標題1

架空送電線(がくうそうでんせん)とは何でしょうか
What kind of facilities is the Overhead power transmission line?


2015.05.04 更新電圧の上昇推移(注11)新設
(更新履歴:目次下に掲載)

100万ボルト西群馬幹線写真
<写真説明>
 我が国最高電圧の、100万ボルト設計「西群馬幹線」経過ルート

 場所は、長野県、南相木村。 

 遠くに雪を頂いている山は、八ヶ岳。


目 次

・架空送電線とは何でしょうか 
(What kind of facilities is the Overhead power transmission line?)
・送電線大容量化・高電圧化への挑戦 
(The engineer always challenged technology to raise the voltage to increase transmission capacity.)
・送電電圧の上昇推移 
(The change of the historic rise of the power transmission line voltage) 
  
・交流送電線一覧    (注11)735kV送電線解説・新設            (2015.05.04)
                  

  
直流送電線一覧               
        

・世界主要国の最高運転電圧一覧
(A table of the most high voltage of the power transmission line in various countries in the world)

  各国の解説
   ・中国
   ・インド
   ・
アジアにおける、インドネシア、タイなど500kV採用諸国
   ・
ヨーロッパ
   ・
ハンガリー、ブルガリア、ポーランドなど750kV電圧採用諸国
   ・
キルギス、ウズベキスタンなど、中央アジアの500KV電圧採用諸国
   ・ロシア、カザフスタンの世界最高電圧1150KV
    ・
アメリカ
    ・
ブラジル
    ・
コンゴ民主共和国
    ・南アフリカ          400kV送電線写真掲載        (2014.12.19)




  
更新履歴(2006.08.15以降)

更新年月日 更新内容
2007.06.03 「送電線大容量化・高電圧化への挑戦」追加
2007.06.07 送電電圧の上昇推移グラフ掲載
2007.06.23 送電電圧の上昇推移グラフ、海外送電線データ追記
2007.07.11 送電電圧の上昇推移、海外1969年765KV解説記事訂正
2007.07.15 送電電圧の上昇推移、海外1901年60KV解説記事掲載
2007.07.19 送電電圧の上昇推移、海外1898年40KV掲載
2007.07.21 送電電圧の上昇推移、訂正・掲載完了
2007.08.01 送電電圧の上昇推移、海外、旧ソ連500KV掲載
2007.08.30 送電電圧の上昇推移、海外、1923年、ドイツ220KV掲載
2007.10.20 世界主要国の最高運転電圧一覧
2007.11.01 世界主要国の最高運転電圧一覧、解説掲載
2007.11.11 送電電圧の上昇推移、八百津線訂正、鬼怒川線追加
2008.08.23 ロシア1150KV送電線の525KV運転情報追記
2009.02.01 中国UHV・1000KV運転開始情報追記
2009.09.01 各項目トップに英文掲載
2010.02.05 中国UHVDC+/-800kV送電線情報追加
2011.07.20 ニュージーランド最高運転電圧情報修正
2013.01.02 送電電圧の上昇推移に直流送電線追加掲載
2013.01.09 送電電圧の上昇推移に直流送電線追加情報を一部訂正
2014.09.20  送電電圧の上昇推移-交流送電線一覧のうち(注3)掲載 
2014.09.24  送電電圧の上昇推移-交流送電線一覧のうち(注4)解説補強 
2014.09.27 送電電圧の上昇推移-交流送電線一覧のうち(注5)新設 
2014.10.21  送電電圧の上昇推移-交流送電線一覧のうち(注7)新設 
2014.11.02   送電電圧の上昇推移-交流送電線一覧のうち(注1、8、9)新設 
2014.11.06  送電電圧の上昇推移-交流送電線一覧のうち(注6)ルート図、写真追記 
2014.12.19  南アフリカ400kV送電線写真掲載 
2015.03.09  送電電圧の上昇推移-交流送電線一覧のうち(注10)新設 
2015.05.04  送電電圧の上昇推移-交流送電線一覧のうち(注11)新設 

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・架空送電線とは何でしょうか (What kind of facilities is the Overhead power transmission line?)

The power transmission line is the electric track which links the power station to the Distribution substation.
And the Overhead power transmission line is the electric track (facilities to carry electricity) to by towers and electric wires; (is not underground cable).
 まず、発電所で発電した電気を、電線を用いて電気を使用する場所まで送る設備を総称して「電線路」という。

「電線路」


 「電線路」は、通常は発電所から出て、いくつかの変電所を経て、電気を使用する需要家まで地上又は地下に敷設され、電気の使用場所が一般家庭であれば最終的には宅内の屋内配線を経て各部屋のコンセントまで敷設されている。

 発電所で発電された電気は、すべて「電線路」を通って電気の使用場所まで送り届けられる。

 この電線路は、電力流通設備として瞬時も休むことなく稼働しており、我々の日常生活に欠かすことの出来ない重要なインフラストラクチャーの一つである。

「送電線」


 「送電線」とは、「電線路」のうち
・発電所と発電所の間を結ぶ電線路
・発電所と変電所の間を結ぶ電線路
・変電所と変電所の間を結ぶ電線路

をいい「電線路」のうち大電力を送る部分を指している。

 一方、変電所から電気を使用する各需要家までの「電線路」は、「配電線」という。

 したがって、
発電所で発電した電気は、いくつかの変電所を経由して「送電線」と「配電線」を通って各需要家まで送り届けられる。


 なお、大規模に電気を使う工場とか、大きなビル(デパートなど)にはその需要家内に変電所を設けて、配電線を介さずに直接送電線で電気を受け取る需要家もある。

 右図の赤線は、高い電圧ほど太く表現してあるが、太さが違っても赤線は全て送電線である。


「架空送電線」


 「送電線」をその設備形態で分けると、地上に鉄塔などの支持物を建ててそれに電線を張って電気を送る設備と、地下にケーブルを敷設し電気を送る設備の大きく2種類に分類できる。

 前者を
「架空送電線」、後者を「地中送電線」と呼んでいる。


 
このホームページでは前者の「架空送電線」についていろいろ解説をしていく。

 なお、「送電線」は、送る電気の種類(交流または直流)に応じて「交流送電線」と「直流送電線」に分けられる。

 日本では、ごく一部に直流送電線(津軽海峡横断および紀伊水道横断の送電線などで、その海上部分は海底ケーブル・地中送電線)があるが、大部分は交流送電線であるので、あえて「交流送電線」と呼称せず、単に「送電線」と言えば「架空送電線」でも「地中送電線」でも交流送電線を指していると思って間違いない。逆に、直流の電気を送電するものは「直流送電線」とはっきり呼称している。





・送電線大容量化・高電圧化への挑戦 (The engineer always challenged technology to raise the voltage to increase transmission capacity.)

The transmission capacity increases in proportion to square of the transmission voltage.
Therefore, the engineers wrestled with many efforts to raise the transmission voltage for transmission capacity increase measures desperately.
 本格的架空送電線は、1891年ドイツで誕生(「世界初の送電線誕生の物語」の項を参照)したが、それを出発点として今日(2014年)まで120年以上に亘り、送電線は我々の日常生活に欠かすことの出来ない重要なインフラストラクチャーの一つとして、社会・経済の発展と共に高度な進歩を遂げてきた。

 
送電線に関する120年以上の歴史を一言で表現すると、送電電圧の上昇すなわち大容量送電への挑戦であった。

 世界各地の大都市の発展、大規模工場地帯の発展は、大容量の電力を次から次へと呑み込んでいき、それに応えるため、電力・送電技術者は大容量化に挑戦し続けてきた。

 送電線の送電容量を増加させるためには、下記の計算式から分かるよう、電圧を上昇させることが必要であった。


 送電容量=[電線係数]×[負荷係数]×[送電損失率]×
(電圧の二乗)/(送電線こう長)
(専門技術者の方のみ、注参照)

 送電線が送電可能な電力は、使用する電線性状および供給する負荷条件が同一であれば、送電電圧の二乗に比例し、送電線の長さすなわちこう長に反比例する。

 送電容量を増加させるため、電線を太くする方策もあるが、電線の製造条件、建設工事施工条件、および保守・管理条件などから、電線の太さは通常、直径が3~4cm程度以下の太さの電線を使用せざるを得ず、無闇に太くできない。
 
 したがって、送電容量を増加させるには、送電電圧を上げることが最適な解決策であり、二乗に比例して増加するのでその効果は極めて大きい。

 しかし、送電電圧をあげるためには、下記の技術的難関が立ちはだかっていた。

(いきなり専門用語が出てきて恐縮だが、専門技術者以外の方は読み飛ばしていただきたい)

 ・絶縁性能の良い、高い強度のがいしの開発
 ・電線周りから発生するコロナ防止対策の確立
 ・高電圧送電線の開閉時に発生する特異な高電圧(開閉サージ電圧)対策
 ・高電圧・大電流を開閉可能な高性能遮断器の開発
 ・送電線周囲の他電線路への電気的影響防止対策の確立
 ・大型構造の支持物開発
 ・建設工事施工技術開発

などなど、列挙すべき課題はあげればきりがないが、電力・送電関係技術者は常にそれらの諸課題に挑戦し、克服し続けてきた。

 この結果、本格的送電線が初めて誕生した1891年(明治24年)には、送電電圧15KV(キロボルト、1万5千ボルト)、送電容量数百KW(キロワット)であったものが、今日では送電電圧1,150KV(115万ボルト)、送電容量900万KWを超える設備が稼働しているまでに発展した。さらに送電電圧は1,500KV(150万ボルト)のものが建設可能な状況になっている。

 本サイトの各項を、閲覧されるに当たり、このような発展の歴史的背景があることをご理解されると、更に分かりやすいであろう。

(注):実際の系統では、運転電圧の増大に伴い、変圧器のインピーダンスが増大することなどの影響で、厳密には電圧の二乗には比例せず、1.7乗程度に低減する。





 ・送電電圧の上昇推移  直流送電線を追加掲載(2013.01.09)
(The change of the historic rise of the power transmission line voltage)  

 我が国および海外における、送電電圧上昇の推移を掲げる。

 送電関係技術者が、送電線電圧の上昇に挑戦し、約120年に亘り幾多の困難を克服して、電圧上昇を達成した歴史を下記に示す。
記号の解説 KV:キロボルト=1,000ボルト、(例:500KV=500キロボルト=500,000ボルト=50万ボルト)




小目次

●交流送電線一覧表

●直流送電線一覧表


 

<交流送電線>

<海外(Foreign countries)                   <日本>

海外記号 国名
The name of the country
電圧(KV) 建設年 設備概要 日本記号 電圧(KV) 建設年 設備概要
A ドイツ
Germany
15 1891
ラウフェン-フランクフルト線

 世界初の本格的送電線。
(The world's first power transmission line)
 フランクフルト国際電気技術博覧会場(Frankfurt International Electric technology exhibition)へ、170Km離れたラウフェンの水力発電所から世界初の三相3線式交流送電が行われた。
 博覧会終了後、フランクフルト市への電力供給に用いられた。
 当HP「世界初の送電線誕生の物語」掲載

B アメリカ
The USA
40 1898
プロボ-マーカー線

 ユタ州(State of Utah)、テルユライド送電会社(Telluride Power Transmission Company)により、プロボ(Provo)の発電所~マーカー(Mercur)の鉱山会社間、約56Kmに木柱1回線送電線が建設された。

この建設は、同社とウエスティングハウスが共同で、「スコット実験」として有名な送変電設備の高電圧化に関する試験を、1895年からコロラド州テルユライドで行なったが、その結果を反映して、推進されたものである。

 
送電線建設ルートは、ロッキー山脈の山中で標高が高く、起点のプロボが1,370m、終点のマーカーが約2,000mで、そのルート最高地点が海抜約3,000mにも達するため、耐高標高、耐氷雪、耐雷設計に苦心し、がいしは特殊ガラスがいしを使用したのが特徴である。

(注1)参照

A 11 1899(明治32年)
沼上線

 郡山絹糸紡績により、沼上発電所~郡山間24Kmに建設された。
(当HP「歴史に残る送電線」に掲載)

黒瀬川広島線
 広島水力電気により、黒瀬川発電所~広島間26Kmに:建設された。
(当HP「歴史に残る送電線」に掲載)

C アメリカ
The USA
60 1901
ノースフォーク-オークランド線

 カリフォルニア州(State of California)、ベイ・カウンティ電力会社(Bay Counties Power Company)により、ユーバ川のノースフォーク(North fork )水力発電所~オークランド(Oakland)間、225Kmに木柱2ルートの2回線送電線が建設された。(当時、世界最長距離送電線)

 特筆すべきは、使用電線が1ルートは硬銅線、もう1ルートは硬アルミ線が使用されたこと、更にサンフランシスコ湾の一角を鋼より線と特殊鉄塔で、1,350mの長径間横断(1回線)をさせたことである。
当HP「送電線の分類・規模」→「世界記録・日本記録」→「注1」参照)

D アメリカ
The USA
72 1906
ロジャーダム-グランドラピッズ

 ミシガン州(State of Michigan)、マスキーゴン(Muskegon)川水系のロジャーダム(Roger's Dam)~グランドラピッズ(Grand Rapids)および途中から分岐してマスキーゴン(Muskegon)間、148Kmに、グランドラピッズ・マスキーゴン電力会社(Grand Rapids-Muskegon Power Company)により建設された。
 支持物は木柱、がいしは、笠計356mm、4重ピン磁器がいしが使用された。
(注3)参照

B 55 1907(明治40年)
駒橋線

 東京電灯により、駒橋発電所~早稲田間76Kmに建設された。
(当HP「歴史に残る送電線」に掲載)

E アメリカ
The USA
110 1908
クロトンダム-グランドラピッズ線

 ミシガン州(State of Michigan)、マスキーゴン(Muskegon)川の、クロトン水力発電所(Croton Power Plant)~グランドラピッズ(Grand Rapids)変電所間、56Kmに1回線三角配列・三角鉄塔線路が、グランドラピッズ・マスキーゴン電力会社(Grand Rapids-Muskegon Power Company)により建設された。

 特筆すべきは、前年の1907年、E.M. Hewlettにより開発された、ピンがいしに代わる、懸垂がいし(ヒューレット型がいし)を5個連結し、使用したことで、従来ピンがいしの限界だった7万ボルトが一気に取り払われ、高電圧化への未来が開けたことである。
(注4)参照

F アメリカ
The USA
135 1911
クック滝-フリント線

 ミシガン州(State of Michigan)、オーセーブル(AU Sable)川のクック滝水力発電所(Cook Falls Development)~フリント(Flint)間、約200Kmに三角鉄塔・1回線が、グランドラピッズ・マスキーゴン電力会社(Grand Rapids-Muskegon Power Company)により建設された。
 上記、110KV線路と同様、がいしはヒューレット型懸垂がいしを8個連結で使用した。
(注5)参照

C
60




66






1912(明治45年)
(大正元年)

八百津線
 名古屋電灯により、木曽川水系の八百津発電所~荻野変電所間42Kmに建設された60KV送電線で、運転開始は、明治45年(1912)1月である。
(当HP「歴史に残る送電線」に掲載)

鬼怒川線
 鬼怒川線は、鬼怒川水力電気が鬼怒川温泉に建設した下滝発電所の電力を、東京市電に供給するため尾久変電所まで、124Kmの間に建設された66KV送電線で、大正元年(1912)12月に運転開始した。
(当HP「歴史に残る送電線」に掲載)

G アメリカ
The USA
150 1913
ビッグクリーク-ロサンゼルス線

 カリフォルニア州(State of California)、シエラネバダ山脈(The Sierra Nevada)のビッグクリーク( Big creek )から386Km南方のロサンゼルス(Los Angeles)へ水力電力を送電するため建設された。
 当時、世界最長の送電線。

 なお、使用がいしは、上記ヒューレット型懸垂がいしを更に進化させた、現在の標準型がいしに近い、オハイオブラス会社製の懸垂がいし(ボールソケット型)を使用した。(設計、工事および保守管理が格段に便利になった)
当HP「世界初の送電線誕生の物語」掲載

D 77 1913(大正02年) 谷村線
 桂川電力りより、鹿留発電所~目白変電所間85Kmおよび途中から分岐して六郷変電所間95Kmに建設された。
(当HP「歴史に残る送電線」に掲載)
E 115 1914(大正03年)
猪苗代旧幹線

 猪苗代水力電気により、猪苗代第一発電所~田端変電所間225Kmに建設された。
(当HP「歴史に残る送電線」に掲載)

H アメリカ
The USA

ドイツ

Germany
220 1923
(アメリカ)

ビッグクリーク-ロサンゼルス線

 上記150KV送電線を、増容量計画に基づき設備改造して220KVに昇圧した。
 当HP「世界初の送電線誕生の物語」掲載

(ドイツ)
南北線(ブルーデンツ-ブラウヴァイラー線)

 アメリカとほぼ同時期に、ドイツでも220KV送電線が建設された。
 それは、Rhine-Westphalia Power Corporation (R.W.E)により、オーストリアの西端に近いブルーデンツ(Bludenz)からケルン市の西方ブラウヴァイラー(Brauweiler)の間、こう長960Kmの2回線送電線である。
 この線路は、中性点非接地設計を採った。
 このため、中性点接地系では各相の絶縁(がいし)設計は、(220KV/√3)=127KVであるが、本送電線ではフルに220KVにする必要があり、(中性点直接接地方式に変更すれば、線間電圧は、220*√3=380KVまで昇圧可能な設備となり)当時、世界で最も高い設計電圧の送電線と言われた。
(注6)参照

F 154 1923(大正12年) 甲信幹線(当時:京浜線)
 京浜電力により、竜島発電所~戸塚変電所間202Kmに建設された。
(当HP「歴史に残る送電線」に掲載)
I アメリカ
The USA
287 1936
ボルダーダム-ロサンゼルス線


 ロサンゼルス電力局(Department of Water and Power Los Angeles)(送電線建設当時の名称は、Los angeles Bureau of Power and Light)により、,ネバダ州とアリゾナ州境に建設された、フーバーダム(Hoover Dam、ダム建設当時の名称は、Boulder Dam)のボルダーダム発電所~ロサンゼルス間428Kmに2回線送電線が建設された。

 その特徴は、中空銅線(インターロッキング10セグメント、直径35.6mm、260m㎡)を使用したこと、およびえぼし型鉄塔のウエストから下部が、線路方向と45度捻った構造になっていることである。
(注7)参照

J アメリカ
The USA
300 1950
グランドクーリー-コロンビア線


 ワシントン州(State of Washington)、グランド クーリー(Grand Coulee)水力発電所~コロンビア(Columbia)変電所間、123Kmに、ボンネビル電力局(Bonneville Power Administration Portland Oregon)により1回線が建設された。
 支持物は、えぼし型(ウエストから下部が、線路方向と45度捻った構造)が使用された。
(注8)参照

K アメリカ
The USA
330 1951
スプーン-カナワ線

 ウエストバージニア州(State of West Virginia)、オハイオ川左岸のフィリップ スプーン石炭火力発電所(Philip Sporn Power Plant)~カナワ川(Kanawha River)沿いのグラスゴー(Glasgow)間、101Kmに、アメリカン ガス&電力会社により建設された。
 支持物は、2回線垂直配列型が使用された。
(注9)参照

L スウェーデン
Sweden
400 1952
ハースプランイェト-ハルスベリ線

 スウェーデンは南北に長い国で、電源の大半を占める水力発電所は北部に集中し、一方需要は中南部に集中している。

 そこで長距離大容量送電が必要となり、北部のハースプランイェト(Harspranget)水力発電所(945,000KW、ヨーロッパ最大)から南部のハルスベリ(Hallsberg)(首都ストックホルムの西方)間に、こう長1000Kmの送電線が建設された。

 電線には、世界初の2導体が使用された。
(注2)参照


G 275 1952(昭和27年) 新北陸幹線
 日本発送電が黒部渓谷の水力電気を大阪方面に送電するため建設開始したもので、1941年(昭和16年)黒部側から建設が始まり、1951年(昭和26年)それを関西電力が引き継いで、第一段階として枚方変電所~成出変電所間230Kmを部分的に275KVで運転開始させた。
(当HP「歴史に残る送電線」に掲載)
M 旧ソ連
The former Soviet Union
500 1959
ボルガ-モスクワ線

 1955~1958年、ボルガ川(The Volga)に2つの大容量水力発電所が、相次いで建設された。
 すなわち、ボルガ川のカスピ海河口から約450Km上流のボルゴグラード(Volgograd)に1箇所(ボルガ発電所、約250万KW、1958年当初設備完成)、さらにそこから約700Km上流のクイブイシェフ地点に1箇所(ジュグレフスク発電所、約230万KW、1955年当初設備完成)である。

 この2カ所の発電所の大電力を、それぞれ約1,000Km離れたモスクワに送電するため、それぞれに500KV設計送電線が建設された。
 上流側の送電線が1956年に400KVで運転開始し、下流側の送電線も1958年に400KV運転を開始した。

 ボルガ発電所~モスクワ間の送電線は、1回線水平配列、電線は逆三角形の3導体で、がいしは一連23個連結である。

 このうち、後から運転開始した下流側の、送電線(ボルガ発電所~モスクワ間、1,050Km、2回線)がまず1959年に500KV昇圧し、続いて上流側も、関連系統を含め約1,800Km以上が1961~1962年に500KVに昇圧した。

 Google earthを用いると、ボルガ発電所から出てすぐの場所における写真が見られるので試していただきたい。
 下記の赤い文字列をコピーして、Google earthの検索窓に貼り付けると自動的にその地点に画面が移動するので、そこで Street Viewを立ち上げると送電線写真が見られる。

48 51 36.85 N 44 37 05.47 E

N カナダ
Canada
735 1965
マニクアガン-モントリオール線

 ケベック(Quebec)州のマニクアガン・ウタルド(Manicouagan Outardes)水系(セントローレンス川の、河口付近左岸に流れ出る水系)の大容量水力発電所から、ケベック市を経由しモントリオール市の間に、1965年に約600Km,1回線が建設された。

(注10)参照

O アメリカ
The USA
765 1969
ベーカー-マークゥイーズ線

 アメリカン電力(AEP)は、ケンタッキー州(State of Kentucky)に建設した、当時最大規模のビッグ・サンデイ(Big Sandy)石炭火力(80万KW)の電力を送電するため、765KV送電線を、約2,000Kmにわたり建設する大プロジェクトに着手したが、ビッグ・サンデイ(Big Sandy)石炭火力発電所に隣接するベーカー(Baker)変電所~オハイオ州マークゥイーズ(Marquis)変電所(Sargentsの近く)間、112Kmが、その第一ステップとして建設され、1969年5月に運転開始された。

 現在もアメリカでは765KVが最高電圧で、運転中の大半は中東地域内のAEP系統のものである。

(注11)参照

H 500 1973(昭和48年)
房総線

 東京電力により首都圏を取り巻く外輪系統として東東京変電所~房総変電所間63Kmに1966年(昭和41年)建設され、1973年(昭和48年)500KVに昇圧された。
(当HP「歴史に残る送電線」に掲載)

P 旧ソ連
The former Soviet Union
1150 1988
エキバストゥズ-コクシュタウ線

 現在はカザフスタン(Kazakhstan)の、カラガンダ地方の大容量石炭火力の出力をウラル方面に送電するため、第一段階としてエキバストゥズ(Ekibastuz)~コクシュタウ(Kokucetau)間、こう長432Kmに建設された。

 翌年以降、上記区間内ならびにエキバストゥズの東北東バルナウル方面およびコスタナイの北西チェリャビンスク方面にもルートを延ばして約1,000Kmを建設している。

 しかし、1991年に旧ソ連が崩壊し、経済危機による電力需要の停滞に遭遇するとともにルートの中央部がカザフスタンに分離されたこと等の理由で、1991年以降、電圧を525KVに降圧させて運転している。

 当HP「世界記録、日本記録」に掲載

I 1000 1992(平成04年)
西群馬幹線

 東京電力により、西群馬開閉所~東山梨変電所間138Kmに建設された。
 1000KV(100万ボルト)設計であるが、現在(2014年現在)500KVで運転されている。
(当HP「歴史に残る送電線」に掲載)

(注)「建設年」は、送電線が建設され、運転開始した「西暦年」を示す
 書籍によっては、送電線が工事竣工した年を掲げているものもあるが、歴史記録としては、正規の電圧を荷電して運用開始した年を掲載するのが妥当であろう。(除く、西群馬幹線)


注1プロボ-マーカー線

 ユタ州(State of Utah)、テルユライド送電会社(Telluride Power Transmission Company)により、プロボ(Provo)の発電所(蒸気機関を使用した石炭火力発電所と思われる)~マーカー(Mercur)の鉱山会社間、約56Kmに木柱1回線送電線が建設された。

 この建設は、同社とウエスティングハウスが共同で、「スコット実験」として有名な送変電設備の高電圧化に関する試験を、1895年から
コロラド州テルユライドで行なったが、その結果を反映して、推進されたものである。

 送電線建設ルートは、ロッキー山脈の山中で標高が高く、起点のプロボが1,370m、終点のマーカーが約2,000mで、そのルート最高地点が海抜約3,000mにも達するため、耐高標高、耐氷雪、耐雷設計に苦心し、がいしは写真のような特殊ガラスがいしを使用したのが特徴である。
 特に峠越えの約5kmの区間は、悪天候の日が多く、かつ傾斜もきつく厳しい工事施工を強いられたそうだ。

 本送電線は、1898年2月に営業運転に入ったが、冬期の氷雪条件が厳しい山岳地帯で、また、夏期の雷雨の過酷な条件の中で果たして順調な運転ができるのか、危ぶまれたが、銃の標的となり被害に遭ったがいしを除いては殆ど事故を発生しなかった。
 これは、「スコット実験」の結果を踏まえた設計に従って建設した大きな成果であり、テルユライド送電会社は高標高山岳地に強い会社として一躍有名になった。

 さて、Street View写真は無いが航空写真上で起終点の位置付近を確認するには下記の文字列をコピーしてGoogle earthの検索窓に貼り付けると自動的にその地点に画面が移動するので試していただきたい。
 プロボにおける現在の火力発電所:「
40 19 51.75 N 111 45 18.89 W
 鉱山会社のあるマーカー地点付近:「
40 19 16.03 N 112 12 45.25 W

 マーカー(Mercur)の鉱山について、簡単に言及するとその鉱山で産出されたのは金及び銀などで、1870年頃に開発が始まり何回かの栄枯盛衰があり、1902年には最盛期で5,000人ほどが働いていたとのことだが1930年頃には閉鎖され現在はゴーストタウンになってしまったとのことである。


 本送電線の設計の概要は、次の通りである。
支持物:高さ12.2mの木柱で、電線配置は木柱頂点に1相、長さ2.1mの木製アームの左右両端に1相ずつの3相1回線装柱で、電線間隔は1.63mの正三角形配置である。木柱は、27基/km、平均径間長は37mである。

電線:米国ワイヤゲージ規格(AWG)のNo5銅線で、直径4.62mm、16.8m

がいし:上記写真の形状の3重ひだのガラスがいし、直径178mm、ピンはニセアカシヤ製でパラフィン加工したものを使用、
耐張引留装置が必要な箇所については、線路方向にアームを突きだし、ピンがいしを10個ほど直列に並べてワイヤで連結・捕縛して、その先端にOBクランプを用いて引き留めたそうである。
下記のIEEEホームページのなかの第20番目の写真に類似の装置が写っている。
http://magazine.ieee-pes.org/januaryfebruary-2014/history-11/

 なお、送電電力は約500kW、送電電流は約7.4Aであり、性能の良い遮断器はまだ無かったので、短絡事故時対応は直径0.25mmの銅線ヒューズを使用した。


注2:スウェーデンの送電電圧および複導体送電線の解説

 スウェーデンで世界初の400kV級EHV送電線を建設した時には、その電圧を380KVと公表していたが、その後スウェーデンでは、基幹系統を400KV系統と称しており、運用最高電圧を400KVと表記している。したがって、当サイトでは400KVと表記する。

 この世界初の複導体送電線の詳細についてはここをクリックして見ていただきたい。


注3ロジャーズダム-グランドラピッズ&マスキーゴン線


 本送電線は、ミシガン州(State of Michigan)にあって、アメリカの5大湖のうちミシガン湖とヒューロン湖に挟まれたロアー半島の山地を水源とするマスキーゴン(Muskegon)川水系のロジャーズダム(Roger's Dam)に建設した水力発電所(発電容量4,400kW)から南方にある地方都市のグランドラピッズ(Grand Rapids)および途中から分岐してマスキーゴン(Muskegon)間、総こう長148Kmに、グランドラピッズ・マスキーゴン電力会社(Grand Rapids-Muskegon Power Company)により建設された。

 その送電線ルートは右図に示す通りである。

 本送電線は、1906年4月1日に電圧66kVで運開し、約3ヶ月後の7月に72kVまで昇圧して営業運転した。

 発電機が30Hz仕様の発電機であったので、30Hzで運用し、大口需要家には降圧トランスで6,600Vに変換し、更に電動発電機又はロータリーコンバータで2,300V,60Hzに変換して供給した。
 一般家庭には更に降圧して最終的には440Vで供給した。

 本送電線の送電損失は、発電機出力端子から需要家の積算電力計までの間で23.5%となった。

 しかし、それでも当時の蒸気機関による自家用発電機を使用した電力使用形態に比較して安価な電力受電が出来ることから、グランドラピッズおよびマスキーゴンの諸企業はグランドラピッズ・マスキーゴン電力会社から電力を購入する契約を選択したほか、両都市に安価な電力を求めて転入する大企業が現れたとのことである。
 もちろん、地図の南に示した「Grand Rapids-Grand Haven & Muskegon鉄道会社」および「Grand Rapids-Holland & Chicago鉄道会社」にも供給することとなった。



 送電線の構造は、支持物は木柱、がいしはピンがいしが使用され、電線は米国ワイヤゲージ規格(AWG)No2銅線(直径6.54mm,断面積33.6m㎡)、架空地線はNo6亜鉛メッキ鉄線が使用された。

 木柱は、13.7m~18.3m長さのミシガン及びアイダホ杉材で、径間長は40m、とした。

 右図は、地盤軟弱な湿地帯を経過する場所の写真である。
 基礎補強の目的で、木材を井桁状に組んでいる。

 送電線用地(Right Of Way)は10~20m幅で取得した。


 アームは、2段アームで、下アーム長さは2.44m、上アーム長さは1.53m、アーム間隔は1.53m、電線間隔は1.8m、上アームの右側には架空地線を配置し、5基ごとに銅線コイルを地下に埋設して耐雷対策とした。


 ピンがいしは、笠計356mm、高さ457mm、4重ピン磁器がいしで、ピンの大きさは全長46cm、直径5cmのものを使用した。
 ピンは、直線箇所では木製のもの、角度箇所では亜鉛メッキ鋼管材を使用した。
 しかし、漆喰または石膏工場のそばを経過している所とか、鉄道横断箇所などでがいしひだにダストが付着して湿度が多い悪天候時などに遮断機が動作しない程度の微弱な漏洩電流が流れて、木製ピンが徐々に黒焦げになる現象があった。
 
 そこで後にピンを全て亜鉛メッキ鋼管に取り替えた。

 ところで、当時の多くの電力技術者達は、70kV送電線ではピンがいしが大きくなり質量約30kgの重さになって、ピンがいしを使用する設計では、それ以上大きながいしの製造および取り扱いが困難になってきたので、送電線の電圧は70~80kVが限界であろうとの考えを持っていた。


注4:ヒューレット型がいしとクロトンダム-グランドラピッズ線 

 従来、送電線の絶縁を担うがいしは、もっぱらピンがいしが使用されてきたが、世界的に大電力送電の要望により送電線電圧は次第に高くなり、1906年には70kVを超える設備が出現した。

 そして、それに対応するピンがいしは直径、高さともに400mmほどの大きさになり、質量も30kg弱になって取り扱いが困難になってきた。

 また、電線をがいしに載せるだけの機能しかなく、太く強い電線張力を引き留める機能がないため、新しいがいしの出現を求める要望が日増しに強くなってきた。

 

 そのような時代の要求を満足させるがいしが、1907年、E.M. Hewlett氏により開発された。

 
この新しいがいしは、1907年6月26日にナイヤガラで開催されたアメリカ電力技術学会(American Institute of Electrical Engineers)で発表され、「ヒューレット型懸垂がいし」と命名された。

 
右図がそのがいしで、モノクロ写真が開発当初のもので、がいしを連結する金具は鋼ワイヤを使用した。
 
ん中の写真は内部構造を示すもので電線を引き留めるための耐張装置として水平に使用される箇所用に開発されたものを示している。

 右端のカラー写真は、その後改良され、ボールソケット金具になったものである。

このピンがいしに代わる、新しい懸垂がいしの最大の特徴は、引張荷重を加えるとがいし磁器には圧縮荷重として加わる機構になっていることである。
 
がいし磁器は引張荷重に比べ圧縮荷重にはその約10倍の力に耐えるので、この性質を見事に利用した誠に素晴らしい開発製品である。

 このことにより、電線張力荷重に対応できる使用方法が可能になったことで、強い電線張力をがいしを介して支持物に引き留めることが出来るようになったことが最大の特徴である。


 
更に、上記特徴と引きも取らない画期的特徴は、
直列に何個でも増結することが可能で、容易に高電圧に対応可能
・単体が極めて小さく軽い形状で取り扱いが容易である
説明が重複するが、耐張状に使用し電線張力の支持物への引き留めが可能
となり、従来のピンがいしの限界だった7万ボルトが一気に取り払われ、かつ電線の高張力に耐えるため、大容量・高電圧化への未来が開けたことが、画期的、特筆すべき事柄である。


 右写真は、配電線の支線に絶縁がいしとして使用されている「玉がいし」を撮ったものだが、ヒューレット型懸垂がいしの設計思想を、笠(ペチコート)が無いだけで、そのまま現代において活用している例である。


 右写真は、上と同じ、配電線の支線に絶縁がいしとして使用されている「玉がいし」を撮ったものである。


 なお、その後開発され現在使用している懸垂がいしも、キャップとその内部に配置されたピン構造を工夫し、右図赤色に示した引張荷重を加えると、磁器には緑に示した圧縮荷重が生ずる構造になっている。


 マスキーゴン川水系のロジャーズダムに建設した水力発電所(発電容量4,400kW)から南方にある地方都市のグランドラピッズおよび途中から分岐してマスキーゴンに1906年に送電開始した72kV木柱送電線の計画当時、本送電線・クロトンダム-グランドラピッズ線は、同じ電圧の送電線として計画されていた。

 しかし、グランドラピッズマスキーゴン電力会社は、同河川の将来開発を勘案して送電容量を多く確保できるより高い電圧の送電線を建設することとし、目標を100kVに設定して調査設計を推進した。

 この時、支持物は鉄塔にする設計にしたものの、最も問題になったのは使用がいしをどのようなタイプとするかであった。


 ピンがいしは、その大きさと質量の増大などから70kVが限界で、当時開発中のがいしを含め他のタイプのがいしを模索していた。

 そこで白羽の矢を立てたのが
ヒューレット型懸垂がいしであった。

 E.M. Hewlett氏が開発成果を発表する前から採用する方針を固め、懸垂がいしに適合する鉄塔を設計して1907年の後半には建設を開始した。

 その送電線ルートは、右図グリーン色の通りで、その地域に発生する雷を伴う暴風雨で木柱線路と鉄塔線路の2重供給設備が同時に被害を受けないようにルートは7~9km離して建設し、そのこう長は56kmであった。

 クロトンダムと発電設備(発電容量12,000kW)は1907年9月7日に竣工式を行い完成を祝ったが、そのとき送電線はまだ建設中であった。


 



 送電線の鉄塔は3角鉄塔で、右写真に示す形状であり、左側が懸垂鉄塔で右側が角度箇所の耐張がいし装置の鉄塔で、世界初の懸垂がいしを使用した送電線である。

 鉄塔高さは、12.2~18.3m(40~60ft)で、径間長は平均153m(500ft)である。

 がいしは、笠径10インチ(254mm)で定格電圧は25kV、湿潤時耐圧は65kVであった。

 そのがいしを5個連結で使用した。

 電線は、麻芯入り銅撚り線で、(AWG規格)No2銅線と同じ導電率のものが使用された。

 本送電線は世界初の100kV送電線であったので、グランドラピッズマスキーゴン電力会社はジェネラル・エレクトリック(General Electric)株式会社で天才的技術者と呼ばれたチャールズ・スタインメッツ博士(Dr. Charles Steinmetz)を現地に呼んで、設備の安全性、安定した運用などの諸テストを依頼したうえで1908年に運用を開始した。

 本送電線については、1年弱の100kV運用実績を積んだ上で、1909年のはじめに110kVに昇圧して運転した。

 

注5:クック滝-フリント線


   ミシガン州(State of Michigan)、オーセーブル(AU Sable)川のクック滝水力発電所(Cook Falls Development)~フリント(Flint)間、約200Kmに135kV三角鉄塔使用の1回線送電線(クック滝-フリント線)が、グランドラピッズ・マスキーゴン電力会社(Grand Rapids-Muskegon Power Company)により建設された。

 本送電線の概略ルートは右図の通りで、オーセーブル川に開発した水力発電所(9,000kW、60Hz)から南下してサギノー(Saginaw)変電所を経由しフリント(Flint)変電所に至るこう長約200kmの送電線である。

 グランドラピッズ・マスキーゴン電力会社では、ロアー半島の北部グレーリング(Grayling)近くの高地から東に向かってヒューロン湖に流れ出るオーセーブル川に4~5カ所の水力開発を計画していたが、本送電線の電源となるクック滝にダムを建設する水力発電所はその最初のものであった。


 

 本送電線の支持物は、三角鉄塔で根開きは3.7mを底辺とし斜辺を5.2mとする二等辺三角形で、電線配置は同電力が1908年に建設した110kVクロトンダム-グランドラピッズ線と同じ配置の三角配列である。

 最低電線地上高は12.2mで、がいしはヒューレット型懸垂がいしを8個連結で使用した。

 そのがいし連長は1.32mで、1個あたり約165mmのがいし高さとなるもので、1個あたり定格耐電圧は75kV、短時間耐圧は100kVのものを使用した。

 最も研究されたのは、コロナ放電とその損失に関する件で、110kVクロトンダム-グランドラピッズ線と同じか、それ以下にすることで、電線はAWG規格のNo0銅線(直径8.25mm、断面積53.5m㎡)を使用した。
 本送電線では、コロナ損失は1マイル(1.6km)当たり1kW以下となるように設計した。

 当初の送電電力は皮相電力で10,000~12,000KVA(電線の許容電流容量約280Aのところ、42.8~51.3A)と見込んだ。

 本送電線は現在でも電源に近い箇所では建設当時の設備で運用されているようで、Google earthで見ると解像度は悪いが見ることが出来る。

お手数だが、下記の赤い文字列をコピーして、Google earthの検索窓に貼り付けると自動的にその地点に画面が移動するので、そこで Street Viewを立ち上げると写真が見られる。

44 16 38.51 N 83 31 19.96 W

 ただし、上記当該箇所は、2014年9月現在で見られるStreet view画像は、2009年7月に撮影されたものでまだ三角鉄塔が写っているが、Google earth本体の航空写真は2013年6月に撮影したもので、既にコンクリート柱もしくは鋼管柱に建て替えられた単柱支持物画像になっている。
 電力会社では、計画的に建替工事を進めているようだ。
 いずれ、近いうちにStreet view
画像も更新されると建替後の単柱支持物の写真になり、100年を超えて活躍してきた貴重な三角鉄塔写真は見ることが出来なくなるものと思われる。

 なお、Street Viewは無いが航空写真上で発電所の位置だけ確認するには下記の文字列をコピーしてGoogle earthの検索窓に貼り付けると自動的に発電所地点に画面が移動するので試していただきたい。
44 28 20.56 N 83 34 15.99 W



注6:ドイツ初の220KV送電線は、実は、なんと380KV設計であった   


 ドイツで初めて建設された220KV超高圧送電線は、アメリカ、カリフォルニア州で建設された2つの220KV送電線と同じ1922年に建設が開始され、運転開始は区間によって異なり、1924~1929年である。

 それはオーストリアとドイツをまたぐ、世界初の国際連系線であり、Rhine-Westphalia Power Corporation (R.W.E)により建設され、ドイツでは「南北送電線(North-South Powerline)」と言われ有名である。


 本送電線は、オーストリアの西端に近いVorarlberg水力発電所、および黒い森南部の発電所の電力をルール地方に送電するため建設された。

 起点は、オーストリアの西端に近いブルーデンツ(Bludenz)で、途中、Herbertingenにて黒い森南部のTingenからの第二ルートと接続し、Mannheim、Koblenzなどを経由し、ケルン市の西方ブラウヴァイラー(Brauweiler)を終点とする、こう長960Kmの2回線送電線である。


 本送電線の起終点および途中の各変電所は、約90年前の設備が拡充等の変更はあるにせよそのまま位置を変えずに存続しているのかどうかは定かではないが、一応Google Earthで確認してみた。

 その結果、全ての地点で大規模変電所が確認できた。

 ただ、フランクフルト市の近傍では「フランクフルト国際空港」がルート上に建設されて、大幅にルート変更がなされ、ルートは一部地中線化されているようだし、空港の南側に大規模変電所が建設されていて、昔の系統とは違った系統運用がなされていると思われる。

 
なお、Street View写真は無いが、航空写真上で起終点の変電所の位置だけ確認するには下記の文字列をコピーしてGoogle earthの検索窓に貼り付けると自動的に発電所地点に画面が移動するので試していただきたい。
起点、Bluednz変電所:「47 08 33.79 N 9 48 39.46 E
分岐線起点、GurtWeil変電所:「47 38 26.29 N 8 15 05.52 E
終点、Brauweiler変電所:「50 58 02.59 N 6 48 25.06 E

 ところで基本設計に当たり、弱電線を管理する郵政と鉄道当局から、送電線事故時の弱電線に対する電磁誘導障害の防止のため、中性点接地を反対されたため中性点非接地設計を採用せざるを得なかった。

 このため、中性点接地系では各相の絶縁(がいし)設計は、(220KV/√3)=127KVであるが、本送電線では220KVのフル電圧に対応にする必要があり、当時、世界で最も高い設計電圧の送電線と言われた。


 すなわち、R.W.Eは、各がいし装置を220KV対応としたため、中性点直接接地方式に変更すれば、線間電圧は、220*√3 =380KVまで昇圧可能な設備を建設したことになる。

 したがって、R.W.Eは、初めての220KV超高圧送電線建設に当たり、将来、郵政と鉄道当局から許可が下り次第、すぐに送電線を次段階の電圧である380KV化できるように設計を進めた。


 鉄塔については、殆どの区間で一般的なドナウ型の2回線設計鉄塔を建設しているが、フランクフルトの南側の区間、Rhainau変電所~Kelsterbach変電所間については右写真のような特殊な構造の鉄塔を建設している。

 この写真は2006年9月にドイツ旅行をした際にアウトバーンを走行しているバスの中から撮影したものである。


  電線設計は、前述のように380KV化できる設計とするためコロナ防止の観点から太い直径の42mm銅線とし、経済的建設をするため、中空銅線として完全中空方式H型すなわちインターロッキング方式と、I ビーム使用のアナコンダ方式などを併用した。


 右図左がHeddernheim氏が開発したH型インターロッキング方式の電線であり、右がアナコンダ方式の電線である。

 我が国では、1923年(大正12年)当時、やっと154KV甲信幹線が完成し、超高圧などまだ夢の時代に、ドイツ技術者たちの、高度な技術力は380KV技術を消化したわけで、ただただ敬服するばかりである。

 なお、現在では、我が国の送電技術は、既に100万Vを完成させ、遂に世界に追いつき追い越し、世界のトップレベルにあると自負している。

 結局、380KV昇圧が達成されたのは、1929年の大恐慌、第二次世界大戦などの影響と思われるが、40年後の1964年であったそうである。

 ヨーロッパで220KVの次段階の電圧がその2倍の440KVにならず、何故、380KV~400KVに止まったのか不思議であったが、上記の「南北送電線」の話を知って合点がいった。

 ヨーロッパでは、電圧階級は、大まかには、110KV~220KV~380KVまたは400KV、となっている。

 一方、アメリカでは、電圧階級は地域により、大きく二つの系列に分かれており、69KV~230KV~500KV、または138KV~345KV~765KV、が基本として採用されているようだ。




注7:ボルダーダム-ロサンゼルス線

 リンクページに示すのでここをクリックしてください。


注8:グランドクーリー-コロンビア線

ルート概要ワシントン州(State of Washington)、グランドクーリー(Grand Coulee)水力発電所~コロンビア(Columbia)変電所間123Kmに、ボンネビル電力局(Bonneville Power Administration Portland Oregon)により300kV 1回線送電線が1950年に建設された。

 起点のグランドクーリー水力発電所は、コロンビア川に建設された大規模なコンクリートダムで、1933年に工事着工し1941年に初期のダムが完成した。

 その後、グランドクーリーダムに3番目となる発電所を建設する増設工事が1966年から1974年にかけて行われ、現在では発電所数 4、水車発電機台数 33、落差 116 メートル、最大総出力 6,809,000 kW、年間発電電力量 210億kWhとなり、コンクリート構造物としてはアメリカ合衆国最大、世界でも3番目に大きい水力発電所となった。
 この発電所からは、500kV線路が6回線、230~300kV線路が10回線以上引き出されている。

 送電線の終点は、コロンビア川下流、グランドクーリーダムから100km以上下流のRock Islandの南、同河川の左岸に建設された変電所である。

 下記の赤い文字列をコピーして、Google earthの検索窓に貼り付けると自動的にその地点に画面が移動するので、そこで Street Viewを立ち上げると写真が見られる。
 グランドクーリーダム地点:「
47 57 23.67 N 118 59 31.03 W
 コロンビア変電所手前の地点:「
47 17 47.89 N 120 03 59.34 W」 西に向いて写真を見て、左端(最も北側)の鉄塔が本送電線である。

 Street View写真はないが、下記地点の確認をするには、下記の赤い文字列をコピーして、Google earthの検索窓に貼り付けると自動的にその地点に画面が移動するので、試していただきたい。
 グランドクーリーダム引き出し変電所:「
47 57 18.23 N 118 59 53.87 W
 コロンビア変電所:「
47 17 37.53 N 120 04 36.10 W
 設計概要主な設計の概要は下記の通りである。
 
支持物:えぼし型1回線水平配列鉄塔ウエスト下部45°回転設計、質量6.64ton、支線無し。
      電線間隔8.2m、設計径間長458m(1,500ft)、実際平均径間長341m、最大径間長1,095m

 電線:ACSR644m㎡(54/19)、質量2.43kg/m、最大使用張力7,575kg、最低地上高10m、最小鉄塔離隔1.83m
      テーパードアーマーロッド使用、ストックブリッジダンパー使用


 がいし254mm標準懸垂がいし使用、懸垂一連16個連結、耐張一連18個連結(耐電圧690kV Wet)、インパルス耐電圧1,425kV

 耐雷設計:架空地線亜鉛メッキ鋼線直径16mm 2条、遮蔽角20°、接地抵抗3~15Ω、カウンターポイズクロス型使用


注9:スプーン-カナワ線

 本送電線はウエストバージニア州(State of West Virginia)、オハイオ川左岸にあるニューヘブン(New Haven)の近くで 当時グレアムステーション(Graham Station)と呼ばれた土地に建設されたフィリップス・プーン石炭火力発電所(Phillip Sporn Power Plant.)を起点とし、カナワ川(Kanawha River)沿いのグラスゴー(Glasgow)間、101Kmに、アメリカン ガス&電力会社(現在のAEP:American Electric Power)により建設されたもので、支持物は、2回線垂直配列型が使用された。

 起点のフィリップ・スプーン石炭火力発電所は、ウエストバージニア州とオハイオ州の境を流れるオハイオ川左岸(ウエストバージニア州側)に建設された発電所で、当時のアパラチアン電力(Appalachian Power Company)により、1950年7月27日に153MW ×2UNITで運転開始した。
 運開当初は世界最大級の火力発電所であったとのことである。

 その後出力の増加を図り、1960年には5号機まで建設し最大1,105MWとなった。
 しかし、現在では5号機(出力496MW)を2012年に廃止させ縮小を図ったとのことである。

 なお、発電所の名称は、当時(1947年から1961年まで)AEPの社長をしていたフィリップ・スプーン氏(Mr. Phillip Sporn)の名前をつけたとのことである。

 またグレアムステーション地区には、北側に隣接してAEPのマウンテニーア石炭火力発電所(Mountaineer Power Plant)があり、この地区の殆どの面積を2つの発電所で占めてしまったため町の発展はなかった。


 Street View写真はないが、下記地点の確認をするには、下記の赤い文字列をコピーして、Google earthの検索窓に貼り付けると自動的にその地点に画面が移動するので、試していただきたい。
起点:フィリップ・スプーン石炭火力発電所構内のグレアムステーション変電所:「
38 57 41.38 N 81 55 45.99 W

終点:カナワ川沿いのグラスゴーにあるグラスゴー変電所:38 12 17.30 N 81 25 12.40 W
 設計概要主な設計の概要は下記の通りである。
 ●ルート:こう長101km、標高213~488m、殆どの区間が低い山岳地帯で、起終点間についてほぼ直線ルートを確保。
      なお、終点のグラスゴー変電所は、KANAEHA RIVER火力発電所に隣接している。
     (ルートの概要は後述の(注11)765kVベーカー-マークウィーズ線の系統概要図で見ることができる。
      運開当初は、330kVで運転開始されたが、その後345kVまで昇圧して現在は345kV系統の送電線として
      運用されているようだ。)

 ●支持物:2回線垂直配列鉄塔、質量12.7ton/基、1km当たりの基数2.55基、平均径間長392m。

 ●電線:ACSR646m㎡(54/19)、2.43kg/m、電流容量1,600A、オフセット間隔1.53m、垂直間隔6.56m、設計径間長427m、

     最大径間長854m、常時張力3,175kg、最低地上高10.7m、アーマーロッド使用、ストックブリッジダンパー使用。
     コロナ損0.6~1.25kW。

 ●がいし:標準懸垂がいし使用、懸垂箇所一連18個連結(耐圧690kV Wet)、耐張箇所一連19個連結(耐圧720kV Wet)
      インパルス耐電圧1,585kV。

 ●耐雷設計:架空地線1条、ACSR 80
m㎡、遮蔽角33°、カウンターポイズ無し。



注10マニクアガン-モントリオール線


 ケベック州の電力の送電履歴は、1900年代初期にShawinigan Water and Power Company により50kVの送電線がシャウィニガン(Shawinigan)水力発電所からモントリオール(Montreal)間135kmに建設されたのが始まりである。
 なお、シャウィニガン(Shawinigan)水力発電所は右図のSt, Maurice川のセントローレンス川への河口に近い地点である。

 その後、各所で水力開発が進められたが、1944年にケベック州は、ハイドロ・ケベック(Hydro-Quebec)をつくるとともに1962年には全ての発電と配電を国有化した。

 一方、ハイドロ・ケベックは、1955年から、マニクワガン-ウタルド(Manicouagan Outardes) (Manic-Outardes)ダムからモントリオールまでの約600kmの間に5,000MW(500万kW)の電力を送電する大計画の検討を開始した。

 当時の世界的最高電圧は300~400kVであったが、この電圧では送電線のルート数は少なくとも30ルートが必要であることが分かった。
 そこで500kVが検討されたが既存の315kVに対して大幅な改善にはならず、効果的解決にはならないことが分かった。

 そこで、ハイドロ・ケベックは、既存の315kVの2倍以上の735kVにすることに決定し、コロナ問題、環境問題、がいし装置特性の諸問題等を精力的に検討・克服し、1962年に建設を開始した。

 世界初の735kV1回線送電線は、マニック-ウタルド(Manic-Outardes)ダムからケベック市のリーバイス(Levis)変電所の間372kmにわたり1965年11月29日13時41分に運転を開始した。
 また、同年中には、モントリオールのボウチェビル(Boucherville)変電所間217kmの区間も運転開始した。

 更に、右図の通り、マニック-ウタルド水系からモントリオール間には、1971年までの間に735kV送電線が3ルート3回線ずつが建設された。

 


 右図は、ハイドロケベック(Hydro-Quebec)の735kV送電系統概要図であり、カラー化されたルートが1965年~1971年に建設されたものである。

 細線の黒い系統は、1965年時点での将来構想を示している。

 その後開発されたケベック州北方のジェームズ湾プロジェクトでは、ラ・グランド1(La Grande Phase 1)の例を挙げると、鉄塔基数は12,500基、電線は60,000km、架空地線は10,000kmが使用された。

 現在のカナダの735KV系統概要地図は、下記のURLで見ることが出来る。

 http://www.hydroquebec.com/transenergie/en/pdf/carte_reseau.pdf

 ハイドロケベックの総発電容量は2002年現在で33,000MW(3,300万kW)であり、その93%が水力発電である。
 また、総発電容量の85%は、「ジェームズ湾プロジェクト」、「マニック・オタルド開発」、および「チャーチル滝開発」で発電されたものである。
 なお、上記URLで示される系統図で最も北東側の地点名が示されていないが、その地点はチャーチル滝開発地点である。

 ハイドロケベックの有する送電線こう長は約33,000kmである。


 右図は、当初設計の懸垂鉄塔であり、標準径間は420m(1,400ft)である。

 使用電線は、ACSR680m㎡ 4導体(電線外径35mm)で、4導体の素線間隔は457mmである。
 また、架空地線は亜鉛めっき鋼撚り線を使用した。
 がいしは、直径254mmの耐抗張荷重6.8tの標準がいしを使用し、一連35個連結であり、V吊りは単連である。

 鉄塔高は、我が国の鉄塔に比較しかなり低く、我が国では将来とも線下にに人の立ち入りが希と予想される地域では500kV送電線の場合でも、静電誘導対策上、最低電線地上高は18~19m以上を確保しているのに比べ、電線最低地上高は歩行者通過道路で12m、高速道路、公道、車道で13.5m、主要道路、大通り15mとしている。
 これは、送電線・線下専用用地幅(Right of Way)の境界、すなわち外側線から30m離れた地点での静電界の強さが、我が国の送電線直下の値50V/cmとほぼ同じ値になるように考えているためと思われる。
 ただし、公道で配電柱12mの建設が予測されるところでは離隔6.9mをみて18.9mとしている。

 本送電線ルート地域は、冬期には寒冷化が酷く、電線鉄塔への着氷雪が大きな問題となる可能性が高い。

 従って、架涉線風圧40kg/㎡、被氷厚さ12.7mmの設計とした。

 しかし、1998年には大雪氷害が発生し、設備損壊が多く、大停電を発生させたため、鉄塔・電線の耐雪氷条件を見直し更に強化したそうである。
 また、ケベック市のLevis変電所に「着氷除去装置(Levis De-Icer):DC±17.4kV 250MWの電線融氷装置」を開発設置している。


 右写真は、上記送電線概要図のモントリオールの変電所Duvernay SS引き込み口に近い地点で、1971年に建設された送電線を撮ったものである。

 プロトタイプの上記鉄塔図と若干鉄塔の結構が異なるが、基本設計はほぼ同じものである。

 その後、ハイドロ・ケベックでは多くの735kV送電線を建設したが、1965年建設のプロトタイプの送電線では、鉄塔質量は21t/kmの鋼材を使用したのに対して、近年V型支線付き鉄塔(V-guyed tower)を開発適用し11.8t/kmまで鋼材使用量を低減させた。


 ところで、えぼし型鉄塔で3相とも直吊りがいしを使用している鉄塔の呼び名をカナダ、アメリカでは「メイ・ウエスト鉄塔(Mae West Tower(Pylon))」と呼んでいる。
 これは、鉄塔スタイルが、豊満な乳房をもったアメリカ女優「Mae West 本名Mary Jane West(1893-1980)」に似ているので名付けられたとのことである。
 なお、V吊りがいし使用の鉄塔はデルタ(Delta)鉄塔と呼称している。


 右図は、ルート水平角度45度までの場所に適用する角度鉄塔である。

 耐張がいし装置は、直径254mmの耐抗張荷重16.8t懸垂がいしを使用し、電線の最大使用張力6.3t×4導体で25.4tに対応するため正方形配列の4連装置を用いている。
 また、一連がいし個数は懸垂と同じで35個連結である。

 このがいし装置は、我が国のようにバランスヨークは使用していない。(下の写真参照)


 右写真は、上記送電線概要図のモントリオールの変電所Duvernay SSの引き込み口に近い地点で、1971年に建設された送電線を撮ったものである。

 上記のプロトタイプの上記鉄塔図と若干鉄塔の結構が異なるが、基本設計はほぼ同じものである。


 右図は、ルート水平角度60度までの場所に適用する角度鉄塔である。

 上相は、下アームから13.1m上の塔体中心に引留られる





 なお、セントローレンス川を横断する箇所では、北岸~ドルレアン島間が1,260m、ドルレアン島~南岸間が1,550mの長径間となったので鉄塔高さ168mの高懸垂鉄塔を建設した。

 また、引留鉄塔も右図のように、1相毎の特殊引留鉄塔を建設した。


 工事施工期間が非常に短かったので、延線は4導体を同時に延線することとし、4導体同時延線車を開発し施工した。

 右写真は4導体同時延線車の写真で、2条のメッセンジャワイヤのそれぞれに2条の電線を取り付け、電線4条を同時にしているところである。

 写真では、右方向にメッセンジャワイヤが2条伸びていて、延線車の中で1線2条引きヨークにより4条の電線が延線車ドラムから引き出されようとしているところである。



注11ベーカー-マークゥイーズ線


 アメリカン電力(AEP:AMERICAN ELECTRIC POWER)は、ケンタッキー州(State of Kentucky)に建設した、当時最大規模のビッグ・サンデイ(Big Sandy)石炭火力(80万KW)の電力を送電する等のため、765KV送電線を、約2,000Kmにわたり建設する大プロジェクトに着手したが、まずビッグ・サンデイ(Big Sandy)石炭火力発電所に隣接するベーカー(Baker)変電所~オハイオ州マークゥイーズ(Marquis)変電所間、112Kmが、その第一ステップとして選定されて、世界初の765kV送電線として建設され、1969年5月に運転が開始された。

 現在もアメリカでは765KVが最高電圧で、運転中の大半は中東地域内のAEP系統のものである。

 この765kVを選んだ理由は、長距離間のPoint To Point送電のためではなく、現在の345kV系統の上位電圧として345kV系統をカバーして安定した運用を確保するためであるのがその一つの目的である。

 また、当時、電力の使用規模は、10年毎にほぼ2倍になる状況で、AEP負荷容量は1990年には当時の4倍の3500万KWに達する予測で、それを345kVで対応すると、送電線数は極めて多く必要となり、その対策が重要な問題になっていた。
 すなわち、年々、土地の有効利用と取得条件が厳しくなる状況の中で、1本の765kV送電線が5本の345kV送電線に匹敵するため、その導入が必須の重要事項となっていた。
 右図は、1969年から1972年にかけて建設を計画している765kV系統概要を示したもので、そのこう長は概略2,000kmである。



 765kV送電線の計画は、1966年前半から開始された。
 このクラスの電圧設計は、カナダのハイドロケベックで735kV送電線が一足先に建設されていたが、AEP領域には直接適用できず、最初から開発設計を推進することとなった。

 まず電線は、ACSR483m㎡45/7撚り、4導体(素導体間隔457mm)を使用することとした。
 この電線は345kVで採用されていたものと同じである。


 最大使用張力は、5tfとした。

 架空地線は、米国ワイヤーゲージ規格8番線7本撚り(素線直径3.26mm×7本撚り、断面積58.6m㎡、直径9.5mm)アルモウエルド(Alumoweld)線であり、最大使用張力2.9tfで架線し、弛度は電線の75%とした。

 がいしは、標準型がいし(直径254mm、高さ146mm)ボール・ソケット型を使用し、懸垂V吊りの外側左右相は一連30個、中間相は32個とした。
 また、耐張装置は一連34個連結とし、ジャンパV吊りは懸垂装置と同様とした。

 がいしの強度は、抗張荷重11.3tfと16.3tfの2種類を使用して、V吊りでは1連装置と2連装置を使い分けし、耐張がいし装置は正方形配列・4連耐張装置を使用した。

 スペーサは、正方形型を使用し、上下の水平部材はロッドを用い、左右の縦方向の部材はスプリングを使用した。


 鉄塔高さは、電線最低地上高を、一般地は12.2m、道路上は13.7m、鉄道上は15.3mとして設計した。

 鉄塔種類は、懸垂鉄塔では右図の自立型鉄塔(鋼鉄製)と、次の下図の支線付きV形鉄塔(アルミニウム製)の2種類を、地形および地質条件に応じて使い分けしている。

 鉄塔型は、S型:ルート水平角度0°~6°、T型:0°~10°、U型:0°~15.5°、V型:0°~21°、
D型:45°、E型:90°、の6つの型式を採用している。
 このうち、S型、T型、U型、V型は自立又は支線付きV形の懸垂型であり、D型、E型は耐張がいし装置使用の耐張型である。
 なお、水平角度が大きく、導体横振れが大きい箇所では下図の「STD型鉄塔(角度鉄塔に対する修正アーム)」を自立鉄塔のU型とV型に適用して横振れに対応している。

 鉄塔設計荷重としては、ハリケーン風速として44.7m/s、電線着氷厚さとして25.4mm、ガストファクターとして1.3を、また、電線の投影面積当たり122kg/㎡、自立鉄塔の投影面積当たり610kg/㎡、支線付きV形鉄塔の投影面積当たり415kg/㎡の風荷重を見込んだ。


 支線付きV形鉄塔の形状は右図の通りである。

 支線に加わる荷重は、S型で33.4tf、T型で41.7tf、U型で50.8tf、V型で62.6tfであり、それに対して使用した支線は鋼撚り線で、S型とT型で「直径3.665mm、10.5m㎡、37本撚り」、U型で「直径4.621mm、16.8m㎡、37本撚り」
V型で「直径3.665mm、10.5m㎡、61本撚り」を使用した。


 上述の通り、水平角度が大きく、導体横振れが大きい箇所では右図の「STD型鉄塔(角度鉄塔に対する修正アーム)」を自立鉄塔のU型とV型に適用して横振れに対応している。


  右写真は、2010年にアメリカ旅行をした時に、アムトラックの車窓から、ミシガン湖畔に建設されたDONALD C.COOK原子力発電所から南下する765kV送電線を撮ったものである。
 曇りの天候のため白黒写真のように見えるがカラー写真である。

 小さな写真は、V吊り部分を引き伸ばしたもので、微風振動対策としてストックブリッジダンパが設置された様子を撮ったものである。

 さて、お手数だが、下記の赤い座標文字列をコピーして、Google earthの検索窓に貼り付けると自動的にその地点に画面が移動するので、そこで Street Viewを立ち上げると、世界初の765kV送電線の写真が見られるので試して頂きたい。
支線付きV形鉄塔 38 21 50.80 N 82 43 04.46 W
支線付きV形鉄塔 38 42 43.39 N 82 48 35.67 W

自立懸垂鉄塔   38 44 58.33 N 82 49 17.63 W
耐張鉄塔      38 46 31.12 N 82 49 59.57 W

 参考文献:IEEE冬期電力学会(1969年1月)報告書、「アメリカン電力会社の765kVシステムに関する技術報告」




<直流送電線> 直流送電線を追加掲載(2013.01.09)

 電力事業草創期には専ら直流方式が採用されたが、電圧の昇降が自由に出来ないため事業拡大に伴う電力系統の複雑化に対応できず、交流方式に取って代わられた。

 特に三相交流方式が極めて効率的なものであったた
め世界的に三相交流方式が電力系統の主役になった。

 しかし、長距離送電、あるいは地中および海底ケーブル送電では直流方式が有利なため、交直変換装置の技術的発展と相まって、1950年代半ば頃から次第に大陸間横断海底ケーブル送電線等に直流方式が採用され始めた。


 ところで、直流送電線の歴史を振り返ってみると、交流方式では計画・建設した設備がすぐに商用運転に入ることが出来たのに対して、直流では1950年代までは、電力事業草創期に発電所近傍のみに供給した小規模の電力事業を除き、一般需要家に対して商用運転した設備はほとんど見られなかった。

 簡単に直流送電の歴史を振り返ると、1965年に旧ソ連で±400kVが建設される以前の状況は下記の通りである。

世界で初めて直流送電を行ったのは、1882年(明治15年)に、ドイツの、フォン・ミラーがミュンヘン電気博覧会で、バイエルン・アルプスのミースバッハから58Kmにわたる2kV架空直流送電線を、フランスのマルセル・ドプレに設計依頼して建設(構造物は電信線を使用)したのが最初で、設備としては配電線規模で、博覧会専用線であった。

●交流送電が主流となる中で、1906年に、フランス・ヨーロッパアルプス山中の町・ムーティエ(Moutiers)の水力発電所からリヨン(Lyon)間にこう長200kmの±75kV架空直流送電線(190kmが架空、10kmがケーブル設備)が建設された。
 この送電線は水銀整流器が開発される前の時代で、スイス人Rene Thuryが開発した交直変換器を使用しない方式で、発電機と負荷を直列接続したシステムであり、接続負荷が厳しく限定されるもので流動的な需要には適用できない方式であった。
 それでも、限定された3万kW(30MW)の負荷に1936年までの30年間営業運転された。
 また、この方式の送電は1889年から1925年にかけて、イギリス、ハンガリー、ロシア、スイス、フランス、イタリアなどでも小規模なものが幾つか建設された。
 しかし、一般の需要に自由に供給できないこと、保守運用に手間がかかること、および送電損失が多いことから、1930年代には水銀整流器に取って代わられた。

●1930年代以降、水銀整流器の時代になってからは、アメリカで周波数変換所、或いはスイス、ドイツ、スウェーデンなどで諸実験・研究設備が幾つか建設されたが架空送電線による商用運転設備は建設されていない。

●1951年に旧ソ連で、モスクワ~カシラ(Kashira)間の100kmに200kV、3万kW(30MW)送電線が建設され、また1954年にはスウェーデン本土とゴットランド島間96kmを結ぶ海峡横断 100kV、2万kW(20MW)送電線が建設されたが、全てケーブル送電線で架空設備ではなかった。

 そして、ようやく1965年に至り現代電力系統に通用する設備として旧ソ連で全線架空線として建設された±400kV大容量送電線が出現する。

 本項ではこの旧ソ連で建設された±400kV送電線(HVDC)から掲載することとする。


<海外(Foreign countries)                   <日本>

海外記号 国名
The name of the country
電圧(KV) 建設年 設備概要 日本記号 電圧(KV) 建設年 設備概要
旧ソ連
former Soviet Union
±400 1965
 ボルガ川に建設されたボルゴグラード水力発電所の系統と現在のウクライナ東部のドンバス地方・ルハーンシク方面の系統を連係するため、ボルゴグラード~ドンバス間に建設された送電線である。
 そのこう長は473kmで、1962年に試験運転を開始し、1965年に正規の電圧±400kVに昇圧運転した。
 送電容量は720MW(72万kW)であり、交直変換器は水銀バルブである。

 線路設備概要は、電線:ACSR712m㎡2導体(導体間隔400mm)、がいし:懸垂型320×203mm一連22個連結、電力線は2線式で10m幅の水平配列、架空地線1条、支持物は懸垂箇所は自立鉄塔である。

 なお、西側端・ドンバスの変換所所在地はルハーンシクの西方55km地点のペルボマイスク(Pervomaisk)町のすぐ北である。

 Google earthを用いると、ボルガ発電所から出てすぐの場所における写真が見られるので試していただきたい。
 下記の赤い文字列をコピーして、Google earthの検索窓に貼り付けると自動的にその地点に画面が移動するので、そこで Street Viewを立ち上げると送電線写真が見られる。

48 51 31.20 N 44 37 05.65 E

カナダ
Canada
±450 1972
 カナダ中央部のハドソン湾に流れ込む大河・ネルソン川に、マニトバ水力発電会社(Manitoba Hydro)は複数の大容量水力発電所を建設する計画を立案したが、その出力を約750km南方のマニトバ州の州都ウィニペグ(Winnipeg)に送電するために大容量直流送電線(HVDC)の建設プロジェクトを同時に計画した。
 この発電所建設プロジェクトはまず、1966年に出力1,270MWのケットル(Kettle)発電所の建設に着手したが、この出力をウィニペグに送電するための「ネルソンリバーⅠ」HVDCプロジェクトを同時に進めた。

 このHVDC送電線は、区間は発電所近傍に設けたラディソン(Radisson)変換所を起点とし、ウィニペグの北西郊外に設けたドルジー(Dorsey)変換所を終点とするこう長895km、電圧±450kV、送電容量1620MWで、、交直変換器は水銀バルブを使用し、1972年6月17日に運転開始した。

 送電線の設備概要は、支持物は双極の2条の電力線を水平配列としたT形の形状で、懸垂箇所は支線付鉄柱約3,900基、耐張箇所は自立鉄塔96基、電線はACSR934.2m㎡2導体で対地帰路方式、架空地線は1条、がいしは懸垂がいし一連21個連結である。

 この送電線の写真は、Manitoba Hydroを紹介するページで見ることができる。

 
南アフリカ共和国
South Africa

モザンビーク
Mozambique
±533 1979
 モザンビークの北部を流れるザンベジ川に、1969年に、南アフリカの国有電気事業者のEskomとモザンビーク独立前のポルトガル政府間でカボラバッサ(Cahora Bassa)水力発電所を建設する協定を交わし、207.5万kWの水力発電所および南アフリカ首都プレトリア近郊間に1,420kmの±533kV直流送電線を建設開始した。
 その後、1975年にモザンビークが独立しポルトガルの権益を引き継いだ。

 この送電線の起点側変換所はソンゴ(Songo)、終点側はアポロ(Apollo)と呼ばれ、1977年から試運転を開始し1979年に正規に運転開始した。
 送電容量は当初1920MWで、2008年にアポロ変換所を改修し2500MWに増容量されており、発電所出力の大半はこの送電線により南アフリカに送電されている。


 送電線設備は、単極電力線毎に独立した鉄塔で1基1線方式で建設された。
 終点側変換所近傍では双極2線と帰路導体(大地帰路方式の接地点として変換所から約15km離れた場所に接地装置を設け、そこまで4導体架空線建設)の3本の電線を独立した鉄塔3基を横並べして建設している(ルート幅約100m)。
 変換所から約15km以降は双極2線を1基1線方式で2基の鉄塔を横並べして建設しており、各電線(各鉄塔)相互の間隔は狭いところで約1km、広いところでは数km以上離れて並走させルートを確保している。
 電線はACSR 565/29.5m㎡ 4導体、架空地線は各鉄塔1条、計2条でがいしで絶縁されている。
 がいしは16tfガラス懸垂がいし一連28個連結である。

 送電線は、こう長約1400kmのうち900kmがモザンビーク、500kmが南アフリカ地内を経過している。

125 1979(昭和54年)
 北海道電力と東北電力は、お互いに効率的に電力系統運用をするために連系線が必要であった。

 両電力を連系するには、津軽海峡を横断する送電線が必要となるが、40kmを超す長距離の海底ケーブル線路となるため直流送電線を建設することとなった。

 この送電線建設は電源開発株式会社が実施することとなり、津軽海峡を横断して北海道の函館変換所と青森の上北変換所間を結ぶ、こう長167Kmの我が国初の直流送電線(北本直流幹線)として、昭和54年に建設された。

 本送電線により、本州と北海道間の系統連系が初めて可能となった。

 津軽海峡を横断する43Kmは海底ケーブルで、地上部分は架空送電線である。

 電圧は、当初単極(帰路となる架空地線2条と片側の電線1条のみ架線)で125KVであった。

「歴史に残る送電線」掲載

250 1980(昭和55年)
 その後上記の北本直流幹線については昭和55年に250KVに昇圧し、さらに平成5年(1993年)に双極(電線1条を増架してアームの左右に2条架線)とし、大地に対して±250KV運転を開始した。
 送電容量は約60万KWである。

 架空線部分の電線は、ACSR810m㎡単導体、帰路導体はEACSR240m㎡2条、がいしは大部分の区間で250mm耐霧がいし32~37個連が使用されている。

「歴史に残る送電線」掲載

ブラジル
Brazil
±600 1985
 本送電線は、ブラジルのパラナー川がパラグアイ国境を流れる地点に設けたイタイプ(Itaipu)水力発電所と、電力需要地・サンパウロの近郊間、約800kmを結ぶ±600KVの直流送電線(送電容量1ルート当たり315万kW、2ルート計630万KW)で、ブラジルが世界に誇る直流世界第2位(2012年現在)の高電圧の送電線である。

 本送電線は、イタイプ発電所に近接して設けられた交直変換所を起点として、サンパウロの西方約60kmのイビウナ(Ibiuna)に設けられた交直変換所までの、こう長約800km、双極1回線(2相)・2ルートのDC送電線である。

 なお、2ルートは、両端の変換所付近を除き、約10km以上離してルート設定されている。

 鉄塔は、自立鉄塔(全体の20%、質量9,000kg)と支線付鉄柱(全体の80%、質量5,000kg)が使用されており、支線付鉄柱は懸垂箇所に使用されている。
 アーム長、すなわち電線水平間隔は約17mであり、架空地線は2条である。
 電線は4導体(素線間隔45cm)を用い、電線線種はACSR644m㎡(45/7)が使用されている。
 がいしは一連32個連結、がいし連長5.1mであり、単連または2連装置が場所により使い分けされている。

 Right of Way 幅は、72mである。

 本送電線については、発電機の竣工経過に合わせ、1984年に双極1回線(2相)・1ルートを±300KV運転で竣工させ、翌年の1985年に±600KV昇圧させた。
 更に、1987年に第2ルートを竣工させている。

「海外の送電線:ブラジル」掲載

±500
(当面250kV
運転)
2000(平成12年)
 四国の橘湾火力の出力を関西方面に送電する送電線として、関西電力、四国電力および電源開発の3社が共同で、紀伊水道を海底ケーブルで横断して地上の紀伊半島部分を架空線とする直流連系送電線・阿南紀北直流幹線を建設した。
 架空線区間は由良開閉所~紀北変換所間51Kmを結ぶ我が国初めての500KV直流架空送電線で、
世界最大級の直流送電線であり、平成12年に関西電力により建設された。

 本送電線は、±500KV双極1回線約280万KWで、当面250KV運転、140万KWの送電線である。
 その架空線区間の設備概要は、電線:TACSR810m㎡4導体2条、帰線:TACSR610m㎡2導体2条、がいし:本線用には直流用として開発した460mm直流懸垂がいし、などを使用している。

 架空地線は、北本直流幹線と同様、帰線を架空地線として機能させている。

「歴史に残る送電線」掲載
  
中国
China
±800 2009
 中国では、水力資源の豊富な西部から電力需要地である東部方面に電力を送る「西電東送」プロジェクトが多く計画されている。
 このプロジェクトの多くはこう長が1,000kmを超す長距離になるので直流送電線建設計画として進められている。

Yunnan(雲南)-Guangdong(広東)線はその一環として計画されたもので、南方電網公司が建設を実施し、世界初のUHVDC ±800kV 設計として2009年12月28日に運転開始し、世界記録を達成した。

 起点は雲南省楚雄の禄豊県で、終点が広東省広州の増城市であり、そのこう長は1,373kmである。
 
送電容量はは500万kWである。

 鉄塔は、双極2条の電力線を塔体の左右に水平に配置したT形状の自立鉄塔である。
 電線は6導体方式を採用している。

 なお、その後国家電網公司が建設を進めていた同一電圧の直流UHV±800kV
向家堤(Xiangjiaba)-上海(Shanghai)線が2010年7月8日に運転開始しており、続々と多くのプロジェクトが進められているようだ。

「最近のトピックス:No33」掲載
   
 上記表は、電圧上昇の推移に関わる送電線だけを抽出して掲載しているが、世界各国の直流送電線の全体像について知りたい方は、
●書籍:「国内外にみる直流送電技術の現状と展望」井上義一氏執筆、月刊誌OHM1984年3月号
●インターネット:
http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_HVDC_projects
に詳細に掲載されているので、ご覧いただくことをお勧めする。

 ただ、その記事の中で特に注目されていた送電線距離世界最長を目指して旧ソ連で計画された「エキバスツース~センター(送電距離2,400km、1984年運開計画)」については旧ソ連崩壊のため実現に至ってない。
 なお、エキバスツースは現在のカザフスタン国内にある。




 

・世界主要国の最高運転電圧一覧 
(A table of the most high voltage of the power transmission line in various countries in the world)   

(表の後に解説掲載)

 2003年~2010年現在での、世界主要国の最高運転電圧を示すと、下表の通りである

記号の解説 KV:キロボルト=1,000ボルト、(例:500KV=500キロボルト=500,000ボルト=50万ボルト)
        DC:Direct current 直流のこと
国および地域
Countries and areas
1000KV以上
(UHV)
1000KV未満~
700KV以上
700KV未満~
500KV以上
500KV未満~
300KV以上
300KV未満 備考
DC800KV以上
(UHVDC)
DC800KV未満~
560KV以上
DC560KV未満~
400KV以上
DC400未満~
240KV以上
DC240KV未満
[アジア](Asia)
 日本(Japan) (500KV→1000KV)
(即昇圧可能
500KV、
(DC±250KV→
±500KV
)
(即昇圧可能)
DC±250KV UHV西群馬幹線、
阿南紀北直流幹線、
を「歴史に残る送電線」掲載
 韓国(Republic of Korea) 765KV DC±180KV
 中国(China) 1000KV
DC±800KV
2009/01/06 1000KV・運開
2009/12/28 DC±800kV運開
 台湾(Taiwan) 345KV
 インド(India) 765KV DC±500KV 「海外の送電線」に掲載
 インドネシア(Indonesia) 500KV
 カンボジア(Canbodia) 230KV
 シンガポール(Singapore) 400KV
 スリランカ(Sri lanka) 220KV
 タイ(Thailand) 500KV DC±300KV
 ネパール(Nepal) 132KV
 パキスタン(Pakystan) 500KV
 バングラデシュ(Bangladesh) 230KV
 フィリピン(Philippines) 500KV DC±350KV
 ベトナム(Viet nam) 500KV
 マレーシア(Malaysia) 500KV
 ミャンマー(Myanmar) 230KV
 モンゴル(Mongolia) 220KV
 ラオス(Laos) 230KV
[ヨーロッパ](Europe)
 アイスランド(Iceland) (400KV昇圧可) 220KV
 アイルランド(Ireland) 400KV DC±200kV
 アルバニア(Albania) 400KV
 イギリス(United Kigdom) DC±450KV 400KV 「海外の送電線」に掲載
 イタリア(Italy) DC±500KV 380KV 「海外の送電線」に掲載
 エストニア(Estonia) 330KV DC±150KV
 オーストリア(Austria) 380KV 「海外の送電線」に掲載
 オランダ(Netherlands) DC±450KV 380kV 「海外の送電線」に掲載
 ギリシャ(Greece) DC400KV(単極) 400KV
 クロアチア(Croatia) 400KV
 スイス(Switzerland) 380kV
 スウェーデン(Sweden) DC±500KV 400KV 「海外の送電線」に掲載
 スペイン(Spain) DC±250KV 400KV 「海外の送電線」に掲載
 スロバキア(Slovakia) 400KV
 スロベニア(Slovenia) 400KV
 チェコ(Czech Rep) 400KV 「海外の送電線」に掲載
 デンマーク(Denmark) DC400KV(単極) 400KV 「海外の送電線」に掲載
 ドイツ(Germany) DC450KV(単極) 380KV 次期電圧鉄塔建設中
「海外の送電線」に掲載
 ノルウェー(Norway) DC±450KV 400KV 「海外の送電線」に掲載
 ハンガリー(Hungary) 750KV 「海外の送電線」に掲載
 フィンランド(Finland) DC±500KV 400KV 「海外の送電線」に掲載
 フランス(France) (750KV鉄塔建設済) 400KV,DC±270KV 「海外の送電線」に掲載
 ブルガリア(Bulgaria) 750kV
 ベルギー(Belgium) 380KV 「海外の送電線」に掲載
 ポーランド(Poland) 750KV DC450KV(単極)
 ポルトガル(Portugal) 400kV
 ラトビア(Latvia) 330KV
 リトアニア(Lithuania) 330KV,DC±300KV
 ルーマニア(Romania) 750KV
[NIS諸国]
(NIS countries)
 アルメニア(Armenia) 330KV
 ウクライナ(Ukraine) 750KV DC±400KV
 ウズベキスタン(Uzbekisten) 500KV
 カザフスタン(Kazakhstan) 1150KV
(1991年以降525KVで運転中)
「世界記録日本記録」掲載
 キルギス(Kyrgyz) 500KV
 グルジア(Georgia) 500KV
 トルクメニスタン(Turkmenistan) 500KV
 ベラルーシ(Belarus) 750KV
 ロシア(Russia) 1150KV
(1991年以降525KVで運転中)
DC±400KV 「世界記録日本記録」掲載
[北米](North America)
 アメリカ(The USA) 765KV DC±500KV 「海外の送電線」に掲載
 カナダ(Canada) 765KV DC±450KV 「海外の送電線」に掲載
[中南米]
(Central & South America)
 アルゼンチン(Argentina) 500KV
 ウルグアイ(Uruguay) 500KV
 グアテマラ(Guatemala) 230KV
 コスタリカ(Costa rica) 230KV
 コロンビア(Colombia) 500KV
 チリ(Chile) 500KV
 パナマ(Panama) 230KV
 パラグアイ(Paraguaay) 220KV
 ブラジル(Brazil) 750KV,
DC±600KV
「海外の送電線」に掲載
 ベネズエラ(Venezuela) 765KV
 ペルー(Peru) 220KV
 ポリビア(Bolivia) 230KV
 メキシコ(Mexico) 400KV
[オセアニア](Oceania)
 オーストラリア(Australia) 500KV DC±150KV
 ニュージーランド(New Zealand) DC±350KV    220kV 「海外の送電線」に掲載
[中近東]
(The Middle and Near East)
 アラブ首長国(The UAE) 400KV
 イスラエル(Israel) 400KV
 イラク(Iraq) 400KV
 イラン(Iran) 400KV 「海外の送電線」に掲載
 サウジアラビア(Saudi Arabia) 380KV
 シリア(Syria) 400KV
 トルコ(Turkey) 400KV
 ヨルダン(Jordan) 400KV
[アフリカ](Africa)
 アルジェリア(Algeria) 220KV
 ウガンダ(Uganda) 132KV
 エジプト(Egypt) 500KV 「海外の送電線」に掲載
 ケニア(Kenya) 220KV
 コンゴ民主共和国
(Dem.Rep. of the Congo)
DC±500KV 220KV 「世界記録日本記録」掲載
 ザンビア(Zambia) 330KV
 ジンバブエ(Zimbabwe) 330KV
 タンザニア(Tanzania) 220KV
 チュニジア(Tunisia) 225KV
 ナイジェリア(Nigeria) 330KV
 マラウイ(Marawi) 132KV
 南アフリカ(South Africa) 765KV DC±533KV
モザンビーク(Mozambique) DC±533KV 400kV
 モロッコ(Morocco) 400KV



解説

○中国
 中国の経済発展は誠にめざましく、電力需要はうなぎ登りで、ここ毎年5,000万KW以上(我が国全体の最大電力のほぼ1/3に相当)の電源開発を続けているようであり、将来ともこのペースは続くようである。

 その電源は、水力、火力(石炭が主力)とも、西部に偏在し、需要地の東部に送電するため、「西電東送(西部で発電した電力を東部に長距離送電する)」の多くのプロジェクトを進めており、特に直流送電線計画が多い。
 この送変電設備の増強計画の一環として
2006年に建設に着手した1000KV(100万V)送電線路が、2009年1月6日竣工し、運転開始された。

 2009年現在、世界で1000KV商用運転をしている唯一の国となった。

 
また、直流も2009年12月28日に、UHVDC±800KVの雲南-広東線が運転開始され、世界初のUHVDC送電線が誕生した。

 中国は、交流に加え直流もUHV送電線が建設され、交流、直流ともUHV化するという世界新記録を達成した。
 また、 2010年7月8日に±800kV向家堤(Xiangjiaba)-上海(Shanghai)線が運転開始したが、こう長が1,916.5kmで、その時点で世界最長の
送電線となった。

 それに続くこう長
2,059kmのUHVDC±800kV錦屏-蘇南線が、2012年6月27日に試験運転を開始したため世界最長記録が更新されたが、ブラジルで2013年11月にこう長2,397kmの±600kV・HVDCマデイラ送電線が営業運転に入ったため世界最長記録はブラジルに移った。



○インド
 インドは、中国ほどではないが、毎年1,000~1,600万KW程の増加を予測しており、送電線の建設は全国的に多くのプロジェクトが進められている。

 インドは広大な国土を有しているため、インドの電力系統は、「北部」、「東部」、「北東部」、「西部」および「南部」の5ブロックに分けて管理・運用している。(海外の送電線:インド参照

 インドの電力系統電源は、北部に水力発電所があるものの、電力供給量の約70%を石炭火力発電に依存している。
 この石炭火力は、インドの東部寄りにあるため、
●「北部系統」では需要中心地のデリーまでは直線距離で約800km、
●「西部系統」では需要中心地のムンバイまでは直線距離で約1,200km、
●「南部系統」では需要中心地のベンガルールまで直線距離で約1,200km
あるなど、各送電系統とも極めて長距離の電力流通設備を建設しなければならない状況にある。
 したがって、安定した電力系統運用のためには出来るだけ長距離送電に有利な高電圧の送電系統が必要となる。

 そこでインドでは早くから400kV系統の建設を進め、1990年には回線延長2万kmの400kV送電線が建設され2008年末時点で8万3千kmを建設している。
 
また、長距離・大容量送電線には直流送電線が適しているため、北部、西部および南部系統とも±500kV双極直流送電線を建設し交流系統とハイブリッド運用をして送電容量増加対策を進めている。

 しかしながら、それでも各系統とも送電容量が不足ぎみであり、インド政府は1980年代末には800kV(公称電圧765kV)を採用することを決定し、その送電線を出来るだけ早期に建設する計画を立てた。
 そして2000年頃以降は765kV送電線系統が新設増強され、その回線延長は2008年末では約2,500kmとなり、一段と強化された系統になっている。

 なお、インドでもUHV送電計画が検討されており、2013年~2014年を目標に1200KV送電系統を建設し運用開始したいとの計画が進んでいるようだ。


○アジアにおける、インドネシア、タイなど500KV採用諸国
 インドネシア、タイ、パキスタン、フィリピン、ベトナム、マレーシアでは、500KVを最高電圧として採用しており、西欧の技術的先進諸国で採用されている400KVよりも高い電圧が使用されている。

 これらの国では、電源と需要地間の距離が、下記の通り、400~1,500kmと比較的長く、また、系統構成上の必要性もあり、更に1980年代以降の比較的最近に建設されたため、技術的に確立された500KVを採用している。

 インドネシア:ジャワ島を東西に縦貫する送電線は、約1,000kmになる。
 タイ:北部のタイ火力と首都バンコクを結ぶ送電線は、約600kmになる。
 パキスタン:北部の水力と南部の火力発電所間約1,000km以上の距離を結んでいる。
 フィリピン:ルソン島を南北に縦貫する送電線は、約500kmになる。
 ベトナム:国が南北に長く、その南北縦貫送電線は約1,500kmにもなる。
 マレーシア:マレー半島のタイ国境に近い地点と、クアラルンプール付近の間を結ぶ送電線は、約400kmになる。



○ヨーロッパ
 ヨーロッパ諸国は、電源地点と需要地間の距離が比較的短く、送電系統はメッシュ状形成され、かつその建設された年代が古く、そのためその時点で建設可能な電圧である、400KVまたは380KVが採用された。

 その後、運用を適切にしてきており、上位電圧の必要性が切迫していないため、現在でもまだ上位電圧には移行していない。

 現在この電圧でヨーロッパ諸国は、国際連系され、円滑に運用されている。

 しかし、電力需要の増加に対処するため、フランス、ドイツなど、次期電圧の線路設備を既に建設している国もある。

 現在、ヨーロッパでの電圧階級は、大まかには、110KV~220KV~380KVまたは400KV、となっている。

 なお、直流線路は、海底ケーブルにより、近隣諸国との国際連系を図るため、建設されている。

 例えば、ドイツとデンマーク間はDC4
00KV(単極)、スウェーデンとフィンランド間はDC±500kV(双極)、フランスとイギリス間はDC±270KV(双極)、また、イタリアとギリシャ間はDC400KV(単極)で、それぞれ連系されている。
 



○ハンガリー、ブルガリア、ポーランドなと゜750KV電圧採用諸国
 ハンガリー、ブルガリア、ポーランド、ウクライナ、ベラルーシなど東欧の諸国では、750KVの電圧を採用しているが、それは、1980年代の旧ソ連邦時代に建設されたものである。

 その時代、同盟地域間で連系送電するため、大事故で有名になったチェルノブイリ発電所をはじめ、多くの発電所のあるウクライナを核に、750KV線路が建設されたようだ。

 ウクライナでは、750KV線路が約4,000km(回線延長)あり、また、それを活用して近隣諸国に電力を輸出してきたが、近年は発電電力低下に伴い、輸出は低下しており、さらに送電線設備が老朽化し、しばしば電圧低下を生ずるなどの不安定な運用のため、ロシアをはじめ近隣諸国の系統から切り離されているようだ。

 ただ、ごく最近は、ロシアとの連系が復活しているとの情報もある。


○キルギス、ウズベキスタンなど、中央アジアの500KV電圧採用諸国
 キルギス、ウズベキスタン、タジキスタン、およびトルクメニスタンなどの中央アジア諸国では、国内の電力需要規模が500KV電圧を必要とするほど大きくないと思われるが、それが建設運用されているのは、旧ソ連時代にソ連邦の系統の一環として建設されたためである。

 この系統は、カザフスタンの南部とも連系し、その電力潮流の管理は一元的にウズベキスタンで行われているようである。



○ロシア、カザフスタンの世界最高電圧1150KV
 旧ソ連では、1985年に、1150KV設計送電線を、現在のカザフスタン国内の北部で東西方向に位置するエキバストゥズ~コクシュタウ~コスタナイ間(直線距離約800Km)の一部分(エキバストゥズ~コクシュタウ間、こう長432Km)に建設し、同年750KVで運転した。

 更に翌年以降、上記区間内ならびにエキバストゥズの東北東バルナウル方面およびコスタナイの北西チェリャビンスク方面にもルートを延ばして約1,000Kmを建設し、上記のエキバストゥズ~コクシュタウ間(432Km、鉄塔1,100基、平均鉄塔高60m)を第一段階として
1988(昭和63年)に1150KVで運転した。

 この1150KV送電線の支持物構造は、1回線設計で平均鉄塔高60mであり、懸垂箇所では、支線4条付V型ガイタワーで、耐張箇所は1相1基自立鉄塔を使用しており、カナダの735KV線路と同じような設計である。電線は水平配列、架空地線2条、懸垂箇所のがいしは左右外側は直吊りで、中央相はV吊りであり、外側~外側電線幅は42mである。

 電線は、ACSR330m㎡ 8導体(素導体間隔400mm、導体束径約1m)、がいしはガラスがいし一連45個(懸垂箇所は2連装置)を使用している。

 この1150KV送電線は、旧ソ連のシベリアからカザフスタンを経由してウラルに伸びる基幹系統に属し、エキバストゥズ炭田等に建設された大容量発電所の出力を旧ソ連のヨーロッパ地域に向けて送電するために建設されたものである。

 しかし、1991年に旧ソ連が崩壊し、経済危機による電力需要の停滞に遭遇するとともにルートの中央部がカザフスタンに分離されたこと等の理由で、1991年以降、電圧を525KVに降圧させて運転している。

 ロシアでは、2005年現在で、1150KV送電線は約800Kmの設備があり、また、カザフスタンでは、旧ソ連が建設した送電線をそのまま所有し約1,420Kmの設備があり、両国間で上記の通り525KVで国際連系して運転されている。


○アメリカ
 アメリカの送電電圧は、1969年以来、間もなく30年になるが最高運転電圧は765KVのままである。
 アメリカ全土の電力需要は、年率2%程度増加しているので、電力系統規模もこの30年弱の期間で1.7~1.8倍に増加しているものと思われる。

 しかしながら、電力事業の規制緩和(電力自由化)に伴う不確実性は、必要とされる電力設備への投資を困難にしており、特に送電線の容量確保は、大きな問題となってきた。

 1997年のニューヨーク市大停電、および2003年8月に発生した北米東部とカナダの大停電など局地的な事故があったものの、全土的には新規送電線建設の減少によって、2003年頃までは重大な信頼度問題が引き起こされるまでには至っていなかった。

 これは、系統運用者が送電ネットワークを物理的限界近くまで運用できるコンピュータシステムを開発したり、直列コンデンサの設置による送電能力の増強を図ったりしているのと、新規ガス火力発電所が需要地の近傍に建設されているなどの効果があったためである。

 しかし、近年、西部のロサンゼルス、サンフランシスコおよび東部のニューヨークからバージニア州北部にかけては、送電線混雑状態が深刻で、その解消に向けた取り組みが必要であるとの調査結果が発表されている。

 そのためもあってか、停滞していた送電投資は2000年以降増加しており、2004年までの5年間の投資増加率は年率12%を記録し、2005年の投資は前年を25%上回ったとのことである。

 ちなみに、2001年から2005年の間に、601KV以上の線路の回線延長は、4,430kmから8,030kmへ、3,600km増加している。

 従って、765KV系統規模の拡大に伴い、あるいは今後多くの新設が予定されている原子力新規電源からの長距離送電線の建設のため、近い将来、上位電圧(1200kVと思われる)の送電線が必要となろう。

 ただ、オバマ大統領の施政方針に基づく「Smart Grid」の建設推進に伴い、上位電圧の導入時期は流動的と思われる。

 なお、現在の電圧階級は、地域により、大きく二つの系列に分かれており、69KV~230KV~500KV、または138KV~345KV~765KV、が基本として採用されている。

 アメリカの電力系統の運用形態については、最近のトピックスNo40(2011.05.27)
「アメリカ大陸・東西連系スーパーステーション建設へ」をご覧頂きたい。


○ブラジル
 ブラジルのパラナー川がパラグアイ国境を流れる地点に設けたイタイプ(Itaipu)水力発電所~サンパウロ間、約800Kmを結ぶHVDC±600KV送電線(630万KW)は、1985年に運転開始され、直流での世界最高電圧として25年間にわたり首位をキープし直流送電技術の高さを誇ってきた。

 しかし、2009年末に中国で±800kV送電線が運転開始されたため、現在は世界第2位となった。

 イタイプ(Itaipu)水力発電所~サンパウロ間には、上記の直流送電線と平行して、750KV送電線も建設され、発電所全出力の1,260万KW(ブラジル側70万KW 9台 60Hz、パラグアイ側70万KW 9台 50Hz)の殆どをブラジル国内サンパウロ方面に送電している。

 すなわち、パラグアイ側には、電力需要が乏しいため、パラグアイ側の出力の殆どを、60Hzに周波数変換しブラジルに送電している。

 なお、国内の主要系統の電圧は、国内南北間連系送電線を含め、500KVが担っている。

 ところで、1982年以来世界一長い送電線として君臨してきたアフリカ、コンゴ民主共和国の、こう長1,700kmのインガ・シャバ(Inga-shaba)線は、2010年7月8日に中国でこう長が1,907kmの±800kV向家堤(Xiangjiaba)-上海(Shanghai)線が運開し、それに続くこう長2,059kmのUHVDC±800kV錦屏-蘇南線が、2012年6月27日に試験運転を開始して世界最長記録は中国に移ったが、このたびアマゾン川の支流であるマデイラ(Madeira)川河畔のポルトヴェリョ(Porto Velho)を起点とし、終点はサンパウロの北西約250kmのアララカラ(Araraquara)間を結ぶこう長
2,397kmの世界最長距離の±600kV・HVDC送電線が2013年11月に営業運転に入り、ブラジルが世界一長い送電線記録の保有国となった。



○コンゴ民主共和国
 2010年6月まで、世界一長い送電線は、アフリカ、コンゴ民主共和国の、こう長1,700Kmのインガ・シャバ(Inga-shaba)線であったが、2010年7月8日に中国でこう長が1,907kmの±800kV向家堤(Xiangjiaba)-上海(Shanghai)線が運転開始したため、その座を降りた。

 インガ・シャバ線は、コンゴ川の河口に近いインガダム水力発電所(滝利用の発電所では世界最大、最終的には3,900万KWを計画)の出力を、建設当時のシャバ州で現在のカタンガ(Katanga)州の有名な銅山都市コルヴェジ(Kolwezi)に送電するために、アメリカの援助により、建設されたもので、電圧は、直流±500KV、こう長は、1,700Km、送電電力は、当面56万KWであり、1982年に建設された。
(詳細は、ここをクリックしていただけると見られる)

 長距離を送電する送電線は、交流の場合には、要所要所に電気所(変電所、開閉所など)を設け、送電特性改善のため、進相電流供給設備(コンデンサ設備など)を設けたり、系統分岐、系統連系するなど、起点、終点間で複数区間に送電線が分断されるのが普通であり、単一の長距離送電線は希である。

 一方、直流は送電特性が良好で長距離送電に適し、起点の周波数変換所から、終点の周波数変換所まで単一(単独)の長距離送電線となるので、長距離世界記録は、直流方式により作られると言える。

 なお、滝利用の発電所では世界最大のインガダム水力発電所が、もし、計画通り建設されれば、最終的には3,900万KWの電力を発電可能となり、中国の三峡ダムが2,240万KWの出力であるのに対してその1.7倍以上の規模となり、文字通り、世界最大の水力発電所となり、アフリカ全土で消費する電力を十分賄える電力をこの一つのダムで発電することが出来るようだ。



○南アフリカ


 アフリカで唯一原子力発電所を所有する国である。
 発電設備総容量は約4,300万KW でアフリカ最大(2位、エジプト、約1,300万KW)であり、その90%以上が石炭火力である。

 この国を核にして、自国を含めアフリカ南部の9カ国が国際連系して運用しており、そのために、400~220KVの線路をを国際連系送電線として運用している。
 なお、最高電圧の765KV(870km)は、国内運用している。

 右写真は、400kV送電線、1回線2ルートの写真である。
 電線は逆三角形配列の3導体であるが、そのスペーサは上部の水平に配置された2条のみが2導体スペーサを使用して風によるスティッキング(Sticking)すなわち電線が互いに衝突・接触することを回避することに使用されており、下部の電線はフリーになっているのが大変珍しい。
 電線に加わる外部荷重は風のみで、氷雪荷重は考慮しなくて良い環境のため、このような設計になったものと思われる。
 我が国では、絶対に見られない特殊な設計である。

 がいし装置は直吊りもV吊りも一連19個連結である。

(南アフリカへの旅行など、当サイト開設者にとっては夢のまた夢であるが、この度、親しくしていただいている川上千衣子氏が首都のプレトリアを旅行(2014/10)され大変貴重な写真を撮られて、提供いただけたので掲載したものである。)


 また、隣国のモザンビークにおけるザンベジ川水力開発で発電された電力の大半を、モザンビークと共同で首都のプレトリア近郊までの約1,400km(南アフリカ国内こう長約500km)の間にDC±533KV送電線を建設し、受電している。

 これらの系統連系諸国は、南アフリカ、コンゴ民主共和国、ザンビア、ジンバブエ、モザンビーク、ボツワナ、ナミビア、レソト、およびスワジランドである。

 今後、更に、連系地域が北へ延びて、ケニア、タンザニア、およびザンビアとも国際連系する計画で、質的・量的に一層進展させていくようだ。

参考文献
・諸外国の電気事業  第1編  2003年版        社団法人海外電力調査会
・諸外国の電気事業  第2編  2005年版        社団法人海外電力調査会
・諸外国の電気事業  第1編  2006年版 追補版  社団法人海外電力調査会
・海外電気事業統計        2007年版        社団法人海外電力調査会
・諸外国の電気事業  第1編  2008年版        社団法人海外電力調査会
・諸外国の電気事業  第2編  2010年版        社団法人海外電力調査会
・諸外国の電気事業  第1編  2014年版        社団法人海外電力調査会


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