標題1

ノルウェーの送電線
Norway

I traveled in Norway in 2003.
In the area that I traveled in, it was to Bergen via Geirangerfjord and Sognefjord as the starting point in Oslo.
On this page, I display photographs of the power transmission lines which I took in the trip.

 ノルウェーは、2003年7月、北欧四カ国ツアーに参加した際に訪れた。
 ご承知の通り、ノルウェーは、スカンジナビア半島の西側に位置し、南北に細長い国である。
 西側はノルウェー海に面し、東側はスウェーデンに接している。


 ノルウェーの基幹系統は、400KV,300〜220KV,150〜110KVで構成されており、隣国のスウェーデンと国際連係がはかられているようだ。

 地勢は深いフィヨルドと多くの湖があるのが特徴である。フィヨルドは昔の氷河期に氷河が作り上げた深い谷で、現在では氷が解け、そこに海水が入り込み、入り江になっている。
 フィヨルドは南北に長い西側の海岸線から東に向かい、内陸に何本も延びており、櫛の歯のようになっている。
 最も長いフィヨルド(ソグネフィヨルド)は205kmも海岸から東に延びている。
 したがって、ノルウェーでは、送電線を南北に建設する場合、それらを迂回すればこう長が長くなり、経済的にも系統運用上からも好ましくない。
 そこで、ルート選定に際し、如何にしてフィヨルドを横断するかが、送電線技術者の腕の見せ所で、フィヨルドとの戦いに勝利することが求められる。

 このため、ノルウェーの送電線は、長径間箇所が多いのが特徴である。



目次 (A table of contents)

1.世界第2番目の長径間  (The span length which is secondly long in the world)

2.1回線水平配列送電線  (Conductor horizontal sequence type Supports of 1 circuit)

3.2回線水平配列送電線  (Conductor horizontal sequence type Supports of 2 circuits)

4.2回線標準型・垂直配列送電線  (Standard conductor sequence type Supports)

5.がいしアーム(コンパクト装柱)  (Insulator arms)

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1.世界第2番目の長径間  (The span length which is secondly long in the world)

    <ソグネフィヨルド>

 上述のようにフィヨルドは、南北に長い西海岸から東に向かって、内陸に何本も延びており、櫛の歯のようになっている。

 最も長いフィヨルド(ソグネフィヨルド)は、205kmも海岸から東に延びている。
 したがって、送電線はそれらを迂回していてはひどく長くなり、経済的にも系統運用上からも好ましくない。
 そこで、何処かでフィヨルドの横断をせざるを得ないが、フィヨルドの幅は狭いところでも数kmはあり、極めて長径間となるため、特殊設計を余儀なくされる。


 このソグネフィヨルドを横断する送電線は世界で第2番目の長径間となり、なんと5kmに近い4,898mを記録している。
(下図・「拡大図範囲」図面参照)

    <拡大範囲図>

 旅行ルート上で視認できた、世界第2番目の長径間と思われる箇所を、右図(上図の拡大図範囲)に示す。

 そこでは、背後の山の鉄塔は道路から見えず、5km先の鉄塔も遠くて写真には写らなかった。

 径間長は5万分の一の地図上で計測すると4,850mで、世界第2番目の径間長と言われる4,898mに対し、48m(1%)少なかった。
 これは、地図の表記誤差または私の計測誤差か、あるいはソグネフィヨルドの全く別の箇所に長径間箇所があるのかもしれない。
 しかし、後者であるにしてもほとんど世界第2番目の長径間を視認できたと思う。

 設備形態は、右下に示す写真と同様で、1相1基の鉄塔を配置し、架空地線を含め水平配列となっている。
 したがって、1回線の場合は、右図の通り、4条の電線が水平配置でソグネフィヨルドを横断している。
 その設備データは次の通り。
 電圧:150KV、電線:鋼より線300mu単導体、がいし:11t懸垂がいし、1955年建設。
 (電気計算Vol:36,「最近の長径間横断送電線施設と設計・工事」電源開発・工務部長・金子喜八郎氏の記事参照)

 常時、電線が海面上100m以上の高さを確保するとして、弛度は約500mとなるが、その時の張力を概算すると、弛度張力基本式で、
t:張力(Kgf)、w:電線質量=1.5(Kg/m)、s:径間長(m)、d:弛度(m)
として無風・無着氷雪状態で、
t=(w*s*s)/(8*d)
の式から
t=(1.5*4850*4850)/(8*500)=8821(Kgf)
すなわち約 8.8tf になる。
 冬季着氷雪・強風等で、最大使用張力が仮に2倍になっても 20tf 以内に納まると思われ、高張力架線設計上の最大の問題点である、がいし装置は、十分設計可能な範囲に収まるようだ。

    <フィヨルド横断鉄塔>

 上記、世界第2番目の長径間箇所の近くのフィヨルド横断の写真であるが、何処もフィヨルド横断の設備は、視認できた限り全てこのような設備形態であった。

 一般箇所はえぼし形1回線水平配列で、フィヨルド横断箇所は1相1基水平配置設備である。

 右写真は2回線送電線で、「3相+架空地線+3相」の配置になっている。




 最初の図面・ソグネフィヨルドの中程で、Balestrandにおける径間長1,750mの写真である。

 鉄塔は、1相1基および架空地線用1基、計4基建っている。
 径間は、電線3条と架空地線1条で4条水平配置となっている。



 ソグネフィヨルドの中程で、Balestrandにおける径間長2,960mの写真である。

 径間の中程に、振動防止・捻れ防止対策と思われるベートダンパが設置されている。
 電線3条と架空地線1条で、計4条水平配置となっている。




 2つ前の写真と同一箇所で、ソグネフィヨルドの中程で、Balestrandにおける径間長1,750mの全景写真である。

 鉄塔・電線が見にくいので図示した。
 左鉄塔標高約330m、右鉄塔標高約390m、電線弛度約280m。
 見事にフィヨルドを横断する壮観さが分かる。





2.1回線水平配列送電線  (Conductor horizontal sequence type Supports of 1 circuit)

  ノルウェーは、日本とほぼ同面積でありながら、人口が約460万人で日本の約4%弱しかなくその20%が首都のオスロ近郊に集中している。
  そこでは、一歩市街地を離れると、ほとんど人家・住宅は見られず、荒野が続く地形である。
 したがって、送電線路の用地は、容易に取得できると思われ、また、北欧の冬季における過酷な氷雪条件に耐えるよう、ほとんどの送電線は、当然ながら水平配列方式を採っている。

    <1> 1回線水平配列送電線

 300KV級超高圧線であろう。
 左側が3導体で、右側が2導体である。

 鉄塔の構造は、正面と背面の結構は無く、線路方向の2面構造を、水平腕金と3段の水平材で接続し、また、2段8本の支線で緊張固定させているめずらしい構造である。
 詳しい構造は、以下の写真で見ることが出来る。

 超高圧送電線の間に、木柱の低電圧(10〜20KVと思われる)水平配列線路が施設されている。

 がいし一連個数は直吊りが16個、V吊りが17個である。

    <2> 1回線水平配列2導体送電線・懸垂形

 300KV級超高圧線であろう。

 左・中相電線は、片側素導体のみにベートダンパと思われる電線が、取り付けられているのが珍しい。
 取り付けていない方の電線の微風振動対策は、どうなっているのだろうか。

 また、右相懸垂がいし装置は、一連14個連結に加え電線把持部側の2個のがいしが2連装置になっており、これもおもしろい。
 中相、左相はがいし一連個数15個である。

 2面の鉄塔部材間の水平材が設けられた位置であるが、面材の斜材取付節点と関係ない位置に施設されているのが、少しばかり気になる。

    <3> 1回線水平配列3導体送電線・V吊懸垂形

 300KV級超高圧線であろう。

 がいし一連個数は17個である。

 V吊りがいし装置の上部がロッドで接続されているのは、クリアランス上必要な空間を確保するためであろうか。

    <4> 同上の3導体送電線・耐張形

 ジャンパ線支持がいしは、ひだのない長幹がいし(有機がいし?)2本を用いてジャンパ吊りとしている。

 3導体スペーサは、2導体用スペーサの組み合わせで機能させており、ジャンパ線も同じ仕様のスペーサを用いている。

 微風振動対策としては、ベートダンパを用いているが、3導体のうち上素導体2条のみ、ダンパが付いているが、下素導体1条には付いていない(左径間)。

 がいし一連個数は17個である。

    <5> 同上の3導体送電線・耐張形

 鉄塔部材は、懸垂形の場合は単材と思われるが、耐張形の場合は写真のように複合材を用いている。

 左・中相ジャンパ線は、ひだのない長幹がいし(有機がいし?)2本を用い、ジャンパ吊りとしている。

 3導体スペーサは、2導体用スペーサの組み合わせで、機能させており、ジャンパ線も同様である。

 微風振動対策としては、ベートダンパを用いている。
 上の写真と違い、この箇所は3導体全てにダンパが付いている


 がいし一連個数は19個である。

    <6> 1回線水平配列単導体送電線・耐張形

 220KV級送電線であろう。

 単導体送電線の場合も、耐張形の場合は、やはり複合部材を用いている。
 3導体部材に比較し、簡素な構造である。

 がいし一連個数は16個である。

    <7> 1回線水平配列2導体送電線・懸垂形

 300KV級超高圧線であろう。

 線路に水平角度のある箇所にも、傾斜V吊懸垂がいし装置を使用し、懸垂形鉄塔を適用している。
 経済設計を行っているのであろう。

 V吊りがいし装置の上部がロッドで接続されているのは、クリアランス上必要な空間を確保するためであろうか。

 がいし一連個数は13個である。

    <8> 同上の2導体送電線・懸垂形

 上記写真と同一の送電線で、山岳地を経過するルートであるが、1基だけスリムな形状のパイプ鉄塔があった。

    <9> 同上の2導体送電線・懸垂形

 夏でも随処に雪が残る北欧の山岳地帯を経過する送電線は、厳冬期にはどのような過酷な環境に曝されるのか、極めて興味深い。

    <10> 1回線水平配列・えぼし型鉄塔

 220KV級送電線であろう。

 上述の、<1>〜<6>で説明した、1回線水平配列の特殊鉄塔が多く見られたが、我が国でもよく見られる「えぼし形」の鉄塔も見ることができた。

 がいし一連個数は16個である。



3.2回線水平配列送電線  (Conductor horizontal sequence type Supports of 2 circuits)


 旅行中は、1回線形の水平配列送電線を多く見たが、2回線形も見ることができた。

 右の写真は、前項で説明した「1回線水平配列」の鉄塔に対し、横方向に1面の結構を追加して2回線形にした鉄塔である。

 300KV級の送電線であろう。

 微風振動対策と思われる添え線(ベートダンパ)が、各条に取り付けられている。

 がいし一連個数は17個である。


 2回線水平配列の変形送電線である。
 俗称「すずらん装柱」に似た配列である。

 110KV級であろう。

 牧草地のなかを牧歌的に通過している。

 がいし一連個数は10個である。



4.2回線標準型・垂直配列送電線  (Standard conductor sequence type Supports)


 送電線の線下用地は、水平配列でもルート選定にあまり影響しないと思われる広々とした土地柄であるが、それでも110KV級の標準タイプの鉄塔を見かけた。

 耐氷雪設計として、オフセットを十分確保した設計となっている。
 我が国の昭和20年代の、超高圧送電線に類似の設計である。

 面白いのは、塔体のテーパー(転び)が地際から塔頂まで同一で、鉄柱に似た形状になっていたことである。
 通常第3アームから下はテーパーが大きく、第3アームから上はテーパーが小さくなっているのであるが、我々には珍しい。。

 架空地線をよく見ると、何か捲かれているように見える。光ファイバかもしれない。

 がいし一連個数は10個である。


 60KV級の送電線であろう。

 上アームの電線は、中・下アームの電線より微風振動対策のベートダンパが一段強化されている。
 同じ支持物で対策に差をつけるのはめずらしい。

 また、耐雷設計として、手前回線はアークホーンを取り付けているが、向こう側の回線にはない。
 不平衡絶縁にしては、荒っぽい設計だと思われる。

 やはり、塔体のテーパーが地際から塔頂まで同一で、鉄柱に似た形状になっている。

 架空地線をよく見ると、何か捲かれているように見える。
 上の写真と同様で、光ファイバかもしれない。


 上記と同じ60KV級の送電線であろう。

 上記懸垂と同様、耐雷設計として手前回線にはアークホーンがあるのに、向こう側の回線にはない。不平衡絶縁にしては、荒っぽい設計だと思われる。

 やはり、塔体のテーパーが地際から塔頂まで同一で、鉄柱に似た形状になっている。

 また、架空地線をよく見ると何か捲かれているように見える。
前述のように、光ファイバかもしれない。



5.がいしアーム(コンパクト装柱)  (Insulator arms)


 多くの送電線が、水平配列でゆったりした送電線ルートを確保している土地柄で、コンパクト装柱を適用すべき所など皆無と思っていた。
 ところが、首都のオスロ近郊で、市街地の中に送電線を引き入れているところがあり、そこで写真の鉄塔を見た。

 我が国のようにルート取得環境が厳しいと、送電技術者は線下幅を極力狭くする技術開発、工事工法開発に懸命に取り組んでいる。

 しかし、都市過密化とは無縁のノルウェーでも、送電技術者は苦労することもあると、この鉄塔1基を見て、納得した。



 最後までご覧いただき感謝します。

 ノルウェーは、太古の氷河によって削られた荒々しい地形が至る所で見られ、真夏でも低標高地帯まで残雪があり、世界一雄大で美しい景色が見られる所だとの、強い印象で再度訪問したい国のNo1である。

 また、西海岸は漁業が盛んで、我々が食べている魚の多くがノルウェー産であり、地理的には遠いが、身近な国であるとの思いが強い。

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