標題1

海外の送電線

 

 最近のトピックス、No16~30を下記に掲載する。
No 掲載日 内容
30 2009.12.17 第6回大電力系統運用者国際会議が開催された
29 2009.11.12 ブラジルで大停電発生
28 2009.10.07 世界記録を目指す直流送電・巨大プロジェクト
27 2009.08.28 Smart Grid(その6)   <国際標準獲得へ国が始動>
26 2009.08.13 Smart Grid(その5)   <国際標準化戦争>
25 2009.07.05 Smart Grid(その4)   <国際規格化検討開始>
24 2009.06.13 「鉄塔技術の歴史を語る講演会」講演録発刊
23 2009.06.05 日本発UHV・1100KV世界標準電圧に認定
22 2009.05.24 送研・創立60周年記念懇親会開催
21 2009.05.09 本サイト関連記事書籍に掲載
20 2009.05.03 UHV国際標準化および中国UHV送電線情報
19 2009.04.12 Smart Grid(その3)
18 2009.03.21 Smart Grid(その2)
17 2009.03.07 Smart Grid
16 2009.02.01 中国100万ボルト・UHV送電線運転開始

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○No30(2009.12.17)
第6回大電力系統運用者国際会議が開催された
The Midwest Independent Transmission System Operator (Midwest ISO) hosted the Very Large Power Grid Operators (VLPGO), an association of the 12 largest international power grid operators representing more than 60 percent of the world's transmission grids, in Washington, D.C,on October 19-21, 2009.


 先般、10月19~21日にかけてアメリカ・ワシントンで第6回大電力系統運用者国際会議(the Very Large Power Grid Operators(VLPGO))が開催された。

 この会議は、「アメリカPJM(北米・東部13州とコロンビア特別区の全部または一部で系統運用および卸電力市場の管理等を行う組織)」の主導で2004年に設けられた国際会議で、系統容量5,000万kW以上の大規模系統の供給信頼度維持を主なテーマとし、参加各国(各社)との情報交換・課題解決に向けた協力体制構築を目的にしている。

 今年は、第6回目で「アメリカ中西部独立系統運用者 (Midwest ISO)」が主催し、12社(アメリカ、欧州主要国、日本、韓国、中国、インド、ブラジル、ロシアの11ヵ国の大規模系統運用者)が参加した。

 主催者を含めて会議に出席した13社で世界全電力需要の約60%をカバーしており、この会議で諸問題解決に向けて議論する意義は大きいと評価されているとのことである。

 日本からは、東京電力常務取締役山口博氏が参加している。

 ここに参加の各社の系統運用形態は多様で、送電設備を所有する送電系統運用者、設備を持たない独立系統運用者、およびわが国のように垂直統合系統運用者等であり、更に政治・経済環境も異なるが、電力系統を取り巻く環境が如何に変化しても最小コストで高い電力品質と信頼度を維持していくという系統運用者としての「志」を実現する「先導者、促進者を目指す」ことを昨年度にビジョンとして掲げることを合意し、その方針に基づき活動しているとのことである。

 当初は、大規模停電の防止などが主要なテーマであったが、最近は低炭素社会に向けた再生可能エネルギー導入のための送電問題、スマートグリッドに関するテーマへと移り変わってきているそうだ。



 さて、従来は、電力系統の制御・運用は一元的に大規模電力系統運用者が担ってきたが、今後小規模・分散型電源群が電力系統へ従来とは桁違いの大きさで挿入されることが予想されるが、そこでお互いの利害のぶつかり合いが想定され、制御・運用が多極化される可能性も想定される。

 その問題等を解決するために導入されるスマートグリッドをハードとソフトを含め如何なる形にすべきか、スマートグリッドは現段階ではまだアイデア・研究段階であるが、スマートグリッドの国際標準化をも勘案し、従来の電力系統にとって不利にならないスマートグリッドとなるよう今後のVLPGOの活躍が大いに期待される。
 


○No29(2009.11.12)
ブラジルで大停電発生
In the large area that included the plural cities of Brazilian Sao Paulo and Rio de Janeiro, a large-scale blackout occurred at 10:15 on the afternoon of November 10.


 ブラジルのサンパウロやリオデジャネイロなど複数の都市を含む広い地域(全26州のうちブラジル南部の18州)で10日午後10時15分(日本時間11日午前9時15分)ごろ、大規模な停電が発生し、人口の約3分の1に当たる7,000万人が被害を受けた。
 約4時間後に大部分の地域で復旧したが、一部では翌11日の朝までおよそ8時間にわたって停電が続いた。

 原因は、ブラジルとパラグアイの国境に位置する世界第2位のイタイプ水力発電所からサンパウロやリオデジャネイロへの幹線送電線5ルート(5回線)のうち3ルート(3回線)が暴風の悪天候によりイタベラー付近でトラブルを起こし、ほぼ同時にダウンしたことで、同水力発電施設(発生電力1,260万kW)が全面停止したため、停電が広範囲に拡大した模様だ。
(同送電線については当HP「海外の送電線・ブラジルの項を参照」)

 エネルギー省当局者は、システムが一度にこれほど多くの送電線が故障する状況に対応していなかったため停電が起きたと語っている。
 また、11日会見したロバン鉱山動力相は、調査の結果、ブラジル南部の送電線に雷が落ち、送電システムが自動的に停止したのが原因と分かったとしたうえで、ブラジル全土の電力の40%が一時的に止まったことを明らかにした(これはサンパウロ州の最大電力需要とほぼ同じ1,800万kW以上の値と見られる)。




 現在、正確な原因調査が進められているとのことだが、暴風による電線の横揺れによる相間短絡あるいは断線等の情報もあり、一方のロバン鉱山動力相の会見の通り落雷が原因との情報に対して現地では懐疑的な見方をしている専門家もあって、原因の詳細は明らかではないようだ。

 ほぼ同時に、5ルート(5回線)のうちDC+/-600kVの2ルート(2回線)またはAC750kVの3ルート(3回線)のいずれがどのような被害を受けたのかなど、1回線ごとに別ルート設計として過酷な気象条件に最も強い設計であるはずの送電線設備が、この度の悪天候で受けた被害状況をぜひ知りたいところである。
 いずれにしても、大停電の原因は右系統概要図のイタベラー(Itabera)変電所近傍で悪天候により複数の送電線に何らかのトラブルがあったためであることは確かなようだ。


 


○No28(2009.10.07)
世界記録を目指す直流送電・巨大プロジェクト
1.800 kV UHVDC (Ultra High Voltage Direct Current) technology will be used for one of the longest overhead power transmission line in the world. The line is direct current facilities of the most high voltage in the world.
The line will transmit 6,400 MW power from the Xiangjiaba hydro power plant, located in the southwest of China, to Shanghai, China's leading industrial and commercial center, located 2,071 km (1,286 miles) away.

2.Two 3,150 MW HVDC stations are to be placed at each end of a new power highway transmitting energy from two new hydropower plants close to Porto Velho in the northwest of Brazil to the southeast, close to the Sao Paulo area. Stretching over 2,500 kilometer (1,550 miles), it will be the world's longest transmission line.
 経済発展が盛んな中国にあっては、水力も火力も発電適地は西部に偏在しており、東部の電力需要地に送電するため1,000km~2,000km以上の長距離DC(直流)UHV送電線建設プロジェクトを10以上計画している模様であるが、このうち最も具体化したプロジェクトが以下に述べる四川省から上海間に建設する世界初のUHVDC送電線で、2011年の運転開始を目指している。

 また、ブラジルでも経済発展に伴う電力需要の増加に対処するため、アマゾン川上流に巨大な水力発電所を建設しているが、その発生電力を需要地のサンパウロ方面に送電するため、世界最長距離となるHVDC送電線計画が進められており、2012年に運転開始する計画が決定された。

1.中国で世界初の+/-800kVUHVDC送電線建設中


 世界的に注目を集めている世界初の+/-800kV UHVDC送電線が中国で建設中である。

 起点は長江上流の四川省で民江と金沙江の合流点(Yibin)付近に建設中のXiangjiaba(向家堤)水力発電所であり、終点が上海市郊外である。

 送電線こう長は2,071km、送電電力は640万kWである。

 このプロジェクトの技術的キーポイントはAC525kVとDC+/-800kVの交直変換設備であるが、世界的に有名なスイスのABB社が2007年に中国国家電網公司から受注し諸試験を行ってきており、順調に推移しているようで、2009.09.25の同社ホームページでこのプロジェクトの概要を発表している。

 この送電線は、2010年に「単極」を完成させて、2011年に「双極」を完成させる予定であり、既に送電線工事は着工されて現在工事中である。

(2009.11.17追加情報)
 本ルートは、湖南省を250kmにわたって通過するが、11月11日の電気新聞によると、この程その区間の工事が終了したとのことである。




 送電線設備の詳細は不明だが、鉄塔図は国家電網公司のWebページに掲載されており、右図のごとくである。
 具体的な寸法までは分からないが、電線水平間隔は約20m、鉄塔高さは40m弱であろう。

 なお、懸垂箇所は直吊りも適用しているが、 ガイタワーは使用していないようだ。

 ルート図は、右上図に直線で掲載したが実際のルートは南に弧を描いて、三日月状に曲がっているようだ。

 ルート経過地は、高標高の山岳地帯を通り、最高地点は2,300mに達し、重着氷地域を経過せざるを得ないとのことである。

 また、ルートは煤塵汚染地区の経過もありその地区ではがいし汚損量を想定塩分付着量換算で0.1mg/?を採用している。一方一般箇所では0.05mg/?を採用して、がいし一連個数は、耐霧がいしを使用し直吊り箇所で65個以上、V吊り箇所で56個以上を適用している。

 電線の導体方式は不明だが、6導体方式を適用しているものと思われる。

 さて、現在は世界一長い送電線はアフリカ、コンゴ民主共和国の、+/-500kVインガ・シャバ(Inga-shaba)DC送電線で1,700kmであるが、本送電線が完成すると世界最長の送電線となる。しかし、それも束の間で、翌年の2012年には下記のブラジルのこう長2,500kmDC送電線に抜かれてしまうことになる。



2.ブラジルで世界最長となる+/-600HVDC送電線建設開始


 ブラジルは、国土が広く大都市から遠く離れたアマゾン地方には膨大な量の水資源を有する国であり、一方直流送電線では1985年以来25年間にわたって+/-600kVの世界最高電圧設備を運用してきた高度な技術を有する国である。(注参照)

 従って、電源から数千km離れた需要地に電力を送電する計画の具体化については早くから取り組んでおり、今回の巨大プロジェクトについても順調に推進している様子である。

 本プロジェクトは、「PAC(Programa de Acceleracao do Crescimento)」と呼ばれるブラジル政府の進める開発計画の一つで、アマゾン川の支流の一つであるマデイラ(Madeira)川に2箇所の水力発電所(Jirau 330万kW、Santo antonio 315万kW)を建設しているが、その出力のうち315万kWを約2,500km離れた大都市のサンパウロ近郊まで送電するものである。

 送電線は、既にブラジルで1984年以降長年の実績のある+/-600kVイタイプ-サンパウロDC送電線
(当HP、海外の送電線、ブラジル編参照)と同等の設計で、起点はポルトヴェリョ(Porto Velho)、終点はサンパウロの北西約250kmのアララクアラ(Araraquara)で、その間を結ぶこう長2,500kmを超える世界最長距離の送電を行おうとするもので、2012年の運転開始を目指している。

 本プロジェクトの主体は、スペインのInabensa S.AとブラジルのAbengoa建設会社の合弁企業で、2009年7月にその企業から世界的に有名なスイスのABB社が交直変換設備を受注し、建設事業が本格的に開始された。

 なお、同時にブラジル北西部周辺の500kVおよび230kV交流系統との間で、交直変換設備を通して(Back-to-back station方式で)80万kWの電力を送電することとしている。

 さて、こう長2,500kmを超える世界最長距離の送電を行うにあたっては、+/-800kVUHVDCを採用するかと思われたが、+/-600kVHVDCを採用したのは、送電損失がやや多いものの長年の良好な運用実績のある
安定した技術を選択したものと思われる。


注:2009年12月末に中国で+/-800kVが運用開始されたため世界第2位となった。
 


○No27(2009.08.28)
Smart Grid(その6) <国際標準獲得へ国が始動>
About "Smrat Grid", Ministry of Economy, Trade and Industry started movement of the leadership so that Japanese claims would become international standards in the future.
 Smart Grid(その5)で解説したように、次世代電力網「スマートグリッド:Smart Grid」については、今春から世界主要各国がIECを舞台にして国際標準化戦争に突入した。

 特に市民生活の最も重要な基盤である「電力流通設備:ライフライン」に関しては、それを他国に牛耳られないよう、各国とも世界標準を獲得して、その国が獲得した国際標準技術で盤石なインフラストラクチャーを構成することが肝要と考えており、各国ともしのぎを削って技術の国際標準争奪に国を挙げて取り組んでいる。

 すなわち、国際標準を獲得するには、激しい駆け引きの中で
「政治力と、したたかさ」が特に必要であると言われており、国の主導が求められている。

 このような背景の中で、8月27日の電気新聞の紙面によると、経済産業省は省内に「次世代エネルギーシステムに係わる国際標準化に関する研究会」を設け、8月31日に第1回会合を開催し、年内に日本が主張したい技術等について報告書をまとめ、IECの各技術委員会メンバーに勧告するとのことである。この委員会は、電力業界、学識経験者、電機メーカーで委員を構成し、座長には東京大学の横山明彦教授が就くとのことである。
 なお、東京大学の山地憲治教授の試算によると、2030年度に政府目標に近い5,321万kWの太陽光発電を導入する場合にはバッテリーによる系統安定化コストは17兆円を超すとの予測があるが、同委員会は、この予測例のようにSmart Grid関連で新しい産業を立ち上げることも視野に入れ、更に、日本企業の海外展開を後押しすることも検討するそうである。
 
 一方、経済産業省・資源エネルギー庁では、「次世代送配電ネットワーク研究会」を庁内に立ち上げ、産官学一体となってSmart Gridに関する系統安定化対策の技術的課題を整理し、ロードマップ(行程表)の策定、コスト分析等を進めるとともに、国としての支援の在り方をも検討するそうである。
 座長には前記委員会と同じ東京大学の横山明彦教授が就き、学識経験者、電力会社、メーカーで委員を構成し、来年6月に報告書をとりまとめるとのことで、第1回会合は既に8月27日に開催されたそうである。

 Smart Gridは、国の将来のエネルギー政策における最重要なインフラストラクチャーになるもので、かつ、市民生活に必要な最重要ライフラインの位置づけになるものである。
 これが他国に牛耳られないよう、官民挙げて国際標準獲得戦争に勝利すすることを期待する次第である。


○No26(2009.08.13)
Smart Grid(その5) <国際標準化戦争>
About international standardization about "Smart Grid", each country started a battle so that an own country became advantageous.
 Smart Grid(その4)で解説したように、次世代電力網「スマートグリッド:Smart Grid」については、現在、世界主要各国で開発検討および試験的設備を構築しての実証試験が進んでおり、同時に、国際標準化の動きが活発化してきた。

 しかし、まだ明確な定義もないままに、各国が先を争ってあれこれ研究・開発を進めている。



 ところで、先頃、NHKのテレビ放映で、UHV,1100KV国際標準化に関し、「激突・国際標準戦争、ニッポン生き残りの鍵、逆転へ・巨大電力市場巡る秘策」として特集番組があった。
 (2009.8.4、23:15~23:40 NHK BS1「きょうの世界」、および2009.8.8.、20:00~20:45 NHK総合「追跡!A to Z」)

 この番組では、日本の開発したUHVの技術的価値とか、優位性についての解説が物足りなかったが、世界を股にかけた技術力の展開には、
「政治力と、したたかさ」が特に必要であり、従来の日本の得意技「デファクトスタンダード」方式はもはや通用しないとのことで、今後採るべき基本的技術開発姿勢をアッピールしたことは誠に良く、見応えがあった。

 番組でのキーワードを掲げると、
・標準を制する者だけが市場を制する
・国際標準化は、企業や国家の存亡を左右するまでになっている
・技術開発は、最初から激しい国際標準戦争(激しい駆け引き)を念頭に行え
とのことが語られた。

 また、番組に登場した日本規格協会の原田節雄主幹
掲げたメッセージでは、
味方を作れ       (世界を相手に、Give and Take の精神で)
標準化のプロの育成 (政治力と技術力を持ったプロ)
国の支援         (標準化を国益とする欧米に追いつけ)
が今後の我が国の課題として放映されたのには、その通りと感銘を受けた。


 さて、本題の「Smart Grid」であるが、これについて世界各国とも国益をかけてIEC(国際電気標準会議)の場で自国に有利な条件で国際標準化を達成するべく今春から「国際標準化戦争」に突入した。

 電力系統というインフラストラクチャーは、我々の生活に欠かせない最も大切なライフラインであり、これがまたもや欧米に席巻されて、彼らが国際標準の錦の御旗を掲げて我が国の電力系統に参入してきて、欧米のいいなりにされるのでは、誠に困る。

 とにかく、先手を打って日本にとって有利な国際標準化を勝ち取るには、NHK番組で放映されたように「国の支援」が大切であるが、7/16付の電気新聞によると経済産業省は「Smart Grid」に関する国際標準の獲得を目指し、省内勉強会を今秋に開催し、IEC議論を主導する考えとのことである。

 更に、8/11付の電気新聞によると経済産業省・資源エネルギー庁は、太陽光発電の余剰電力買い取り制度が年内にも始まることなどに伴い、電力系統の安定化対策として「Smart Grid」が注目されるため、その国際標準化に向けた展望、構築に向けたロードマップ、国としての支援の在り方等に関する調査を、産学官一体となった委員会を立ち上げて、本格的に始めるとのことである。

 電力メーターや制御システムなどの機器技術は日本が優れているが、それを働かせるソフトを含めた電力系統の基幹となる技術の国際標準化を日本の有利なものにするため、政治力としたたかさを発揮して、激しい駆け引きを物ともせず「国際標準化戦争」に勝利してもらいたいと思う。



○No25(2009.07.05)
Smart Grid(その4) <国際規格化検討開始>
"IEC" started discussion of the international standardization about "Smart Grid".
 次世代電力網「スマートグリッド:Smart Grid」については、現在、世界主要各国で開発検討および試験的設備を構築しての実証試験が進んでいる。

 同時に、国際規格化(世界標準化)の動きが活発化してきた。

 先月、6月26日の電気新聞でも掲載されたが、IEC(国際電気標準会議)では、昨年11月、電力供給システム専門委員会議長が、標準管理評議会でSmart Gridの規格化を提唱、これを受けてその議論をするためのグループ組織を立ち上げ、その第1回会議を4月にフランス・パリで開催した。

 この会議には13ヵ国が参加し、具体的にどのような規格化が必要かをアンケートしており、これを7月中にまとめ、9月にアメリカ・ワシントンで開催予定の第2回会議でさらに議論を進める予定である。もちろん我が国からも同グループには、九州大学の合田忠弘教授が参加している。

 この国際規格化に最も強く影響を及ぼすと思われるアメリカでは、かねて、国立標準技術研究所(NIST:The National Institute of Standards and Technology)が電力研究所(EPRI:The Electric Power Reseach Institute)に対してSmart Gridの開発・標準化の検討を委託していたが、その報告書をEPRIから最近受け取り、それを先月、6月18日に公表した。

 そのタイトルは「NIST Releases Report on Smart Grid Development」である。


 また、NISTのSmart Grid Web Site

http://www.nist.gov/smartgrid/

をクリックするとNISTのSmart Grid に関する解説を閲覧できる。

 Smart Gridは下記概念モデルのように、7つの領域から成り立っていると定義されている。
 この7つの領域は、お互いに雲のように中身がよく見えないモデルになっていて、パソコン・インターネット利用で「クラウドコンピューティング」と言われる概念に似て、お互いにインターフェースから先の中身(設備実態)は良く分からなくても、相互の接続情報を共有していればよいとのモデルと思われる。


 アメリカを始めヨーロッパなど多くの国では、電力自由化以降、電力系統の発電、送変電、配電の各部門を従来の一貫経営から分離・分割した経営に移行している。

 そうなると、設備の新増設・更新に莫大な資金を必要とし、建設期間が極めて長期にわたる発電および送変電の設備投資は、将来的に必要と分かっていても実行に移せず、設備系統が弱体化している現状が多く見られる。

 そのため国家戦略に絡む発電部門はまだしも、送変電設備の弱体化が進んでいる例が、アメリカでは多く見られる。

 特に、電力という商品は発電即消費という、貯蔵の全く利かない商品であり、周波数と電圧が常に一定な良質の電力を、長期的需要トレンドに合わせて最も経済的に供給するするには、10年以上も前から戦略的に設備計画を実行して始めて経済的設備形成ができるものである。

 我が国が、世界一良質な電力を供給できるのは、発電から配電まで一貫して設備の管理運用をしているからであり、上記のような発電、送変電、配電の領域はお互いによく分からない雲の中の標準モデルでは、長期にわたる良質かつ経済的なな電力供給は至難の業と言えよう。

 EPRIの報告書では、各領域間の連系・運用を
Interoperabilty(相互運用性、相互利用性)と言う言葉を用いて最善の連系・運用を保つよう解説しているが、長期的な時間軸のInteroperabiltyをどう確保していくかが更に重要であろう。

 オバマ米国大統領が、2009年2月24日に大統領就任後初の施政方針演説を行った中で言及されたSmart Grid普及に関連し送電線増強策を示したのは、政府が旗を振らない限り民間電力会社に任せていては、もはや弱体化した流通設備の問題は解決しないというメッセージに思えた。

 これから、Smart Gridの国際規格化が本格的に議論されるようだが、IECにおいて我が国の電力供給体制の有利性、高信頼性が理解され、国際規格化に反映されることを願ってやまない。


○No24(2009.06.13)
「鉄塔技術の歴史を語る講演会」講演録発刊
"Japan Steel Tower Association" published a book about the history of the steel tower.


 先般、平成20年10月7日、日本鉄塔協会は、都内で「鉄塔技術の歴史を語る講演会」を開催(本トピックスで既報)したが、その講演内容は世界最先端を行く我が国の鉄塔技術に関して、その歴史を分かりやすく解説したもので、今後の鉄塔技術の継承および発展のために欠かせない貴重なものであり、その講演録の発刊が待たれていた。

 同協会では、鉄塔技術継承・発展に資する資料として、また、鉄塔技術に携わっている新人教育などの各方面での活用を期待して、発刊準備を進めてきたが、この度、待望の発刊が実現した。(右写真)

 本サイト開設者としては、一人でも多くの送電関係技術者の方々が、本講演録を読まれることを希望する。

[問い合わせ先]
社団法人・日本鉄塔協会・事務局
Tel:03-3591-4035
Fax:03-3591-4056



○No23(2009.06.05)
日本発UHV・1100KV世界標準電圧に認定
"UHV .1100kV" that Japan developed got the qualification of "the IEC international standard voltage".
 我が国が開発した超超高圧UHV・1100KVが、この度世界標準電圧に選ばれ、認定された。

 電力機器関連の国際標準化団体であるIEC(国際電気標準会議)は、規格改定中の国際標準電圧について5月22日に最終投票を締め切ったが、そこで我が国提案の1100KVが国際標準電圧の新たな規格として可決・認定された。

 従来から、さまざまな分野の国際規格に関しては、欧米に席巻されており、電力分野でも同様の状態であり、我が国は常にその後塵を拝してきた。
 

 今回の認定は、この世界的な流れを大きく変える正に画期的なことであり、世界のUHV市場での日本の存在感向上に繋がることは間違いなく、中国、インドおよびブラジルなど世界各地で計画されているUHV送電系統建設への日本企業参画に関し大きなメリットで、10年以上にわたりUHV機器の実証試験を続け、成熟性の高い我が国のUHV技術が世界に羽ばたくチャンスとなろう。

 この国際標準規格化の経緯を概説すると次の通りである。

 IECでは、10年以上前にUHVを含む世界標準電圧および試験電圧について規格化していた。
 その世界標準電圧について示せば下表(黒字)の通りである。

 <245KVを超える三相交流最高電圧>
機器の最高電圧(KV) 備考
(300) 新規に計画するのは好ましくない
362
420
550 525KVも採用可
800 765KVも採用可
1050→1100 この度、1050KVを廃止して1100KVを採用
1200

●2006年、IEC技術諮問委員会(セクターボード)の「SB1:送電及び配電委員会(池田久利議長)」が、UHV技術の安全かつ効率的利用を確実に発展させるために必要な「UHV国際標準規格」と言う観点からは、現在はまだ、決まっていない状況であるとの見解で、規格化されているものの改訂を含む「UHV技術の国際標準化」を勧告した。

●これを受けて、IEC管理評議会はシンポジウムの開催を決定。

2007年、北京でCIGREと共催でUHVシンポジウムを開催し、UHV規格の必要性を確認すると共に、CIGREと合同でUHV標準化推進WG(JICCG)を設置、標準化活動を推進することとした。
 そこでは、我が国としては世界最長となる10年以上の期間に亘り1100KV送変電設備の試験を行ってきた実績と優位性を強力にアッピールした。
 IECとしては、或る電圧階級の規格化は2種類以上増やさない方針であることを踏まえ、1050KVに代えて1100KVを採択するよう働きかけた。

 この結果、標準化すべき電圧を2回の投票で選定し、最終結果を得て規格化することになった。

2008年4月、第1回目の投票が実施され、1100KVが参加27ヵ国中23ヵ国の賛成を得て可決された。
2009年1月、インド、ニューデリーでIECとCIGRE合同の第二回目のシンポジウムが開催され、今後早急にUHV国際標準化を推進することが再確認された。
 なお、この開催ホームページのトップページには、我が国の委員の方のご努力で、富士山をバックに世界最大級の100万ボルト設計西群馬幹線の写真が配置され、世界中の技術者に我々のUHV技術をアッピール出来たことは誠に素晴らしいことと言えよう。


2009年3月~5月、第2回目の投票が5月22日を締め切りとして2ヶ月間にわたり実施され、その結果参加25ヵ国中21ヵ国が賛成票を投じ、「投票権を持つメンバによる投票の 2/3以上が賛成し、かつ投票総数のうち反対が1/4以下」という厳しいハードルをクリアして、1100KV技術が新たな標準電圧として認定を受けた。



 
 今後は、上記標準電圧に続き、6月には試験電圧規格の最終投票も実施されるが、ここでも我が国提案の電圧が認定される見通しである。

 さらに、IECは今後、UHV系統全体の規格整備に動き出すこととしており、変圧器、遮断機、避雷器などの変電機器規格化も進められるが、標準電圧に1100KVが採用されたことで、我が国の技術がそれらの国際規格に反映される公算は大きい。

 具体的には、我が国が独自に開発した「遮断抵抗付遮断機」、「高性能避雷器」、「高速接地開閉器」など高性能のUHV機器を広く世界に売り込むチャンスが到来したと言えよう。

 なお、本トピックス記事、
・No20-2009.05.03 UHV国際標準化および中国UHV送電線情報
・No12-2008.08.10 UHV国際標準化制定作業大詰め
も合わせてご覧いただきたい。

(2009.11.17追加情報)
 上述の試験電圧規格については、10月30日の最終投票でわが国提案の標準電圧1100kVに対応するものとして、開閉サージ試験電圧は変圧器用が1420kV、GIS用が1550kV、および雷インパルス試験電圧は変圧器用が1950kV、GIS用が2250kVとしてわが国の提案が採用された。


○No22(2009.05.24)
送研・創立60周年記念懇親会開催される
"Transmission Line Constraction Engineering Society of Japan" greeted the 60th anniversary memorial day.


 社団法人・送電線建設技術研究会は、この5月で創立満60周年を迎えるが、それを記念して先般5月19日に都内のホテルで「創立60周年記念懇親会」を開催した。

 この懇親会では、冒頭佐藤泰一郎理事長(佐藤建設工業株式会社会長)の挨拶に続き、加納時男・国土交通副大臣、および内藤伸吾・経済産業省原子力安全・保安院審議官の祝辞があり、林喬関東支部長(株式会社関電工会長)の乾杯の音頭を皮切りに約320人に及ぶ大勢の出席者が節目の年を祝い合った。

 なお、懇親会では出席者に「60年の軌跡」と題する送研60年の歩みを紹介する小冊子(右写真)が配られた。

 送電線建設技術研究会は、昭和24年に発足したもので、当初は任意団体であったが、昭和32年に社団法人化され今日に至っている。
 また、同会では、事業の拡大発展に伴い、昭和27年に東北、中部、関西、中国、九州支部が発足し、昭和33年に関東支部、昭和34年に北海道支部、昭和36年に四国支部、昭和38年に北陸支部が発足し、計9支部が創設されている。

 我が国に於ける送電線建設工事会社の規模は、他の建設業の企業規模に比較し、小さく、我が国の発展に不可欠な電力流通設備の拡大強化に当たり、建設工事の合理化・機械化、安全工法の確立などに当たっては、個々の会社では限界があり、工事技術の向上と企業の発展を目的とした共同の調査研究機関を作りそれらの問題を克服すべく、先人の高い洞察力により同会が設立されたものである。

 以来、同会は、当時の商工省(現経済産業省)及び工事発注元の電力会社指導の下に、高度な工事工法の調査・研究・開発及び人身安全工法の確立に努め、我が国における電力インフラ設備のうち、架空送電線設備の建設工事に多大な貢献を成し遂げ、現在我が国に施設されている約24万基の鉄塔と約8万kmの送電設備が同会の会員各社により建設されてきた。 

 同会設立当初は、建設工法は、殆ど人海戦術にたよっており、欧米の高度な機械化に比較し、建設技術が劣っていたが、60年に亘る同会の活発な活動により、今日では世界最大級の100万ボルト設計送電線を建設するまでに至り、世界的に見ても我が国の送電線建設工法は最先端を行くまでになった。

 送電線建設技術をここまで発展向上させ、我が国の送電線設備を高度に発展させ得たのは、電力会社自身の調査研究があったことは勿論であるが、建設工事業界が一致団結して技術革新に取り組んできた成果があってのことと、同会の活動実績が高く評価されている。

 なお、今後は、高度成長時代に建設した多くの送電線が、リニューアルの時期にさしかかっており、従来の大容量・高電圧化に対応した技術革新から方向転換して、社会環境・自然環境に優しく、かつ、より安全性の高いリニューアル工法の調査・研究に取り組んでいく計画であり、電力インフラ設備の一層の充実に関して、ますますの同会の活動に期待が寄せられている。




○No21(2009.05.09)
本サイト関連記事書籍に掲載
 本サイト関連記事が書籍(雑誌)に掲載されたので、自己宣伝になるが以下に紹介する。


1.月刊「技術士」5月号(日本技術士会発行)

 技術士会では、「社会に向けた情報発信の強化」を、事業課題の一つとして位置付けているが、その一環として広報委員会では月刊「技術士」に会員の対外的活動例を紹介し支援することを企画した。

 具体的には月刊「技術士」誌面に、新企画として「社会への発信」コーナーを設け、技術士の対外的活動について紹介することし、今年2月に会員から事例を公募した。

 本サイト開設者としては、これに当てはまる活動を展開していると判断し応募したところ、広報委員会で当方のサイト開設主旨を理解され、掲載候補として採用された。

 ついては、標題を「ライフライン架空送電線のホームページ開設」として当サイトについての目的等を纏めて寄稿したところ採用され、5月号に見開き2ページにわたり掲載された。

 権威ある日本技術士会に取り上げられたのを機に当サイト開設者としては、一層本サイトを充実させるよう努力する所存である。


2.月刊「新電気」5月号(株式会社オーム社発行)

 電検三種と電気技術の専門誌である月刊「新電気」では、巻頭の特集記事として今年当初の1月号からシリーズで電力設備を掲載することとし、1~3月号で水力および火力発電所を取り上げ、4~5月号で送電設備を取り上げることになり、4月号までは既に刊行され、5月号も5月初めに刊行された。

このうち送電設備掲載企画では、4月号で「設備と機器」を解説し、5月号で「鉄塔の歴史的変遷」を解説することとした。
 この5月号については、編集部で当サイトを閲覧され、本サイトに掲載した内容が評価されて、当方に執筆の依頼があった。

 その依頼を受けて、書籍用に編集し直した原稿を作成したところ、それを基に編集部でレイアウト編集を行い、このたび5月号巻頭の特集記事として8ページにわたり「鉄塔の変遷」として掲載された。



3.隔月刊行
「送研リポート」5月号(社団法人・送電線建設技術研究会発行)


 「送研リポート」編集事務局では、今年が送電線建設技術研究会として60周年に当たることから、5月号に掲載する記事として歴史にまつわる内容の記事を取り上げることとし検討していたが、今年1月1日付けで当サイトに掲載した「送電鉄塔国産化100周年」が適当とのことで、執筆依頼があった。

 さっそく、書籍用に編集し原稿を作成したところ、この5月発行の「送研リポート」記事として採用され、掲載された。




○No20(2009.05.03)
UHV国際標準化および中国UHV送電線情報
 UHV国際標準化についてのトピックスは、No12(2008.08.10)で掲載したが、その後今年に入り1月29~30日にインド・ニューデリーで、IECとCIGREの合同による第2回目の「UHV国際標準化シンポジウム」が開催された。

 ここで、我が国は参加各国に対し、UHVに関する高度な技術力をアッピールし、我が国の主張する1100KVが国際標準規格として反映されるよう活発な活動を展開したそうである。

 この規格化については、近々決定が出されるとのことである。


ところで、そのシンポジウムの席上で、我が国の協力により先般1月6日に商用運用を開始した中国初のUHV送電線の映像が紹介されたとのことである。

 この映像は、中国電網公司がPR用に編集したビデオで、UHV送電線と3箇所の電気所をパングライダーにより撮影しており、設備の実態がよく分かるものである。

 これは、インターネット上で公開されており、 このページの中にある
「縦横雲天」がそれであり、約6分30秒のビデオである。

 このビデオでは、鉄塔の中国名が表示されていて、えぼし型懸垂鉄塔を「酒杯型直線塔」、えぼし型三角配列懸垂鉄塔を「猫状型直線塔」など、面白い名前が付いているのが印象に残った。

 また、その隣の
「騰飛特高圧」では、工事中の映像もあり、フロートタワーと移動式クレーンで手旗式連絡合図を用いて鋼管鉄塔の組立をしている場面、電線延線工事の場面など、工事施工に関心のある方にとっては、中国の最先端施工技術が分かる貴重な情報が入っており見応えのあるビデオである。

 更に、直流UHV送電線試験設備ビデオなどもあり、将来の設備計画予定までPRしており、中国語が分かれば大変中身の濃いページである。

 しかし、2014年現在ではこれらのページは、残念ながら見ることはできない。



○No19(2009.04.12)
Smart Grid(その3)
 「スマートグリッド」についての明確な定義は確立されていないようであるが、米国のEPRI(米国の電力会社が資金を拠出して運営している大規模な研究機関が、下記のような簡潔な定義をしており、現時点ではこれが最も適切と思われるので紹介する。

An advanced, telecommunication/electric grid with sensors and smart devices linking all aspects of the grid, from generator to consumer, and delivering enhanced operational capabilities

that:

Provide CONSUMERS with the information and tools necessary to be responsive to electricity grid conditions (including price and reliability) through the use of electric devices and new services (from smart thermostats to PHEV)

Ensure EFFICIENT use of the electric grid (optimizing current assets while integrating emerging technologies such as renewable and storage devices)

Enhance RELIABILITY (protecting the grid from cyber and natural attacks, increasing power quality and promoting early detection and self correcting grid "self-healing")

 この和訳については、全く拙い翻訳で誤訳もあると思うが、私の訳文を参考までに下記に掲載する。

 「スマートグリッド」とは、発電機から消費者に至るまで、電力系統のあらゆる状況を関連づける高性能デバイスとセンサを用いる進化した「電気通信・電力網」であり、強化された操作能力を末端まで配置したものである。

 また下記の能力を備えたものである。

・高性能サーモスタットからPEHV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)にいたる、新しいサービス及び電力デバイスを用いて(電力価格と信頼度を含む)電力系統の状況に消費者が上手く対応するために必要な情報と手段を彼らに提供することができる

・再生可能及び蓄電デバイスのような未来技術を系統に配置して変化する電力を最大限に利用するなどにより、電力網の効率的利用を確実にすることができる

・コンピュータ攻撃及び自然脅威から電力網を守ること、また電力品質を向上させること、さらに問題点の早期検出と自然治癒力のような自己修正ネットワークを促進すること、などにより信頼性を強化することができる


○No18(2009.03.21)
Smart Grid(その2)
 オバマ米国大統領が、2009年2月24日に大統領就任後初の施政方針演説を行った中で言及された「Smart Grid」すなわち「賢い・高性能な送電網」については、急に世界的に注目を集めることになったが、我が国の取り組み状況について電気新聞などに掲載されたので、その概要を紹介する。

1.政府は、平成21年度にも次世代送電網としての「スマートグリッド」の実証実験に乗り出す方針とのことである。政府は、電力会社などと協力し、官民共同による離島での大規模実証などを通じ、我が国の電力系統に導入可能かどうかを検証するとのことで、米国と異なり新エネ対策として独自のスマートグリッド整備を検討するとのこと。(電気新聞3月17日)

2.東京工業大学は、近く「統合研究院」を設立し、産業界の技術開発ニーズに対応した実証研究体制を強化するとのことで、低炭素化社会実現に向けたテーマを選定し、産業界と連?しエネルギー関連プロジェクトの実証研究をスタートさせるとのことである。その一つに、「スマートグリッドモデル」の開発を選定し、東京電力のほか、東芝、日立製作所などのパワーエレクトロニクス各社も参加するとのこと。(電気新聞3月18日)

3.電力中央研究所では、既に「次世代グリッドTIPSの研究」に取り組んでおり、その中で我が国の電力系統に適したスマートグリッドの研究に取り組んでいるとのことである。TIPSとは、Intelligent(知的), Interactive(相互影響的),Integrated(統合的)な電力システムと言うことで、「Triple "I" Power Systems」のことである。


 我が国は、供給信頼度の高さでは世界に誇る電力系統を確立しており、特に流通設備(ライフライン)は米国に比較し極めてしっかりしたものであるから、今後研究し導入される可能性のある次世代送電網としての「スマートグリッド」は米国のものとは当然異なり、我が国の既存の系統を骨格にした「日本形」のシステムになるものと予測される。


 過去に、欧米のスタンダードを外圧で呑まざるを得なかった事例があるが、次世代送電網としての「スマートグリッド」については、我が国として早期に独自の技術を確立し、同じ轍を踏まないことを祈りたい。
 


○No17(2009.03.07)
Smart Grid
 オバマ米国大統領は、2009年2月24日に大統領就任後初の施政方針演説を行ったが、その中で環境エネルギー対策を重要課題の一つに取り上げた。
 化石燃料依存から方針転換し、自然エネルギーを増加させ、環境エネルギー分野の成長で経済を活性化させる政策に本格的に取り組みを始める決意である。

 具体的には、公共建造物の断熱化や送電線増設を公共事業として推進し再生可能・自然エネルギーを大幅に増やすことが柱となっており、新エネルギーを全国の都市や町に届けることが出来る数千マイルに及ぶ送電線を建設すると明言している。

 大統領就任後初の施政方針演説で「送電線増設」について明言したのは、おそらく過去に例はなく、電力関連エンジニアとしては誠に驚かされた。また、極めて具体的な表現で言及されており、今後どのように具体化されるのか、その計画の詳細をぜひ知りたいところである。

 さて、オバマ大統領の言う「送電線」とは、どのようなものかと言うと、従来の送電系統の概念とは大いに異なったもので、1990年代から開発され始めた
「Smart Grid」すなわち「賢い・高性能な送電網」とでも訳すものである。

 すなわち、従来のように原子力・火力・水力大容量発電所から需要地に直線的・一方的に電力を供給する送電網ではなく、それらの大容量発電所とともに、各地に分散されて建設された風力・太陽光などの自然エネルギーによる小容量・分散型電源を効率的に組み合わせて、最経済的でよりクリーンな送電網を作り上げようとするものである。

 そのため、電力供給側と電力を使う側の双方で、IT(Information Technology)を駆使して電力流通情報を共有し、系統全体で最も効率的な電力使用を行おうとするものであり、そのための送電線網を充実・拡充しようとするものであるる。

 「Smart Grid」は、また、系統全体の予測能力、現状検出能力に長け、システム問題に反応するために組込形センサーとオートメーション化した手続からのリアルタイム情報を使用して、停電、電力品質問題とサービス混乱を自動的に避けることができるか、軽くすることができるものである。

 このシステムを運用するためには、系統安定化のために大容量発電所で行っていた出力制御だけに頼らず、従来の系統機器に追加して先進の構成要素としての電力貯蔵テクノロジー(例えば燃料電池、microgrid技術、ウルトラキャパシタとNaSバッテリーなど)が必要になろう。

 一方、各需要家には、「Smart Meter」
と呼ばれるメーターを設置して、送電網・系統情報をリアルタイムに受信すると共に需要家の消費電力情報を発信する双方向通信能力を備え、それらの情報から節電したり、あるいは自家発電(太陽光発電、風力発電、燃料電池)の売電調整をしたりする指令が自動的に出され、需要家としてクリーンな電力の消費に積極的に参加し、かつその努力をする義務を負うことにもなるようだ。

 特に広大な土地に風力・太陽光などの自然エネルギーによる小容量・分散型電源が広く配置されたアメリカなどでは、この研究が最も進んでおり、「Smart Meter」すなわち高性能なデジタルメーターをもつ米家庭と企業は、2006年には1%未満から4.7%へ増加したとのことである。

 将来的には、従来のような季節的・時間帯電力料金制度を更に進め、日々の天候(日照、雨量、風速、積雪など)の変化をリアルタイムで反映させた電気料金体系になるかもしれない。

 また、例えば、住居の太陽電池、小型風力あるいはプラグイン電気自動車のような配信された電力生成資源を使用可能にすることによって、「Smart Grid」は、個々の家と中小企業のような小型プレーヤーが彼らの隣人に電力を売るのを許可することによって、エネルギー産業の革命を引き起こすことになるかもしれない。

 我が国に於いても、早晩、自然エネルギー利用発電の増加と、個々のの需要家の環境エネルギー対策意識の増加で、小規模分散電源が増加し、「Smart Grid」の適用検討がなされるのではないかと思われる。

 
電力系統という巨大なインフラストラクチャー、
 
しかも発電と消費が同時に行われ、エネルギーの貯蔵ができないライフラインにおいて、
 
天候により発電量が変動し人為的にコントロールできない小容量・分散型電源を大量に含む系統で、周波数と電圧を常に規格値以内に納めることが必須条件であるのを如何に満足させつつ、
 
発電消費双方の情報をリアルタイムでコントロールし、最も自然エネルギーを活用する運用が出来るか、
その答えは一にそれを動かすソフトウエアーの良否に係っている。

 そのソフトウエアーを制する者が、例えばパソコンのOSを制したマイクロソフトのように、今後の世界の電力エネルギー市場を制すると言っても過言ではないであろう。

 一方、巨大なインフラストラクチャー・ハードの運用を、現在および将来を考えて如何に行うのかが極めて大きな問題で、「Smart Grid」を適用し実施するには、この問題をまず解決することが必須条件であろう。

 
これからの送電線関連の世界的キーワードは「Smart Grid」であろう。

 インターネットには、「Smart Grid」に関するサイトが数多くあるが、下記サイトが解りやすいと思われる。

http://en.wikipedia.org/wiki/Smart_power_grid


○No16(2009.02.01)
中国100万ボルト・UHV送電線運転開始
 中国では、近年、急速な経済成長を遂げているが、そのため電力需要の増加が著しく、電力設備の増強・整備が急務となっている。

 中国では、発電資源が西側に偏っており、東側の太平洋岸に発展した大都市に西部の発電所から電力を送電する長距離流通設備、特に大容量送電線の増強・整備(中国で「西電東送」と言う)が発電所の増強と共に大きな課題となっている。

 国土の西側にある水力および石炭火力の発電所から上海などの東側大需要地までの距離は、1,000~2,500kmあり、このような長距離に亘り大電力を効率よく送電するためには、極力高電圧の送電線が要求され、そのため世界最先端技術の交流1000KV(100万ボルト)および直流+/-800KV(80万ボルト)のいずれもUHV(超超高圧)送電線の建設が現在急ピッチで進められている。



 このうち、中国国家電網公司が2006年に建設に着手した晋東南変電所~荊門変電所間約650kmの中国初の交流100万ボルト・UHV1回線試験的送電線(Experimental Pilot Project)が、この度、2009年1月6日に運転開始した(中国新聞、科技日報1/22付)とのことである。

 そのルート概要図を右に示す。

 右概要図には図示していないが、中国北部では甘粛省南部の黄河上流方面から北京方面へ東西に延びる「西電東送・北部ルート」が複数あり、一方、四川省方面から三峡発電所を経由して上海方面に延びる「西電東送・中部ルート」が複数あって、いずれも西から東へ電力を送電している。

 今回完成したUHV送電線は、これら既設の系統と連系して、一層効率的に系統運用する目的があり、急いで建設されたものであろう。

 このプロジェクトについては、我が国で20年以上に亘り調査、研究および設備建設の実績のあるUHV技術があることから、それを保有する東京電力および電力中央研究所が、国家電網公司に対して「100万ボルト送電技術コンサルティング契約」を結び、国際的協力をしている。

 なお、国家電網公司はUHV系統を引き続き拡充する計画で、北端の晋東南変電所から北へ北京まで約650km、南端の荊門変電所から東へ上海まで約1,000kmなどを今後建設するとのことである。
 後者の荊門~上海間については、我が国同様の2回線装柱にする計画であるようだ。

 さて、本送電線の設備概要については、国家電網公司のホームページに掲載されているが、その概要をかいつまんで紹介すると以下の通りである。


 区間およびこう長は、晋東南変電所~南陽開閉所間約360km、南陽開閉所~荊門変電所間291kmである。

 ルートは、標高1,500m以下の地域を通過し、その78%は500m以下である。

 また、荊門地域は、既設設備でしばしばギャロッピングが発生しており、特に太行山付近は重着氷および強風が観察される特殊な環境条件の地域であが、近くをルートが経過せざるを得ないようだ。

 ルートは、山西省と河南省の境界付近で黄河を横断するが、横断地点の径間長が超長径間、すなわち径間長=3,721mとなり、UHV送電線としては世界最長記録であろう。
 さらに、荊門変電所の北方で長江の支流のハン川を横断するが、その径間長は2,956mを記録している。
 (河口から約1,200kmも内陸に遡った長江の支流を横断するのに、約3,000mの径間長を必要とするとのことで、長江の川幅の広さには誠に驚きである)

 鉄塔形状は、「中国UHV送電線 鉄塔概要図」に示すとおりで、1回線装柱水平又は三角配列の形状を適用している。

 図中、「左」と「中央」の鉄塔が懸垂箇所に使用されるもので、「中央」のえぼし型水平配列鉄塔は平地に適用し、一方、「左」の変形えぼし型の三角配列の鉄塔は、山地に適用したとのことである。

 「右」の鉄塔は、ルートの角度箇所に於ける耐張箇所に適用するもので、塔体に引き留めした中相のジャンパ線はGWアームにジャンパ線用がいしを吊って縁回しをする構造である。

 電線の各相間間隔は不明であるが、概略20m前後ではないかと思われる。


 次に、電線設計であるが、ACSR500m㎡の8導体方式を採用し、素導体間隔は400mmとして右図のように配列し、導体束直径は1,045mmである。

 この設計は、電線素線の太さは異なるが東京電力で1992年に完成させた我が国初のUHV西群馬幹線と同じ設計である。

 架空地線は、OPGW-175m㎡またはJLB20A-170m㎡を使用している。

 電線地上高は、住宅地で27m以上、住宅地以外の箇所で22m以上の設計とのことである。

 以上、中国は、UHV送電設備を保有する国として、ロシア、カザフスタン、日本に続いて世界で4番目の国になり、UHV商業運用国としては旧ソ連に次いで世界で2番目の国になった。
 また、2009年現在、ロシア、カザフスタンおよび日本がいずれもUHV設備を500KV運用しているため、UHV商業運用国としては世界で唯一の国である。

 さらに、中国は、直流UHV(+/-800KV)についても、世界に先がけて複数ルート建設中であり、数年後には世界で初の直流UHV送電線を完成させるものと思われる。


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