンポイント特殊設計箇所・掲載
2006.10.01 ワンポイント特殊設計箇所に77KV豊橋谷川線掲載
2006.10.16 多古線(現場打コンクリート柱)掲載
2006.10.21 古川橋意岐部線(ハンガー吊懸垂装置)掲載
2006.12.17 多古線(現場打コンクリート柱)一部訂正
2007.07.03 解説文全面的に見直し修正
2008.01.01 酒匂川線掲載
2008.09.01 片品川線の項に昭和電工・塩尻線を掲載
2008.11.10 77KV富田線掲載
2009.09.13 目次に運転開始年・記載
2009.10.11 片品川線・旧岩室線写真掲載
2010.04.16 海外の特殊送電線の項新設(「海外の送電線」の項から部分コピー)
2010.04.16 中国の特殊送電線掲載
2010.04.25 500kV北大和線掲載
2010.08.28 アメリカの特殊送電線
2010.11.15 中国の750kV1回線装柱・特殊送電線掲載
2011.10.25 ワンポイント特殊設計箇所に特殊鋼材使用送電線掲載


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酒匂川線(矩形鉄塔) (Sakawagawa Line)


 酒匂川線は、富士瓦斯紡績が、峰水力発電所(5,400KW)〜駒沢変電所間に、電圧66KV、こう長73.32kmの規模で、大正2年(1913)8月に運転開始させた送電線である。

 起点の峰発電所は、明治43年(1910)に既に完成しており、同時に小田原までの間に送電線を建設し、その前年の明治42年に運転開始していた塔ノ沢線系統と小田原の変電所で接続させていた。

 しかし、同社は玉川電気鉄道に電力を供給する契約を結んだため、駒沢地点まで送電線を建設することとなり、酒匂川線を建設したものである。
建設時には、東京幹線、別名峰駒沢線と呼ばれた。

 鉄塔は、大正元年に425基を石川島造船所に発注し建設したものである。
 その形状は、明治38年(1905)、全線鉄塔を使用した世界初の送電線である、カナダのトロント&ナイヤガラ電力(Toronto & Niagara Power Company)が建設した60KVナイヤガラ・トロント線(ナイヤガラ滝〜トロント間、約120Km、2回線鉄塔、2ルート、計4回線)(右モノクロ写真)を参考にしたと思われ、酷似している。
 この時期、鉄塔線路草創期には、ナイヤガラ・トロント線鉄塔が世界的教科書になったようだ。

 我が国では、同時期に建設した谷村線(77KV、大正2年6月)、八百津線(60KV、明治45年1月)が同様の鉄塔形状で完成している。

 酒匂川線のがいしは、ピンがいしが使用され、電線は、我が国初の硬アルミ撚り線及び硬銅撚り線、太さ70mu,100muが使用された。
(写真ではLPがいしが使用されているが、これは近年改良工事で交換したものである)


 なお、翌年大正3年(1914)7月には、川崎変電所に至る11Kmの分岐線を完成させ、同変電所周辺の工場へ電力供給するとともに、12月には、瀬谷開閉所から南に9.9kmの分岐線を建設し、保土ヶ谷変電所まで完成させている。

 現在の酒匂川線は、菅沼発電所から秦野付近までの間、約20kmであるが、当初の矩形鉄塔はすべて建て替え撤去されており、現在では見ることはできない。

 鉄塔線路草創期の標準型となったこの形状の鉄塔は、世界的には発祥の地・カナダでも殆ど残っていないと思われるが、メキシコでは現在でも現役運転されているのを Google earth にて確認(2012.02.21)した。

 我が国では、八百津線はすべて撤去され、谷村線も既に撤去されている。

 しかし、谷村線撤去跡の一部が相模湖付近に僅かに十数基、朽ち果てる寸前の鉄塔がまだ建っている(がいし・電線は撤去済み)。

 興味のある方は、相模湖ピクニックランドの南側(国道412号線、帝京大学付近)にあるので、現地に行けば、谷村線建設当時の(我が国の近代化産業遺産に値する)矩形鉄塔を、辛うじてまだ見ることができる。

 また、
1920年に揖斐川電力会社により、当初44KV後に77KVに昇圧した大垣送電線、こう長29.3kmが建設されているが、この送電線は現在イビデン株式会社の所有となり、逐次最新型の鉄塔に建替えされているものの当初に建設された鉄塔がまだ残っており、この型式の鉄塔で現役運用されている唯一の送電線である。 (当サイト「歴史に残る送電線」に掲載)



古川橋意岐部線(ハンガー吊懸垂装置) (Furukawabashi-Okibe Line)


 古川橋意岐部線は、大正12年11月に建設された77KV送電線である。

 古川橋変電所(門真市)から大阪市鶴見区を経過し、意岐部変電所(東大阪市)間を結ぶ送電線で、市街地の中を現在も部分的に建設当時の鉄塔設備で運転されている。

 建設当時は、4回線架線されていたものが、現在では2回線のみの架線となっている。これは経過地が次第に市街化され、地上高確保の観点から、最下段の電線を撤去せざるを得なくなったためではないかと思われる。

 本送電線は、写真のようにハンガー吊り装置と呼ばれる、特殊な懸垂吊り構造を採用している。

 これは、当時の60〜70KV級送電線ではよく見られるように、鬼怒川線と同じ設計思想で、回線内の各相のインピーダンスを出来るだけバランスさせるため、極力3相配置を正三角形に近い配置にしたので、特殊な吊り方になったと考えられる。
 あるいは、別の見方をすれば、線路幅を狭くしたい要求と、鉄塔高さを低くしたい要求の双方の折衷案として、この構造に落ち着いたのかもしれない。
 このような3角形配列にすると、わざわざ撚架鉄塔を配置しなくても、径間で120度ずつ捻って架線することで撚架が容易に出来るメリットがある。

 なお、細かいことだが、何故か最外側線のがいしは耐塩がいしを使用し、ハンガー吊り装置のがいしは標準がいしを使用している。



 この時代の3角配列方式は60〜70KV級送電線に止まり、鉄塔構造が大型となる110KV以上の送電線では、陰陽連絡線を除き猪苗代旧幹線など当初から垂直配列が採用されている。


 回線内の相配列を3角形に保つため、耐張鉄塔では4回線に対応させるため、長いアーム3段、短いアーム3段の計6段アームとして、各アームの先端に電線を架線している。

 現在は2回線架線であるが、当初は4回線が架線されていたことであろう。

 なお、同時期に建設された岸和田線も、本送電線と同一の構造をしていたそうであるが、現在では既に建て替えられて、今では見られない。



箱根線(2cct LPがいし使用鉄柱) (Hakone Line)

 箱根線は、大正13年(1924)4月に建設された66KV鉄柱送電線である。

 現在の箱根線は、駿東変電所〜西相模変電所間35Kmの間の送電線で、古い年代の設備から最近の設備まで、新旧設備が混ざっている。

 箱根線のうち建設当初の最も古い設備は、早川電力が、山梨県の榑坪発電所(現在の早川第1発電所)の電力を、川崎方面に送電するために建設した「東京送電線(榑坪発電所〜川崎変電所)」の一部であった。

 箱根線が運転開始した大正13年4月には、まだ全線が竣工しておらず、先行して竣工した「三島〜境川」で送電を開始した。

 設備は、支持物:主として2回線鉄柱、電線:HDCC50,55,150mu、であり、がいしは建設当初はピンがいしを使用していたと思われる。

 大正年代の鉄柱送電線で、しかも2回線形の鉄柱設備が首都圏近郊でそのままの形で現役稼働しているのは極めてめずらしく、また現在LPがいしが本線に使用されているのもめずらしい。

 本鉄柱設備は、ほとんどが鉄塔に建て替え撤去されて、平成18年現在、箱根峠の東側に数基がかろうじて残っているだけになった。
 (箱根新道から一瞬見ることができる)

 なお、線路名は、東京電灯時代には「早川線」と称した。

 箱根山岳地区間については、昭和20年代には吉原変電所〜多古変電所間を「吉原線」の名称で運用し、さらに駿河変電所が完成した以降は駿河(変)〜多古(変)間を「箱根線」とした。

 また、起点側が駿東変電所新設に伴い、駿河(変)から駿東(変)に変更され、終点側が昭和34年に多古変電所から西相模変電所まで延長され、現在の形態となった。



多古線(現場打コンクリート柱) (Tako Line)

 多古線は、66KV現場打コンクリート柱送電線で、前掲の大正13年4月に建設された箱根線と同一の送電線として建設された。

 すなわち、その設備は、早川電力が山梨県の榑坪発電所(現在の早川第1発電所)の発生電力を川崎方面に送電するため、大正13年4月に建設した「東京送電線(榑坪発電所〜川崎変電所)」の一部であった。

 同線路は、箱根越え等の山岳地帯は運搬が容易な鉄柱を用い、丘陵・平地部分には現場打コンクリート柱を用いたと思われ、沼津地区の一部、および小田原地区から東側(終点側)の丘陵・平地ルートについて、主に現場打コンクリート柱・ドナウ型設計になっている。

 当時は、支持物が木柱から次第に鉄塔に変わるちょうど変わり目の時期であった。代表的には猪苗代旧幹線(大正3年)、群馬幹線(大正11年)、甲信幹線(大正12年)、上越幹線(大正13年)などが建設されているが、早川電力では何故か鉄柱と現場打コンクリート柱を採用している。

 運転開始は上述のように大正13年4月であるが、2年前の大正10年には、コンクリート柱設備はほとんど建設されており、「大正12年9月の関東大震災に遭遇し、多くのコンクリート柱が折損して大被害を受けた(那須電機鉄工株式会社45年史)」との記録がある。
 しかし、半年後の大正13年4月に復旧させ運開させている。

 早川電力が建設した「東京送電線」は、東京電灯時代になり「早川線」として運用されていたが、昭和 8年に東京電灯が小田原に多古変電所を建設して同線をπ引き込みし、更に戸塚変電所にもπ引き込みして、多古(変)〜戸塚(変)間(約40Km)については、「多古線」として運用開始した。

 この多古線区間では、ほとんどの支持物は写真のような現場打コンクリート柱(径間長は約140m、約300基)・ドナウ型が使用され、電線はHDCC50muであった。
 後世の我々には、あたかも多古線としてコンクリート柱が建設されたかのように思われるが、早川線の設備を、多古線として使用したのが実態である。

 本設備は、昭和30年代半ば〜後半まで使用されていたが、全て鉄塔に建て替えられ、現在では見られない。

 我が国では、現場打コンクリート柱の送電線は非常にめずらしい。




武蔵境・新鶴見線(単一テーパー鉄塔) (Musashisakai-Shintsurumi Line)

 現在の標準的鉄塔形状は、地上から下アーム主材取付点までの主柱材の傾き即ちテーパー(転び)は、そこから塔頂までのテーパーより大きく、上部が下部よりもテーパーが少なく、上に行くほど垂直に近い構造になっている。

 すなわち、テーパーは2段構えになっていて裾広がりの形になっている。

 テーパーが変化する下アーム主材取付点を、一般に「ベンド点」と称する。

 このような2段テーパーの形が、鉄塔規模の大小にかかわらず一般的である。

 それに対して、右写真の鉄塔は、二等辺三角形で、上から下まで同一のテーパーであるめずらしい設計である。

 武蔵境・新鶴見線は、大正15年11月に建設された古い鉄塔で、旧国鉄が建設したものである。
 現在は、JR東日本の送電線である。

 当時は、主柱材を曲げ加工せず製作することに重点を置いて、設計したものと思われる。

 この形の古い鉄塔は、現在でもJR送電線に各所で使用されている。



南武線・川世線(特殊2連懸垂がいし装置) (Nambu Line,Kawase Line)

 154KV南武線および川世線は、その昔110KV群馬幹線が経過していたルートを利用し、154KVおよびその下部に66KVを併架した4回線送電線として、南武線は昭和元年、川世線は昭和15年に建て替え建設された送電線である。

 電線はHDCC250mu、本がいし装置の装備された鉄塔区間では、径間長は100m〜200m程度で、現在からすると非常に短径間であった。

 現在の2連懸垂がいし装置の設計は、がいしを線路方向に2連並べ、風による懸垂がいし装置の横振れに対しては「2連」が同一面・同一角度で横振れするようになっている。

 しかし、本送電線では、右写真のように2連がいし装置が、線路と直角方向に取り付けられた鉄塔がある。
このがいし装置では、風による横振れ時に、各連の分担荷重はアンバランスとなり、少しの風でも不安定領域に入ってしまうと思われる。
 (一般に使われる90度V吊りがいし装置の場合には、風による横荷重が加わっても、電線支持点が移動しない範囲で使用されており、その適用範囲は直吊り装置と同様に広い範囲にわたっている)

 本送電線の場合は、電線はHDCC250muで、ACSRに比べて質量が重く、鉄塔間隔は100m〜200m程度で短径間設計であり、かつ、がいし連アーム取付点がV字状にやや広がっており、これらの諸条件から、不安定領域には入らないように配慮されているようだ。

 現在の設計からすると、めずらしい設備である。

 なお、本線路経過地は地域開発が進んでおり、この写真のような当初鉄塔は建て替え工事が進んでおり、次第に少なくなっているため数年後には見られなくなるであろう。

 右写真は、残り少なくなった当初鉄塔を、平成18年1月に撮影したものである。

 なお、北多摩線にも、本設備と同様な懸垂がいし装置がある。


田代幹線(特殊アーム形状) (Tashiro Main Line)


 この写真を見て、2回線垂直配列の標準的形状なのになぜ特殊な扱いをするのか、と思われる方もおられると思う。
 しかし、よく見るとアーム主材が先端に向かい、下方に角度を付けているのがこの鉄塔の特徴であり、我が国の鉄塔としては特殊な形状と言える。

 田代幹線は、昭和2年に建設された送電線で、山梨県の早川系の水力発電所で発電された電力を京浜地帯に送電するために作られ、早川第三発電所〜川崎変電所間に建設された、こう長135Km、電圧154KV、電線ACSR250muの送電線である。

 この時代の送電線では、大正12年建設の甲信幹線、本線と同時期の昭和2年建設の黒部幹線、上越幹線など主要幹線ではでは、アーム主材は水平な形状であり田代幹線だけが特殊な形状になっている。

 ただ、昭和元年に建設された猪苗代新幹線の鉄塔で、部分的にアームが下方に角度を付けた鉄塔(右写真)が見受けられる。

 このような形状に設計した理由については、その詳細はよく分からない。
 クリアランス設計上、このような形状にしたのではないかと思われるが、そのメリットは現在の設計思想からするとあまりないように思われる。


 いずれにしても、全線こうした設計とした送電線は、本線以外にはないと思われる。

 上の写真は懸垂鉄塔であり、右の写真は耐張鉄塔である。
 懸垂鉄塔のがいしは、塩害対策上耐塩がいしに取り替えられている。

 この鉄塔のことを当時の技術者は、俗称アンブレラ鉄塔と呼んでいたが、確かに傘の形を連想させる形状である。


 なお、現在、建設当時の田代幹線の鉄塔は、起点から駿河変電所分岐点までの約50Km程の区間に限り見られ、それ以東のルートについては建て替え増強に伴い撤去され、見ることはできない。

 それらの、建て替え増強工事は、昭和30年代から始まっており、終点近傍の綱島付近の鉄塔は、建て替えに伴って栃木県の下滝線新設工事に流用され、第二の人生を送っているものもある。
 (東北新幹線の車窓から見ることができる)


大戸川新草津線(可撓(かとう)鉄塔) (Outogawa-Shinkusatsu Line)


 大戸川新草津線は、大正2年に滋賀県の大戸川発電所〜草津変電所間に22KV木柱送電線として建設されたが、その後草津変電所の手前に新草津変電所が建設され、終点を新草津変電所に変更すると同時に昭和6年に部分的に鉄塔化され、懸垂箇所は右写真の可撓鉄塔が適用されたと思われる。

 可撓鉄塔は、右写真のように2脚一面だけの鉄塔で、線路方向の荷重に対しては全く耐えられない構造になっている。
 従って懸垂箇所のみに使用されていた。

 可撓鉄塔は、四角鉄塔に比べて経済的に建設できるので、大正時代に採用されるようになり、大正末期には1,000基近い基数が建設されていたようである。

 可撓鉄塔の適用は、径間長は150m程度まで、また、連続して建設される場合は5〜10基毎に、四角鉄塔を用いていたようである。

 可撓鉄塔は、電力会社の送電線としては昭和50年代まで使用されていた記録があり、現在は全く使用されていないと思っていたが、大垣に本社のあるイビデン株式会社が所有・運営する大垣送電線に1基が、2008年現在、今でも現役で活躍していることが分かった。
(当HP「歴史に残る送電線」の「大垣送電線」参照)


 右写真の鉄塔は、関西電力・能力開発センター構内に歴史的に貴重な鉄塔として保存されているもので、大戸川新草津線No72鉄塔である。


 


 右写真は現役時代の大戸川草津線の可撓鉄塔である。



 可撓鉄塔は、主に関西方面で使用されていたが、東京電力管内でも、66KV入間線、66KV落合線などに使用されていたそうである。

 なお、「撓(とう、どう)」は「たわむ」と言う意味で、「可撓鉄塔」は、たわみが可能な、たわむことが出来る設計の鉄塔、と言うことが出来よう。


陰陽連絡線(正三角形配列鉄塔) (Inyou-renraku Line)

 陰陽連絡線は、神の瀬発電所〜米子変電所間、75Kmに、昭和11年に66KVで建設された。

 その後、昭和36年に110KVに昇圧されている。

 この送電線は我が国ではめずらしい「1回線正三角形配列」になっており、鬼怒川線と同様の形状(俗称バンザイ鉄塔)で、現存する送電線としては本邦唯一の設備ではないかと思われる。

 現在は、大部分建て替えが進んでいて、写真は現在線路名「安来米子線」の区間で撮影したものである。

 がいし装置を見ると懸垂、耐張鉄塔とも中線(最外側線)だけが長幹がいしで、上・下線は懸垂がいしを使用しているのが分かる(鉄塔によっては、上中下全て長幹がいしを使用しているものもある)。

 耐張鉄塔では、中線(最外側線)の引留点がわざわざ下方にずらしてあるが、建設当初は電線がHDCC55〜72muの細い電線であり、現在はACSR化され張り替えられて、最大使用張力は2倍位に増加していると思われるので、鉄塔強度の観点から現在は下方にずらしていると思われる。



とても優雅な形である。


片品川線(鉄骨コンクリート柱) (Katashinagawa Line)

 現在の片品川線は、元の岩室線を名称変更した送電線であり、上久屋発電所〜野中変電所間、約34Kmを結ぶ66KV2回線送電線である。

 元の岩室線(バンザイ形鉄柱)は、利根発電株式会社が、岩室発電所を大正4年(1915)に完成させた当時、その出力を南関東地区に送電するため、直前の大正2年に66KV・支線付き鉄柱等で、上久屋発電所から春日部(粕壁)、加須、越谷、幸手、千葉県市川方面まで、こう長117Kmにわたり建設した線路の一部分であろう。
 この送電線の里側の一部は、野中旧線(別名:前橋旧線、当初木柱で建設)だったと思われる。

 当初の岩室線は、ピンがいし使用の2回線支線付き鉄柱設備であった。
 東京電灯あるいは日本発送電株式会社時代には、6方向に出ていた支線を整理し、ピンがいしを懸垂がいしに取り替えして設備改修され、東京電力に設備移管されたときには1回線鉄柱設備に変更されていたようである。

 本送電線の所管が東京電力になって間もなく、1回線設備であった岩室線を2回線化する計画が持ち上がり、いかに効率的に設計するかが検討された。
 その時、支持物設計の第一人者である堀貞治氏が、鉄柱をコンクリートで捲いて鉄骨コンクリート柱にする案を考案し、設計・施工したのが現在の片品川線に用いられている右写真の鉄骨コンクリート柱である。

 鉄柱の斜材を取り外し、それをラーメン結構のように水平取り付けし、それらをコンクリートで捲いて鉄骨コンクリート柱とした。

 側面は風圧を低減するため水平材の間は風穴とした。

 この結果、基礎の僅かな補強によって、経済的に1回線鉄柱を、2回線鉄骨コンクリート柱に強化することができ、極めて特殊な構造の送電線となった。
 しかも、施工期間は極めて短時日で済み、 昭和29年に完工した。


 このタイプの支持物は、現在ではほとんど鉄塔化され、次第に姿を消しており、平成18年現在、最も里側で残っているのは渋川の佐久発電所近傍に8基ある。

 この区間の鉄骨コンクリート柱も順次鉄塔化される計画のようであり、遠からず全て鉄塔化されると思われる。
 興味のある方は、早めに行かれることをお勧めする。



 元の岩室線(バンザイ形鉄柱)は、利根発電株式会社が、岩室発電所を大正4年(1915)に完成させた当時、その出力を南関東地区に送電するため、直前の大正2年に66KV・支線付き鉄柱等で、上久屋発電所から春日部(粕壁)、加須、越谷、幸手、千葉県市川方面まで、こう長117Kmにわたり建設した線路の一部分で、右写真の形の鉄柱であった。

 当時の写真は、探しても無いが辛うじて送電線建設技術研究会の発行図書に掲載されていたものを見つけコピーしたものが右写真である。

 この写真は、野中旧線として運用されていたもので、太田市市内で昭和43年(1968年)頃撮影されたものである。

 この鉄柱の設計詳細図は、リンク先ページ「元の岩室線(バンザイ形鉄柱)」に掲載しているのでご覧いただきたい。



 なお、片品川線の鉄筋コンクリート柱は、三研工業株式会社が「S.Kコンクリート電柱」として特許を取り、上記の片品川線の他にも使用した送電線がある。

 それが右写真であるが、昭和電工株式会社の「塩尻送電線」である。

 概要は下記の通り。
 ・電圧:70KV
 ・電線:HDCC55mu
 ・標準スパン:180m
 ・柱体寸法:柱長21.5m、末口32p
 ・運転開始:昭和28年6月
 



 場所によっては、H柱として使用したところもある。

 この塩尻送電線写真は、林潔氏の提供によるもので、当時の貴重な記録写真である。


南大田線(2塔体鉄塔) (Minamiouta Line)

 154KV南大田線は昭和40年に建設された送電線である。

 川崎火力の電力を都心に送電するため、都内・南大田変電所の間に154KV3回線の地中送電線を建設したが、途中の多摩川横断箇所 0.63kmの部分だけを架空線で建設したもの。

 架空線部分は3基で、多摩川の左岸・右岸の堤防に隣接して地中・架空の接続鉄塔(右写真)を建て、中間に(河川敷内に)1基建設した。

 ルートは、羽田空港から近く、航空法上高さ制限があり、鉄塔高を高くできない。
 しかし、河川敷内の線路幅は自由度があるため、3回線を同一レベルに各回線縦配列にした設計となった。

 両端の地中・架空接続鉄塔は、2つの塔体に3段アームを配置し、各回線とも垂直に3相の電線を引き下ろし、ケーブルヘッドに接続している。

右写真は右岸の川崎側鉄塔である。


 中間の鉄塔は、V吊懸垂矩形鉄塔である。

 後方の鉄塔が、左岸の東京都側の架空・地中接続鉄塔である。

なお、多摩川を十数Km遡った地点には、154KV戸越線が多摩川を横断しているが、中間鉄塔がなく両端の鉄塔は本送電線とほぼ同一の設計になっている。



高崎線・上信線(ガラスがいし使用) (Takasaki Line,Joushin Line)


 高崎線は、群馬変電所〜西毛変電所間、こう長約14Kmの66KVで、当初昭和38年10月に八塩線として建設された送電線を、昭和47年に現在の形に増強工事した。
 そのほとんどの区間は4cct鉄塔で、下部に66KV根小屋線を併架している。

 高崎線の西毛変電所側の14基には、我が国では極めてめずらしいガラスがいしが使用されており、それが取り付けられたのは、増強工事と同時期の昭和47年である。

 取付個数はおよそ1500個弱であろう。
 ガラスがいしが適用された具体的な経緯は不明であるが、昭和47年頃に試験的に国内で製作し、我が国の気象条件下でガラスがいしの長期的信頼性を検証するため、試験的に取り付けられたようである。

ガラスがいしは、250mm標準懸垂がいしと同等の性能と評価して使用されている。
 平成18年現在で、34年経過しており、劣化状況など技術的使用実績の公表が待たれる。
 


 また、ガラスがいしは、東電の同じ群馬県内で、 66KV上信線にも試験的に使用されている。

 現在の上信線は、群馬県の松谷発電所から長野県の島河原発電所(約50Km)間であるが、途中の羽根尾発電所までが大正14年に、同発電所から島河原発電所側が昭和8年に建設された。

 ガラスがいしが使用されている箇所は、昭和8年に建設された区間で、鹿沢発電所から長野県境までの間であり、取付時期は昭和43年である。

 取付状況は右写真のように、1号線側(写真左側)がグリーン色でフランス製、2号線側(写真右側)が無色(透明色)でイギリス製で、それぞれ800個弱が使用されている。

 高崎線は昭和47年に製造された国産品であるが、上信線はそれより4年前に西欧から輸入されたもので、国産との比較もなされているようである。

 いずれも我が国の気象条件下で、ガラスがいしの長期的信頼性を検証するため、試験的に取り付けられたようである。


 右写真は、イギリス製・無色ガラスがいしの、耐張がいし装置のクローズアップである。
 本品は磁器がいしの250mm標準がいしと同等の性能として評価し、使用されている。


 右写真は、フランス製・グリーン色ガラスがいしの、耐張がいし装置のクローズアップである。
 本品も磁器がいしの250mm標準がいしと同等の性能として評価し、使用されている。

 なお、ガラスがいしは、この両線路の他、66KV北軽線のごく一部にも使用され、また静岡県の66KV伊東線のごく一部にも、やはり試験的に使用されている。
 伊東線のがいしは、昭和47年製造の国産である。


東富士線(6回線ドナウ型) (Higashifuji Line)


東富士線は、昭和44年に東富士変電所(現在の新富士変電所)から駿東変電所間に建設された、こう長約31Km、電圧154KV・4回線設計の送電線である。

経過地の一部は自衛隊駒門駐屯地に隣接しており、その演習に支障の無いよう鉄塔高を極力低くするように要請され、右写真のようにドナウ型鉄塔とした。

当該区間には66KV岩波線を併架しており、極めてめずらしい多回線6cctドナウ型鉄塔となった。

本区間は、オール耐張形の設計となっている。


 なお、154KV猪苗代旧幹線を建て替え増強した栃山線では、宇都宮市南部のJR東北新幹線と並走している区間で、鉄塔高抑制条件のため、4cctドナウ型鉄塔を採用している。

 この区間は、154KV2cctに66KV2cctが併架され、4cctとなっている。

 また、ルートの直線部分には、V吊り懸垂がいし装置を用いた懸垂形鉄塔が採用されている。

 このほか、立地環境条件で鉄塔高を一定高さ以下にする条件下では、このドナウ型が門型鉄塔と同様に各所で用いられている。


安曇幹線(三角配列) (Azumi Main Line)


 安曇幹線は、長野県の梓川に建設された安曇および水殿の両揚水式水力発電所の電力を、首都圏に送電するため、建設された。

 本送電線は、安曇発電所から埼玉県鶴ヶ島市の新所沢変電所までの168Kmの間に、電圧:500KV(起点側18Kmは275KV)、鉄塔:1回線水平および三角配列配列のえぼし形鉄塔、電線:TACSR240mu4導体を使用し、昭和44年に建設された。

 この経過地は山岳地帯で、その80%が標高600m以上で、さらにそのうち30%が1,200mを越える高地であり、冬季の季節風が強く過酷な気象条件の箇所が多いため、1回線水平配列方式を採用した。

 しかし、終点側の新所沢変電所近傍約11Kmの区間は平野部で、気象条件も厳しくないので、用地事情も考慮して我が国ではめずらしい三角配列を採用し、線幅を狭めた設計(水平配列区間の線幅28mに対して三角配列区間は16m)とした。

 右写真は三角配列えぼし形懸垂形鉄塔である。


 右写真は三角配列えぼし形耐張形鉄塔である。

 この三角配列えぼし形鉄塔は我が国では初めてである。

 なお、水平配列および三角配列のえぼし形鉄塔は、一般の標準型に対してウエスト部分より上部の結構が複雑なため、組立工事が難しく、特に500KV設計の大型鉄塔としては経験がないため、工法研究を行って、鉄塔の中心に組立用鉄柱を建てる工法を採用するとともに、部分的に組立用仮補強材を取り付け、工事を安全に実施したことが本送電線の特記事項の一つである。



東福岡幹線(6回線門型鉄塔) (Higashifukuoka Main Line)


 東福岡変電所から東北東に向かって約1.3Kmの間には、220KVの送電線3ルートが門型鉄塔(8基)に併架されて並走している。

 すなわち、@220KV東福岡新幹線(北九州変電所〜東福岡変電所、2導体、昭和47年建設)、A220KV東福岡東部清掃工場線(東福岡変電所〜東部清掃工場、単導体、昭和46年建設)、B220KV東福岡幹線(山家変電所〜東福岡変電所、2導体、昭和46年建設)の3ルートである。

 その3ルートの設定は、北側から南側に向かって@ABの順序であり、写真では左から@ABの順序で配置されている。

 当該区間は、福岡空港の滑走路中心から約4Kmの位置(高さ制限45m)のすぐ外側に隣接しており、縦方向の多回線併架鉄塔を避けるため3ルートを横方向に併架・並走させた。
なお、この区間を過ぎ、空港から遠方の所では、@Aが標準的4回線鉄塔で併架されている。

 また、3ルートの送電線を単独にせず門型にして併架したのは、用地幅を極力狭めるためと思われる。

 220KV超高圧送電線・6回線の、多回線・門型鉄塔は極めてめずらしい。


西島山線(鉄塔間を横梁で連結) (Nishijimayama Line)


 西島山線は、尼崎市の南大浜変電所と大阪市の西島変電所間を結び、尼崎港を東西に経過する77KV送電線である。

 当初は、4回線だけが昭和13年に建設され、そのルートに隣接・平行して更に4回線が昭和47年に建設された。

 各鉄塔とも隣接して建てられており、この新旧鉄塔間を3段の横梁・アームで連結して門型化している。

 この連結アームにより、単独の鉄塔よりも線路の横荷重に強い構造となっていると思われる。


 上の写真の次の鉄塔は、用地事情からか矩形鉄塔に建て替えられており(右側写真)、更にその次の鉄塔は連結アームが最上段一段になっている(左側写真)。

 鉄塔によって多少の構造変化があるものの、ほとんどの鉄塔が新旧鉄塔を一体化した構造になっている。

 このような鉄塔構造を俗称で「アベック鉄塔」と呼ぶことがある。

 同じような構造の鉄塔は、本線の他には名古屋の南方、名和町地区に昭和34年に建設された154KV新名火大高線があったが、現在は既に建て替え撤去された。


港北線(超狭線間・狭根開鉄塔) (Kouhoku Line)


 港北線は、その昔、昭和26年に275KV設計西東京幹線として群馬県・金井発電所から横浜市・綱島変電所までの間に建設された送電線(当該区間は154KV設計)を、港北ニュータウン開発計画に従い、開発地域内についてはルート移設・建て替えした275KV送電線である。

 開発地域内では、幹線道路のグリーンベルト内に建設することとし、275KV送電線としては極めて幅の狭い設計にせざるを得ない状況の中で、超狭線間設計として建設したものである。

 一般に275KV送電線は、線路幅は13〜16mであるが、グリーンベルト内に納めるため、8m幅にせざるを得なかった。

 また、根開きについても同様に狭い設計となり、標準鉄塔高62mに対して根開きは5.6m、根開き対塔高の比は約1/11となって、鉄柱並みの著しく細長い形状にせざるを得なかった。
(通常の鉄塔では、根開き対塔高比は1/4.5〜1/9程度である)

 このような細長い狭根開きの鉄塔は、通常設計では剛性が低下するとともにたわみが増加して、垂直荷重の偏心載荷の影響が顕著になる。
 そこで、設計部材を通常の2倍程度に大きくして、鉄塔の固有振動周期を従来の経験の範囲内に収めるとともに、鉄塔頂部のたわみを半減させ安全性を確保した。
 この機能を確認するため、実物鉄塔による耐荷重試験を行い、確認をしている。

 設計諸元は、電圧275KV、電線ACSR680mu2導体、がいしは280mm懸垂がいし、架空地線AS100muであり、昭和50〜53年竣工である。

 なお、下部に66KVを併架可能の設計になっており、写真撮影部分は未架線だが、他の区間では架線済みである。


 超狭線間送電線のジャンパ線設計は、各所で数々の工夫がされているが、本送電線でも長幹がいし傾斜V吊装置を開発して、全ての設備が10mの幅に収まるようにした。



新寝屋川古川橋線(ボックス断面美化鉄塔) (Shinneyagawa-furukawabashi Line)


 新寝屋川古川橋線は、昭和53年に建設された77KVの送電線で、既設の枚方古川橋線4cctを、新寝屋川変電所にπ引き込みするために建設された。

 この建設地は大阪市の公園予定地で、その環境と調和させるため、ボックス断面鋼管部材を用いた美化鉄塔として建設した。

 また、鉄塔脚間に将来道路建設が予定されているため、正面脚間は20m幅をもつ特殊な構造となった。

 鉄塔の正面構造は逆Kトラス構造で、側面はラーメン構造になっており、四脚三層ラーメン構造となっている。

 8回線という多回線鉄塔でありながら、スマートでコンパクトな構造であり、色が白色で美しい。


 枚方古川橋線4cctを、新寝屋川変電所にπ引き込みするための引留鉄塔で、上の写真の美化鉄塔に隣接した鉄塔である。

 上の美化鉄塔と同様、鉄塔下に将来道路が建設予定なので特殊な形状になったと思われる。

 矩形鉄塔として分類される構造であろう。


関門連系線(500KV門形鉄塔) (Kanmon-renkei Line)


 九州電力、中国電力、関西電力間の系統連係の強化を図るため、西地域連系線として3電力間を縦断して関西電力西播変電所〜九州電力北九州変電所間、約420Kmを結ぶ500KV幹線送電線が昭和55年に建設された。
 関門連系線は、そのうち最西端の送電線で、九州電力北九州変電所から関門海峡を横断し、中国電力新山口変電所に至るこう長約64Kmの500KV送電線である。

 本送電線は、北九州変電所から約15Kmの地点で、北九州空港の滑走路延長線地点を通過するが、同地点付近では九州電力の220KV西谷門司線を併架しており、構築物高さ制限を受け標準型の鉄塔構造では制限をクリアーできないため、500KV送電線としては極めてめずらしい門形鉄塔を採用している。

 我が国で、500KV送電線で門形鉄塔を適用しているのは、本送電線だけであろう。



北大和線(500KV環境調和(SMC)鉄塔) (Kitayamato Line)


 500kV北大和線は、昭和44年(1969年)に「山城南線」として新生駒変電所〜南京都変電所間に建設された送電線である。
 その後、系統拡充計画により平成11年に区間が新生駒変電所〜東大和変電所間に変更(延長)され線路名も「北大和線」に変更されている。

 さて、京都府相楽郡精華町を中心とし京都、大阪、奈良の3府県にまたがる丘陵地帯約15,000ha(東西約20km、南北約18km)の広大な地域に産・学・官の密接な連携のもとに文化、学術、研究、産業の新しい拠点を形成するとともに、未来を拓く知の創造都市を築く基本構想が昭和57年(1982年)に当時の国土庁により策定された。
 これを基に、魅力ある居住環境、都市環境の創造を目指すナショナルプロジェクトとして、「関西文化学術研究都市建設促進法」が昭和62年(1987年)に公布・施行され、文化学術研究都市の建設が開始された。

 本送電線は京都府相楽郡精華町地内を経過しており、ちょうど開発の中核をなす精華・西木津地区を東西に約4kmにわたって通過している。

 そこで、都市計画に合わせてルート移設をすることとし、移設に当たっては都市計画にできるだけ調和した鉄塔にするため500kV級では我が国初めての環境調和鉄塔を採用した。


 右の大きい写真は環境調和鉄塔を撮ったものであるが、小さい写真に示す一般箇所の鉄塔に比べてシンプルでスリムな構造になっていることがよく分かる。

 この採用検討に当たっては、関西電力は学識経験者を含めた検討組織を立ち上げコンピュータグラフィックによる形状検討や、縮尺モデルによる風洞実験など、さまざまな技術検討を行って構造を決め、最終的には実規模鉄塔による耐力確認試験を行い安全性の確認をしたとのことである。

 この鉄塔は、スリム、シンプル、シングルワーレン構造という特性を持ったMC鉄塔であることから、「SMC鉄塔」と名付けている。

 このSMC鉄塔の特徴は、
●シングルワーレン結構を採用するなどして、部材数を従来の鉄塔に比較し1/5に抑えシンプルな構造とした
●塔体幅を従来の鉄塔に比較し70%まで狭めスリム化を図った
●鉄塔アームは、従来のトラス構造に代えてI型鋼板を使用、桁構造とし外観のシンプル化を図った
●鉄塔には地域にマッチした淡いベージュ系の塗色を施した
などである。

 本移設工事は、都市開発プロジェクトの工程に合わせ2期に分けて実施しており、まず、西側の5基について平成3年(1991年)12月に移設工事を完成させ、残りの東側6基については平成7年(1995年)4月に完成させて、合計11基が地域にマッチした環境調和鉄塔として建設されている。
 この11基の鉄塔はすべて耐張型で、遠望景観対策上鉄塔高さの平均化を図っている。


 本移設工事区間には、クランク状に水平角度が直角に近い80度弱の重角度箇所があるが、その箇所の鉄塔は右写真のようにスッキリしたアーム構造とジャンパ線処理がなされ、スリム感を維持している。

 なお、電線はACSR410mu4導体、がいしは320mm懸垂がいし一連26個2連装置、ジャンパV吊用がいしは250mm懸垂がいし一連34個の設備である。

 鉄塔構造以外の環境対策としては、電線・耐張クランプなどは目立ちにくいようにサンドブラスト方式および表面仕上げ処理による低反射化を実施している。

 さらに、鉄塔パイプ材、がいしキャップ部への風騒音発生防止対策を実施し周囲居住環境にきめ細かく配慮している。


西北線(275KV都市型鉄塔) (Seihoku Line)


 西北線は、昭和45年に町田市の西東京変電所から府中市の北多摩変電所間、約8Kmを結ぶ、超高圧都心導入を目的として建設された275KV送電線である。

 使用電線はACSR410mu4導体である。

 このルートは、建設当初はまだ緑が豊かな丘陵地で、都市化の開発はされていなかったが、最近では私鉄京王相模線の開通などで、都市開発が盛んに行われている。

 地域開発計画により、既設鉄塔を建て替えることになった3基について、開発計画と整合させると共に、景観にマッチしたスリムでスマートさを追求した「都市型鉄塔」を開発し、平成7年に建設した。

 アーム形状、塔体構造、ジャンパ線形状など極力スリムでスマートさを追求検討して建設した。

 既設の鉄塔に比較して、格段に環境にマッチしたスタイルになっていると思われる。



小松台線(特殊な片側垂直配列) (Komatsudai Line)


 小松台線は、66KV館林線から分岐して特高需要家に供給する鉄塔8基、約2Kmのの短い線路で、平成11年に建設された。

 経過地は埼玉県羽生市で、右写真のような特殊な片側垂直配列鉄塔を採用している。

 一般的な「片側垂直配列」設計では、塔体の片側に全ての荷重が加わるので、偏心載荷によるたわみの発生を極力少なくするため、出来るだけ電線支持点を塔体に近づけ、鉄塔塔体に加わる偏心荷重を低減することに配慮している。

 しかし、ここでは鉄塔は農道を避けて水田に建てているが、用地事情のため、農道上に電線を通すと共に、上下回線にオフセットを付けているため、長いアームにせざるを得なかったようである。

 常時の偏心荷重によるたわみ発生を軽減するため、塔体構造は標準配列鉄塔に比較して増強されていると思われる。

 本送電線と同様な設計が、66KV大宮線から分岐して、特高需要家に供給している日本ピストン与野線(平成5年建設)に見られる。


百頭線(コンパクト装柱鉄塔) (Momogashira Line)


 「アームがいし装置」、または別名「がいしアーム」を使用したコンパクト送電線は、各電力会社でそれぞれ開発し、運用しており、地域事情に応じた装置・形状のものがいろいろある。

 本サイトでは、66KV 4cct百頭線に適用された装置を掲載した。

 がいしアームを用いたコンパクト送電線は、水平線間幅、および垂直線間間隔を狭くできるので、用地事情で線路幅を狭くしたい場合とか、既設線路の支持物をそのままで、一段上位の電圧に昇圧し、増強・効率化を図りたいときなどに適用される。
 ただし、後者の場合には、支持物構造ががいしアーム取付改造が可能であることが必要である。

 さて、百頭線は、栃木県足利市の南端を経過している約13Kmの66KV送電線で、将来上部2cctを154KV化する計画があり、今回平成14年7月にその一部3.8Kmを154KV化する工事が行われた。
 この工事で一部にコンパクト装置が適用された。

 写真は、懸垂鉄塔がいしアームである。

 がいしアームには、有機がいしが使用されるケースもあるが、この装置ではがいしは全て磁器がいしである。
 懸垂がいし装置は、一般箇所250mm懸垂がいし14個連のところ、耐塩がいしを使用して12個連とし、がいし連長を短縮し、既設線路幅以内になるように設計されている。


 耐張箇所は、66KVの支持物構造で、154KVのクリアランスを確保させる必要があるため、ジャンパ線については補強線と長幹支持がいしを使用し、外側に突き出させてクリアランスを確保している。
 特に、狭い上下間隔の中での外側ジャンパ線のクリアランス確保がキーポイントである。

 なお、平成17年現在、昇圧はまだされていない。


常陸那珂火力線(500KV都市型鉄塔) (Hitachinaka-Thermal power Line)

 常陸那珂火力線は、茨城県の常陸那珂港・北埠頭に、東電とJ−POWER(電源開発)で建設中の常陸那珂火力発電所の電力を、那珂変電所に送電するための275KV(500KV設計)送電線で、平成14年5月に運用開始した。

 その概要は、こう長18Km、電線TACSR810mu 4導体、がいし320mm 35〜45個連である。

 火力発電所引き出し部分の4基は「常陸那珂国際港湾都市計画地」の中に建設するため、スマートでシンプルな鉄塔形状とすることとし、景観面に配慮した鉄塔(いわゆる都市型鉄塔)を採用している。

 具体的には、極力部材数を少なく、すっきりとした印象となるよう、アームは変断面T型鋼を用いた片持ち梁構造とし、塔体部は最下節以外にシングルワーレン結構を採用し、部材数を普通鉄塔の1/3程度としている。

 また、右写真のような重角度の鉄塔では、通常は外側のジャンパ線を塔体から離すため、アームの幅を広げるとか外側に突き出して対応し、ジャンパ吊りがいしの構造も複雑になるが、本鉄塔ではプレハブジャンパ装置と逆V吊りがいし装置を組み合わせて使用し、シンプルに収めている。

 なお、今回採用した鉄塔は、従来にない特殊構造であるため、技術課題について解析、実規模骨組み試験により合理的な設計手法を追及し、特殊な構造にもかかわらず、普通鉄塔に比べ、コストで1.2倍程度に抑制できたそうである。

 一般の500KV鉄塔に比較して、とてもスリムでスマートである。


77kV富田線(鉄塔毎回線間ジャンパ線) (Tomita Line)


 写真は、北陸電力株式会社の77kV富田線である。
 撮影箇所は、大野市の七板地区である。

 鉄塔装柱は2回線であるが、回線間ジャンパ線を設け、回線間を橋絡をして1回線送電線として使用している。

 一般に、2回線設備の送電線を1回線として運用することは、起終点の電気所での系統運用条件等の理由で、希にあるが、この場合には、その送電線の起点と終点の鉄塔で回線間を接続するのが普通である。

 しかし、本送電線は鉄塔毎に回線間にジャンパ線を設置し、回線間を接続している。

 この理由は、送電用避雷装置を設置するにあたり、各鉄塔にて回線間を接続するジャンパ線を設け、その中間に送電用避雷装置を設置することにより、各回線に設置する場合には6個必要なところ、半分の3個でその目的を達成し、送電用避雷装置の取付け数量を半分に減らすことができ、経済的メリットがあるためである。
 
 写真のように、この装柱にするにはジャンパ線用アーム、ジャンパ線およびラインポストがいしが必要になるが、送電用避雷装置の取付け数量を半分に減らせるので、トータルとしては経済的である。

 よって、各鉄塔は、このようなめずらしい装柱となっている。




 上記鉄塔を真下から撮影した写真で、回線間ジャンパ線の状態がよく分かる。



ワンポイント特殊設計箇所については、左の文字列をクリックしてリンクページに入ってご覧下いただきたい。



海外の送電線

アメリカの特殊送電線

アメリカの送電線の詳細は「海外の送電線」の項をご覧いただきたい。


 サンフランシスコ近郊を経過している500kV送電線である。

 鉄塔は塔体内側に支線を設けた矩形鉄塔とでも呼ぶような構造である。

 電線は2導体であり、がいし装置は標準懸垂がいしを使用し、一連個数は直吊り33個〜34個、V吊り36個連結である。

 電線相互の水平間隔は約13mで、左右外側の電線水平間隔は約26mである。




 右写真は、同上500kV送電線のサンワーキン川河川横断箇所に建設された高鉄塔である。

 
 この写真の鉄塔は、シェラネバダ山脈を水源として南から北上してサンフランシスコ湾に流れ込むサンワーキン川の河口の手前を横断するもので、約780mの長径間箇所に建設されたものである。

 径間長はさほど長くないが、航行する船舶のマストからの離隔を確保するため高鉄塔になっている。

 画面の左径間が河川横断径間である。

 左と中央の2基が同上の500kV支線付矩形鉄塔送電線の鉄塔で、この鉄塔だけがえぼし型を採用している。

 右端の鉄塔は、別の500kV送電線路の鉄塔で三角配列鉄塔を採用している。



 この写真は、同上の500kV送電線において河川横断高鉄塔の高張力電線を引き留めるために建設されたもので、各相毎に引留用塔体を建設している。

 鉄塔の左側が高鉄塔側で、引留がいし装置は高張力電線を引き留めるため4連正方形配列の装置を適用している。
 一般径間側は右側で水平2連耐張装置を使用している。

 なお、ジャンパ線は一段上に渡した梁から直吊りがいしを吊り下げ塔体接近を回避している。



 アメリカ大陸の西側を南北に走るシエラネバダ山脈の山懐に抱かれたネバダ州西部の町リノ(Reno)は、ラスベガスと共にカジノが盛んな町(ギャンブルタウン)として有名であるが、そのリノへ電力を送電する主な送電線として右の写真の345kV送電線が建設されている。

 すなわち、この345kV送電線はリノから東北方向にブラックロック砂漠を約250km行った所にある大規模(火力)発電所の出力をリノまで送電するために建設されたものである。


 支持物形状は、上部はえぼし型三角配列鉄塔に似ているが、下部は支線付鉄柱であり、総称して支線付鉄柱と呼ぶべきものであろう。
 
 電線は垂直2導体で、がいしは懸垂がいしを用い一連個数V吊り23個、直吊り18個である。

 写真から判断すると材質はアルミを使用しているようだ。



 シカゴ近郊を経過している345kV2回線送電線である。

 765kV1回線鉄塔と酷似の構造をしており、765kV1回線送電線にすぐにでも流用できる構造の線路である。

 とにかく架空地線用アームがいかめしく、目立つ鉄塔である。

 



シカゴの西約50kmの町エオラ(Eola)で撮った345kV2回線垂直配列鉄塔線路である。

 市街地化された町の中を通過するので、2回線垂直配列鉄塔を使用している。

 一般には、オフセットを付けた鉄塔は中相が最もアーム幅が広く外側に張り出しているが、アメリカの345kV2回線垂直配列鉄塔ではこの写真のように中アームが逆に狭くなった形状になっているものが標準的形状である。


 がいし一連個数は18個で標準的設計である。



イリノイ州・ミシシッピー川の東で見られた全くめずらしい送電線である。

 下アームから上部には本来無ければならないはずの鉄塔主柱材がない腹材だけの結構の鉄塔で、誠にめずらしい形状の鉄塔である。

 電圧は69kVで、がいし一連個数6個である。



デンバーの西の郊外で見られた送電線で特殊な結構をしている矩形鉄塔である。

 電圧は115kVであろう、がいし一連個数8個である。

 建設時期はかなり古いものと思われる。


中国の特殊送電線

 当ホームページ開設者は中国旅行の経験はないが、友人及び知人が北京方面および四川省方面を旅行したときに撮った、誠にめずらしい鉄塔形状の送電線写真を提供していただいたので紹介する。
<750kV 2回線装柱・特殊送電線>


 右写真は、上段アームに水平に4相が配置され、下段アームに2相が配置された2回線送電線である。

 鉄塔形状は逆ドナウ型とでも言えるような誠にめずらしい形である。

 電線は6導体であり、がいしは耐張がいし装置が2連装置で約40個連結であるので、電圧は750kVであろう。



 右写真は、懸垂鉄塔である。

 塔体の左右に1回線ずつ計2回線の送電線である。

 電線配列は、回線毎に逆三角形配列で、1本のアームに架空地線から電力線2回線分が全て懸垂支持されている。

 がいしは、有機がいしを使用している。

 アーム幅は片側約25mほどと思われ、全長は50mほどではないかと推測される。

 2回線垂直配列の我が国標準的鉄塔構造に比較し、送電線用地幅は2倍ほどに広くなるが、アームが一段でシンプルであり、かつ鉄塔高は低く耐強風および耐氷雪設計上は有利であると思われる。



 右写真は耐張鉄塔である。

 懸垂鉄塔がシンプルなのに比べ耐張鉄塔はジャンパ線の引き回しのために特殊なアームを設け、極めて複雑な構造になっている。


 2回線垂直配列の鉄塔に比較して、この構造では有利な点は殆ど無いように思われる。

 ジャンパ線工事は特に手間暇かかるのではないか。

 何故このような設計にしたのか、耐張がいし装置を用いる角度鉄塔については、この設計ではデメリットが多いと思われる。

 しかし、この電線配列の送電線では、一方で懸垂鉄塔に於ける鉄塔スリム化のメリットが大きいため送電線全体として建設工事費の低減が計れるためこのような鉄塔形状になっても採用したものと思われる。


 ただ、線下幅が広いため用地面積は多く必要であり、用地費が高価な地域では、この設計は採用されないであろう。

<750kV 1回線装柱・特殊送電線>


 上記の750kV2回線送電線が1回線送電線となる区間の1回線装柱鉄塔を撮影したのが右写真で、懸垂鉄塔である。

 変形えぼし型鉄塔の窓の中に逆3角形配列の3相が架線されているめずらしい鉄塔である。

 がいしは全て有機がいしである。

 下相は、電線垂直荷重をほとんど水平に近いV吊り角度の有機がいし懸垂装置で吊っており、上2相のがいしに比較して引っ張り強度が格段に強い規格の有機がいしが使用されていると思われる。

 鉄塔部材をよく見ると見ると、内側方向に大きな荷重のかかる下相がいし取付け点位置までは、太い部材を使用した強い構造になっているのが分かる。



 右写真は、750kV1回線(逆3角相配列)送電線の重角度耐張鉄塔である。

 ジャンパ線は、千鳥型に設置したアーム先端に、前掲の2回線鉄塔のジャンパ支持方式と同様に線路方向に補助アームを突き出して有機がいしでジャンパ線を吊架している。

 本線の引留がいし装置は有機がいしではなく、懸垂がいしを使用した2連耐張装置である。

 この鉄塔も誠にめずらしい構造の鉄塔である。


<500kV 1回線装柱・特殊送電線>


 右写真は、変形えぼし型鉄塔で懸垂鉄塔である。

 電圧は、500kVであろう。電線は4導体方式である。

 えぼし型の鉄塔で、窓の形が円形に近い多角形であるのがめずらしい。


 えぼし型鉄塔の窓の形は、一般的には逆5角形(将棋の駒を逆にした形)であるが、電線配列を3角形にしたためこの形となったと思われる。





 この形状に似た鉄塔としては、イタリアのローカル送電線で変電所引き込み箇所に採用されているものがある。(小写真右)

 なお、カナダの500kV送電線では、窓の形がほぼ逆三角形になっているものもある。(小写真左)

ドイツの特殊送電線

ドイツの送電線の詳細は「海外の送電線」の項をご覧いただきたい。


 右写真は110kV2回線水平配列送電線の耐張型鉄塔である。

 2回線水平配列の送電線は横幅が広く、110KV送電線で、電線間隔が4.5m前後と思われ、アーム長さは約30m弱にもなり、電圧が高い送電線ではアーム幅が異常に広くなるので、確認できた送電線はほとんどが110KV以下の送電線であった。
 しかし、なかには220KVの2導体送電線も見られた。

 大体、アーム地上高と、アーム長さが同じようであった。

 塔体は比較的細く、鉄柱かと思えるようにテーパーもあまり付かず、スレンダーであった。

 ドイツではこの水平配列またはドナウ型が主流であった。



 右写真は220KV単導体送電線である。

 水平配列またはドナウ型が主流のドイツで、特異な形をした設備である。

 同じ形状の懸垂鉄塔も見られた。

 この送電線は1922年に建設開始されたドイツで有名な「220kV南北線」であろう。
 詳しくは、送電線の定義:送電電圧の上昇推移・交流送電線一覧表の(注6))を参照されたい。

 我が国でもそうであるが、昔は3相送電線の各相ごとのインピーダンス(交流抵抗)を極力等しくする目的で、電線配列を1回線の場合は正3角形に、2回線の場合は正6角形にする努力をしたようである。

 我が国では、66KV鬼怒川線、110KV陰陽連絡線などがその例である。

 ドイツは3相交流送電線の発祥の地であり、その頃の技術者達はいろいろな工夫・開発をしてきたと思われ、この送電線も電線配置を正6角形にするため、開発した鉄塔構造であろう。

 古い設備を大切に運用していることが分かる。



 通常架空送電線は、3相3線式であるのが常識で、従って3で割り切れない電線数が架線されている送電線は、我が国ではまず無いと言っても過言ではない。(下北半島および紀伊半島の直流送電線を除いて)
 ところが、ドイツでは至る所に右写真の4相送電線が走っていた。
 
 これはドイツ鉄道(Deutshe Bahn、我が国のJRと同様の民間鉄道会社でドイツ全体に線路網を持つ会社)の専用送電線で、単相送電線(周波数:16.7Hz)である。

 ドイツの鉄道は、機関車が客車を牽引する方式で、その機関車の電動機は電圧15KV、周波数16.7Hzの仕様である。
 従って、電力会社の商用周波数50Hzの電気は周波数変換しないと使えないし、3相交流は不要なので、独自で発電所と電力供給系統を全国的に張り巡らせているようだ。
 それで、一般の送電線と殆ど平行したルートで単相2回線すなわち4相送電線が建設されている訳である。


 単相の2回線送電線については、垂直配列と水平配列の2通りの配列方法があるが、ドイツでは圧倒的に水平配列方式が多かった。

 見た限りの鉄道用送電線はほとんど110KV送電線であり、写真の送電線の電圧も、110KVと思われる。

フランスの特殊送電線

フランスの送電線の詳細は「海外の送電線」の項をご覧いただきたい。


 えぼし型鉄塔で、多回線・2段アームのめずらしい鉄塔で、全ての部材が、単材ではなく、トラス構造の、複合部材で構成され、いかにも強度が高いと思われる鉄塔である。

 セーヌ川横断の鉄塔で、旅行中に見た限りでは、最も高い鉄塔であった。

 正確ではないが、その高さは、100m以上はあるようだ。

 下アームに、220KVが2回線架線され、上アームには、90KVが1回線架線されている。
 将来は、更に2回線増架可能な設計となっている。

 本鉄塔は、フランスでも大型支持物として、一二を争う規模のものではないかと思われる。

 この鉄塔の前後は、背後に見えるように、水平配列えぼし型鉄塔が使用されていた。


オーストリアの特殊送電線

 オーストリアの送電線の詳細は「海外の送電線」の項をご覧いただきたい。


 変電所引き込み箇所で、3回線を水平配列で併架している珍しい鉄塔である。

 この変電所には、6〜7ルートの送電線が出入りしていて、大きな拠点変電所のようであった。

スウェーデンの特殊送電線

 スウェーデンの送電線の詳細は「海外の送電線」の項をご覧いただきたい。


 スウェーデンでは送電線用地確保が比較的容易であるためか、広い面積を要する支線付きの鉄柱を用いると共に、広い線下面積を必要とする水平配列送電線が多く見られた。
 もちろん、冬季の厳しい耐氷雪設計の観点からも、水平配列送電線を選定するのはは当然であろう。
 スウェーデンは、鉄柱を巧みに使いこなして経済的な設備を建設しているようで、
私の見た限りスウェーデンは鉄柱・送電線の国であった。

 殆どの送電線は、1回線水平配列の鉄柱線路であった。

 写真の左のものは220KV級2導体、右は220KV級単導体であろう。
 鉄柱の柱体は、工場での溶接加工の四角鉄柱で、2〜3本継ぎである。
 また、アームは、H鋼が横に渡してあるだけの、極めてシンプルなものである。

 


 部材一つ一つを現場で組み立てる、トラス構造の鉄柱も多くあった。

 220KV級の送電線であろう。

 アームはやはりH鋼であった。


 懸垂装置は、軽角度箇所は殆ど振れっぱなし懸垂がいし装置を使用した懸垂形で、2導体が斜め配置になっても構わず経済設計をとっている。




 独立した鉄柱に2相ずつ、架線された特殊な形状の支持物であった。

 上相は、跳ね上げ式と思われるアームに、傾斜V吊りで架線され、下相は振れっぱなし懸垂となっている。
 頂部およびアーム部に、ワイヤが弛みを持たせて架線されている。




 上の写真の独立3本鉄柱支持物と、同一送電線で、直線箇所の写真である。

 耐雷対策のためか、最外側線だけ、がいし個数が多い。

 我が国のように、狭隘なルート設計にせざるを得ない環境から見ると、全くうらやましい限りである。


ノルウェーの特殊送電線

 ノルウェーの送電線の詳細は「海外の送電線」の項をご覧いただきたい。


 ノルウェーはフィヨルドが多数存在し送電線は長径間でそれを横断せざるを得ない。
 右写真はフィヨルド横断の写真であるが、何処もフィヨルド横断の設備は、視認できた限り全てこのような設備形態であった。

 一般箇所はえぼし形1回線水平配列で、フィヨルド横断箇所は1相1基水平配置設備である。

 右写真は2回線送電線で、「3相+架空地線+3相」の配置になっている。



 右写真は、300KV級超高圧線であろう。
 スウェーデンと同様、鉄柱水平配列送電線が多かった。

 左・中相電線は、片側素導体のみにベートダンパと思われる電線が、取り付けられているのが珍しい。
 取り付けていない方の電線の微風振動対策は、どうなっているのだろうか。

 2面の鉄塔部材間の水平材が設けられた位置であるが、面材の斜材取付節点と関係ない位置に施設されているのが、少しばかり気になる。




 2回線水平配列の変形送電線である。
 俗称「すずらん装柱」に似た配列である。

 110KV級であろう。

 牧草地のなかを牧歌的に通過していた。


カナダの特殊送電線

 カナダの送電線の詳細は「海外の送電線」の項をご覧いただきたい。


 世界的には、700kV台の送電線には右写真のような支線付きV型・ガイタワー(Guy Tower)が専ら使用されており、めずらしいものではないが、我が国の垂直配列送電線からみるとめずらしい部類に属する。

 右写真は、1970年代半ばに運転開始したモントリオールを環状に取り巻くメトロポリタン・ループの、西側に向かう送電線として建設されたものである。
 カナダでは、1970年代半ば以降に建設された735KV送電線(メトロポリタン・ループ、ジェームス・ベイ線)には、自立型鉄塔ではなく、V型ガイタワーが、もっぱら使用されているようだ。

 鉄塔用地が広く確保できる場所では、V型ガイタワーを適用すると、設備建設費が自立鉄塔に比較し、最大40%ほど安くなるとの報告が発表されている。
 場所によっては、鉄塔材は鉄鋼材ではなく、アルミ材を使用している箇所もあるようだ。
 
 なお、「Guy」とは、支線という意味である。

 支線付きV型・ガイタワーは自立鉄塔に比べ、設備建設費が最大40%も大幅に低減されるので、至近年度に建設された735KV設備は、このV型・ガイタワーがもっぱら使用されている。

 標準的な構造寸法は、アーム高さが約34〜46m、アーム幅すなわち外側電線間の水平間隔は約26m(82フィート)である。

 支線は、線路方向に対して27度の角度で、対地に対して56度の角度で取り付けられており、従って、標準的高さの鉄塔の場合、支線四隅の間隔は、線路方向に約56m、線路と直角方向に約36mとなる。
 従って、その占める面積は、支線基礎の大きさを勘案し、2,400u程度になり、自立鉄塔の8倍ほどの面積になる。

 鉄塔用地をどのように取得・補償しているのか不明であるが、自立鉄塔に比較し、鉄塔用地の買収面積はかなり広く必要となろうと思われる。


 V型・ガイタワー線路の角度箇所には、1相1本のガイタワーが使用されている。
 この鉄塔には、合計12本の支線が設置されるので、懸垂箇所のV型・ガイタワーに比べ、更に広い鉄塔用地が必要となる。

 がいしは、耐張装置は320mm相当のグリーン色ガラスがいし28個連、ジャンパ吊りは254mm標準磁器がいし33個連である。



 何とも変わった形状の鉄塔である。

 ケベック州で撮ったものであり、電圧は、69KVであろう。がいしは標準がいしで8個連結されている。

 GWが張られているにも拘わらず、避雷針が設置されている。

 だいぶ昔の、旧い設備であろうと思われる。

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