標題1

275kV江東線 海にルートを求めた送電線)

2010.01.01新設

Koutou line

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<和42年(1967年)建設当時の状況>


 275kV江東線は、都心導入超高圧送電線の一つとして昭和42年(1967年)に建設したもので、架空線方式で都心に最も近くまで導入した送電線である。

 東京都心近くは、本送電線の建設当時、既に何処も過密市街地域で架空送電線を通す余地のない地域であったため、東京湾岸沿いにベルト状に辛うじて空いていた地域にルートを通し、終点の江東変電所近くでは右写真および右下のルート概要図のごとく約1.5kmにわたり東京湾の海上にルートを求め建設した。

 海上に建設した送電線としては、埋め立て地の工事用電源として66〜77kV以下の電圧の仮設送電線を建設した例は各所に見られるが、超高圧基幹送電線として建設したのは本送電線が初めてである。


 この写真は、手前の鉄塔が右下のルート概要図に示す荒川河川敷内(左岸寄り)のドナウ型鉄塔で、中央に見えるのが中側放水路であり、次の鉄塔が中側放水路左岸堤防に近い江戸川区側の鉄塔を撮ったものである。



 本送電線は、建設当時500KV設計275KV運転の房総線(新京葉変電所付近)から分岐して江東変電所に至るこう長約31km、鉄塔95基、電線ACSR410mu4導体(基本)、がいし280mm懸垂型一連個数24〜30個設計の275KV送電線である。
(現在は起点が新京葉変電所になっている)

 本送電線で特に苦心したのは、終点の江東変電所近傍で、ルート確保上東京湾の海上に約1.5kmにわたりルートを求めた区間の設計である。

 変電所への送電線引き込みにあたり、過密市街地域を避け極力最短距離を選定すると右図のルート以外には無く、台風時などには直接海水の飛沫ががいしに付着するため絶縁設計上極めて過酷な条件となるものの、この海上ルートを採用せざるを得なかったものである。

 したがって、1年以上にわたりパイロットがいしをルート予定地に設置し塩分付着量を測定し設計に反映させ、想定塩分付着量を0.5mmg/cuとして280mm懸垂がいし一連個数を275KV送電線としては異例の30個設計とし絶縁設計に万全を期した。



 また、海上部分については基礎工事にあたり直径約20mのリングビーム工法、すなわち鋼矢板による円形一重締め切り工法により海水を締め切って各脚に鋼管杭を打ち込み門型基礎を建設したのが本工事の大きな特色である。

 この工法は、円形水止め支保工の内側に切り梁を用いていないので自由な作業空間が確保でき基礎本体の工事が効率的に出来るのが特徴である。

 しかし、今日ではこの工法は悪天候時の波浪に対して弱いので用いられていない。

 右写真は、鋼管杭を打設完了したところである。




 右写真は、門型基礎の生コン打設状況を撮影したものである。



 さて、荒川河口を横断する部分については、建設省(当時)との打合せの結果、河川敷内には左岸寄りに1基のみを建設することが認められた。

 したがって、荒川横断径間長は587mの長径間となり、標準鉄塔形状では特殊高強度電線を使用して極力電線弛度を小さくしても鉄塔高さは60mを超過することになる。

 ところが、鉄塔高が60m以上になると、近くに東京へリポートがあるため航空法により航空障害灯および赤白の昼間障害標識を設置せざるを得なくなる。

 しかし、鉄塔建設地点が海上のため航空障害灯の電源配電線の建設が不可能であり、どうしても航空障害標識設置を回避することが必須条件となった。

 そこで、荒川横断部分の2基については、ドナウ型鉄塔を使用し鉄塔高さを60m以下に設計し航空障害標識設置を回避することとした。

 右写真が荒川横断箇所の左岸堤防寄りに建設したドナウ型鉄塔である。
(荒川右岸堤防にて撮影したものである。)

 荒川横断の長径間(ドナウ型鉄塔)区間では、電線弛度を少なくするため高張力で架線する必要があり、強度の強いIACSR/AW430mu(重防蝕)4導体を使用し、それを引き留める耐張がいし装置は水平4連装置を適用した。

 ところで、海上ルート部分のうち江戸川区の地域については、将来埋め立てを計画しているとのことであるが、その時期が不透明なため、送電線設計としては半永久的に海上であっても設備劣化しないことを条件とし、電線を例に挙げると海水の塩分付着による劣化防止対策として重防蝕電線を用いるなどの設計としている。



<平成21年(2009年)現在の状況>


 さて、右のルート概要図は建設後42年経った平成21年(2009年)時点のものである。

 江戸川区地域は南方向に遙か先まで埋め立てられ、その先にJR京葉線および東京湾岸道路が建設されている。

 当時海であったルート近傍は内陸化し、開発計画に従って高層建物も建設され、40年前には海であった名残は全く見られない状況である。

 



 右写真は、荒川右岸から撮ったもので左岸寄りに建設されたドナウ型鉄塔を撮影したものである。

 275kV江東線の左側に高い鉄塔が2基並んで建っているが、これはこの地域の埋め立て工事完了後に建設した送電線で、154kV南小松川線の鉄塔である。


 南小松川線は陸地化された後に建設した送電線であり、従って航空障害灯用の電源配電線も容易に得られるため、約900mの超長径間長で一気に荒川と中川を横断し航空障害標識を設置した60m以上の高い鉄塔として建設されている。

 なお、275kV江東線のドナウ型鉄塔の奥に見える角度鉄塔は、建設当初は鉄塔高60m以下で航空障害標識を設置していなかったが、その後に首都高速中央環状線が建設された際、その横断箇所の電線地上高を高くする必要が生じ嵩上げ工事が行われ、60m以上となったため航空障害標識を設置している。

 この嵩上げ・電線張り替え工事に伴い、嵩上げ鉄塔から江東変電所側のドナウ型鉄塔による荒川横断径間箇所については、特殊電線4導体方式に比較して保守管理に有利な汎用太径電線2導体方式に変更している。



 右写真は、上述の嵩上げ鉄塔(江戸川区側で中川に最も近い鉄塔)のクローズアップ写真である。

 建設当時海であった所が現在では高層ビルが建設されている地域になり、送電線は幅広い公園緑地帯の中を経過していて地域に融け込んでいると感じた。

 手前鉄塔に邪魔されてわずかに小さく見える次の鉄塔とその近くのビルの高さを比較してみると高層ビルの方が遙かに高く、今はビルに隠れて遠方からは目立たないが、トップの写真で見られるように昔は海の中に鉄塔だけが建設されて目立つ存在であったとは誰も想像が出来ない変わりようである。



 右写真は荒川右岸江東変電所側の鉄塔写真である。

 写真左端の鉄塔が荒川右岸堤防に近接して建てた275kV江東線のドナウ型鉄塔でである。

 更に、中央の標準型鉄塔2基は154kV南小松川線の鉄塔である。

 右側の鉄塔は江東変電所のマイクロ無線鉄塔である。

 写真右端の建物は江東変電所である。

 以上の通り、この解説を掲載するに当たり現地に写真を撮りに足を運んだが、40年以前には海だった所が、今ではその名残が全く見られないまでに陸地化されているのを見て驚ろいた次第である。



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